“一軒家を売却”して「賃貸」に移りたい!65歳・年金暮らしの夫婦でも契約できるのでしょうか?

配信日: 2025.10.06 更新日: 2025.10.21
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“一軒家を売却”して「賃貸」に移りたい!65歳・年金暮らしの夫婦でも契約できるのでしょうか?
高齢になると「駅近物件に住みたい」「徒歩圏内に大型スーパーがあるところがいい」「子ども夫婦の近所に移りたい」など、住まいに対する希望に変化が出てくることがあります。自宅を売却して賃貸物件に移り住みたいと考えた際、年金受給者でも借りられるのでしょうか? 高齢者の賃貸住宅の申し込みについて確認します。
伊藤秀雄

FP事務所ライフブリュー代表
CFP®️認定者、FP技能士1級、証券外務員一種、住宅ローンアドバイザー、終活アドバイザー協会会員

大手電機メーカーで人事労務の仕事に長く従事。社員のキャリアの節目やライフイベントに数多く立ち会うなかで、お金の問題に向き合わなくては解決につながらないと痛感。FP資格取得後はそれらの経験を仕事に活かすとともに、日本FP協会の無料相談室相談員、セミナー講師、執筆活動等を続けている。

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高齢者の住み替え理由

国土交通省の「令和5年住生活総合調査」によると、過去5年間に持ち家から住み替えた65歳以上の夫婦世帯で、最も多い理由は「高齢期の住みやすさ」でした。
 
居住環境に関して重要と思う項目では、「日常の買い物などの利便」「医療・福祉・介護施設の利便」「治安」と続いており、いずれも「高齢期の住みやすさ」につながることが見て取れます。
 

年金受給者の収入事情

総務省の「令和6年家計調査」から、夫婦ともに65歳以上の無職世帯の家計を見ると、税・社会保険料等を差し引いた可処分所得は22万2462円です。これに対し生活費等の消費支出は25万6521円と、毎月約3.4万円の赤字です。この不足分を、預貯金などから取り崩していることになります。
 
一戸建てで築数十年もたてば、維持費は土地の固定資産税程度に抑えられていることもあるでしょう。そのため、賃貸への住み替えは、毎月の住居費負担が大きく増加する可能性があります。売却収入の長期的な取り崩しや支出の抑制など、収支バランスに注意した住み替え計画が必要となるでしょう。
 

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収入以外の壁

高齢者は賃貸契約を拒否されるのでは、という不安をよく耳にします。実際に国土交通省のアンケート調査では、約7割の大家が高齢者に対し拒否感をもっており、理由は「居室内での死亡事故」への不安が90.9%と、圧倒的な割合を占めました。
 
また、株式会社R65の「高齢者の住宅難民問題に関する実態調査(2025年)」によると、高齢者の30.4%が年齢を理由とした入居拒否を実際に経験しています。
 
持ち家からの住み替え理由は「高齢期の住みやすさ」が最多でしたが、賃貸物件から住み替えた高齢者が最も多く挙げた理由は「入居中の立ちのき要求」および「契約期限切れ」でした。
 
持ち家とは異なる切迫した事情です。高齢期の借家住まいには、多くのケースで収入以外にも根深い障壁があるといえるでしょう。
 

その他候補となる賃貸住宅

高齢者向けの賃貸物件の一例として、次のタイプが挙げられます。
 

(1) サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)

国土交通省の「高齢者の住まいに関する現状と施策の動向」によると、サ高住の平均月額利用料金は、家賃・公益費・基本サービスを含めて約11万円弱、大都市圏だとさらに2万円近く高くなります。入居一時金(敷金)は家賃の数ヶ月分程度です。
 
基本サービスとして「安否確認」「生活相談」が提供されますが、その他は一般の賃貸マンションと同様の住まい方になります。なお、介護型のサ高住は利用料金が高くなります。
 
サ高住に似たタイプの「高齢者向け賃貸住宅」もありますが、こちらは諸サービス・食事等を提供しない代わりに居室が広めであるなど、より一般のマンションに近くなります。
 

(2) UR賃貸住宅、公営住宅、セーフティネット住宅

UR賃貸住宅は、礼金・仲介手数料・更新料・保証人が不要で費用を抑制できます。原則として一定以上の収入があることが入居条件で、一例として家賃6万円であれば、4倍の約24万円の月平均収入が条件です。物件のタイプは幅広く、家賃と交通利便性とのトレードオフになる傾向があります。なお、ほとんどの物件が先着順です。
 
バリアフリー化や通報用装置の設置、見守りサービスを提供する高齢者向け物件もそろえているので、老後に向いた環境といえます。
 
都道府県や市区町村の公営住宅は、国土交通省によると入居者の約80%が月収10.4万円以下、約半数が70歳以上となっています。月収15万8千円以下を主な入居対象層とし、さらに条例で収入基準を定めています。
 
住宅困窮者の居住を基本とし、家賃は収入に応じ決まります。なお、応募倍率は全国平均で3.6倍、東京都は15倍に上ります。年金収入の低い世帯にも、心強い制度といえます。
 
さらに、「大家が拒まない」条件で高齢者等の要配慮者に住宅を供給する「セーフティネット住宅」が増加しています。大家側の不安やリスクの低減を図ると同時に、入居者支援の取り組みの拡充が検討されており、まさに高齢期住居の最後の砦ともいえます。
 

住み替え目的と終の棲家

今回取り上げた賃貸物件について、図表1へ特徴をまとめました。
 
図表1

図表1

 
自宅売却収入が潤沢で家賃に充当できるほど、選択肢は広がります。ただし、一般の賃貸物件の場合は、「いつまで住み続けられるか」の不安が残るでしょう。
 
また、介護型サ高住を除くと、賃貸での介護・看護は、在宅・訪問型サービスを自ら手配する必要があります。
 
賃貸物件への住み替えを希望する場合、その目的と「終の棲家」の考え方によっては、一般の賃貸物件ではなく、サ高住その他の高齢者向け賃貸物件への入居、あるいは途中からの転居も選択肢になるかもしれません。
 

出典

国土交通省 令和5年住生活総合調査
総務省 家計調査報告(家計収支編) 2024年(令和6年)平均結果の概要
国土交通省 住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律(住宅セーフティネット法)等の一部を改正する法律等について
株式会社R65 高齢者の住宅難民問題に関する実態調査(2025年) (PR TIMES)
国土交通省 高齢者の住まいに関する現状と施策の動向
UR都市機構 お申込み資格
 
執筆者 : 伊藤秀雄
FP事務所ライフブリュー代表
CFP®️認定者、FP技能士1級、証券外務員一種、住宅ローンアドバイザー、終活アドバイザー協会会員

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