地方在住の60代です。老後の「2000万円問題」は都会と田舎で違いますか? 地方なら2000万円なくても大丈夫?
本記事では、「老後2000万円問題」の本当の意味や、地方と都会の生活費の違い、そして地方に住むご夫婦の具体的なモデルケースをもとに、「本当に2000万円も必要なのか? 」を解説します。
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目次
老後の「2000万円問題」って本当にみんなに必要なの?
「老後2000万円問題」とは、2019年に金融庁が出した報告書がきっかけです。この報告書では、夫65歳・妻60歳の夫婦が年金のみで生活すると、月に約5万円の赤字が出るとされています。この赤字が30年間続くと、約2000万円不足するという試算がなされました。
しかし、これはあくまでモデルケースの話。想定されているのは「都市部に住み、夫婦ともに年金生活、持ち家あり、ある程度支出もある」家庭像です。実際には以下のような変動要素があります。
●年金受給額(厚生年金・国民年金かどうか)
●持ち家か賃貸か
●自動車の有無
●医療・介護費
●地域の物価や生活インフラ
つまり、「2000万円が必要かどうか」は人それぞれの条件次第です。地方在住の方であれば、生活費を抑えやすい面も多く、2000万円が絶対に必要とは限りません。
地方なら生活費はどれだけ抑えられる? 都会との違いを徹底比較
では、地方と都会ではどの程度の生活費の差があるのでしょうか? 図表1で東京23区内と長野市で生活費の差を比べてみましょう。
図表1
| 項目 | 都市部(例:東京23区) | 地方都市(例:長野市) |
|---|---|---|
| 家賃 | 約8万円(賃貸) | 約4万円(賃貸)または持ち家で維持費のみ |
| 食費 | 約7万円 | 約6万円 |
| 交通・通信費 | 約3.5万円(電車等) | 約2.5万円(車維持費含む) |
| 光熱・水道費 | 約2万円 | 約2.5万円(寒冷地は高め) |
| 医療・保険費 | 約1.5万円 | 約1.5万円 |
| その他雑費 | 約3万円 | 約2.5万円 |
※総務省 家計調査報告(家計収支編)等をもとに筆者作成
この表から分かるように、特に大きいのは住居費の差。都会では賃貸やマンション維持費が高くつく一方、地方では持ち家で固定資産税や修繕費を除けば、月1〜2万円程度で済むケースもあります。
また、車が必須になる地方では交通費が増える一方、全体としては支出を抑えやすい傾向にあります。
60代・地方在住夫婦のモデルケースで実際に試算してみた
それでは、実際に地方在住の60代夫婦の生活をモデルにして、「2000万円必要か? 」を試算してみましょう。
●地域 富山県 高岡市(地方都市、人口約15万人)
●家族構成 夫婦2人、持ち家あり(ローン返済なし)
●移動手段 車1台(軽自動車)
●年金 夫が厚生年金(月14万円)、妻が国民年金(月6万円)→世帯月収20万円
●趣味 家庭菜園、週1回外食、月1回日帰り温泉
●食費 5.5万円
●光熱費 2.5万円(冬は高め)
●医療費・保険 1.5万円
●車関連 2万円(ガソリン・保険・税金など平均化)
●日用品・交際費 2万円
●住居維持費(修繕・税) 1.5万円
●その他雑費 1万円
●合計 約16万円/月、年間192万円
年金月額が20万円なので、毎月約4万円の黒字になります。年間では48万円の余裕です。
つまり、「2000万円どころか、年金だけで生活を回せて、さらに貯蓄も可能」な暮らし方も可能です。もちろん突発的な支出(医療・家の修繕など)はありますが、堅実な家計管理ができれば、「老後資金が足りない」不安は大きく減らせます。
地方在住でも老後資金は「自分に合った見積もり」がカギ
「老後は2000万円必要」と聞くと誰でも不安になりますが、大切なのは自分に本当にいくら必要かを見極めることです。
地方在住であれば、都会に比べて以下のような安心材料があります。
●家賃がかからない or 安い
●自然が豊かで、娯楽も低コスト
●自給自足的な生活も可能
●ご近所との助け合い文化が残っている
その一方で、医療・介護のアクセス、車の維持費、買い物の不便さなど、注意すべき点もあります。
つまり、「地方なら大丈夫」と油断するのではなく、生活スタイルに合った資金計画を立てることが必要です。
出典
総務省 家計調査報告(家計収支編)2024年(令和6年)平均結果の概要
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー