58歳、「再雇用制度」の説明を受けました。雇用条件が変わるので正直迷っているのですが、再雇用制度を利用する人はどのくらいいますか?
では、「再雇用制度」を利用している人はどのくらいの割合いるのでしょうか? また、再雇用を受ける際の注意点とはどのようなものでしょうか?
本記事では、厚生労働省報道発表資料「高年齢者雇用状況等報告」の集計結果の公表(令和5年版と令和6年版)を基に解説します。
CFP(R)認定者
確定拠出年金相談ねっと認定FP
大学(工学部)卒業後、橋梁設計の会社で設計業務に携わる。結婚で専業主婦となるが夫の独立を機に経理・総務に転身。事業と家庭のファイナンシャル・プランナーとなる。コーチング資格も習得し、金銭面だけでなく心の面からも「幸せに生きる」サポートをしている。4人の子の母。保険や金融商品を売らない独立系ファイナンシャル・プランナー。
年高年齢者等の雇用の安定等に関する法律
「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」の一部が改正され、平成25年4月1日から施行されています。
2025年4月1日以降は、定年年齢を65歳未満に定めている事業主は、高年齢者雇用安定法第9条1項に基づき高年齢者の65歳までの安定した雇用を確保するため、以下のいずれかの措置を講じなければなりません。
・定年制の廃止
・65歳までの定年の引き上げ
・65歳までの希望者全員を対象とする継続雇用制度の導入
厚生労働省「高年齢者雇用状況等報告(令和5年)」(全国の常用雇用する労働者が21人以上の企業(大企業1万7019社、中小企業21万9987 社のうち、報告書用紙送付企業は24万9911社)と、「高年齢者雇用状況等報告(令和6年)」(大企業1万7060 社、中小企業21万9992 社のうち、報告書用紙送付企業は25万2058社)の、65歳までの高年齢者雇用確保措置の実施状況を比較すると、以下のようになります。
・中小企業:令和5年99.9%→令和6年99.9%
・大企業:令和5年99.9%→令和6年100%
という結果になっています(ここで、大企業は301人以上規模、中小企業は21~300人規模とします)。また、70歳までの就業機会が確保されるよう高年齢者雇用安定法が改正され、令和3年4月1日から施行されています。
定年制の廃止、定年の引き上げ、継続雇用制度の導入、業務委託契約を締結する制度の導入、社会保険に従事できる制度導入の措置について努力義務を設けるものですが、実施状況は、以下のような増加をしています。
・中小企業:令和5年30.3%→令和6年32.4%
・大企業:令和5年22.8%→令和6年25.5%
このように、高年齢者が安定して雇用されるよう、環境が整備されています。
年々増加する、働く高齢者
それでは、継続雇用で働く人はどのくらいいるのでしょうか。
令和5年「高年齢者雇用状況等報告」によると、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律」の施行以降、平成26年からの「60歳以上の常用労働者の推移」は図表1のようになっています。
図表1
また、全企業の常用労働者約3525万人のうち、60歳以上の常用労働者は約486万人(60~64歳:約262万人、65~69歳:130万人、70歳以上:約93万人)であり、31人以上規模企業で見れば、平成26年から約170万人増加しています。
令和5年の高年齢者雇用確保措置が実施済みの企業のうち、定年の廃止は3.9%、定年の引き上げは26.9%、継続雇用制度を導入している割合は69.2%であることから、486万人のうち継続雇用制度により雇用されている労働者は約336万人と見ることができます。
同じ職場で働けるものの……
再雇用制度を利用して65歳まで働くことは、定年退職した60歳から公的年金の受給年齢である65歳までの収入源となります。また、同じ職場で働き続けられるので、環境の変化によるストレスを感じることなく働くことができます。
一方で、再雇用される場合、雇用条件により定年前より給与が大幅に減少すること、さらに定年まで部下だった人の下で働くことは、ストレスになり得ます。再雇用される場合、まず、給与金額、勤務時間や勤務内容等の雇用条件を確認しましょう。
定年後に給与が減少する場合、雇用保険の被保険者であった期間が通算5年以上ある方の、定年後の給与が60歳時点の75%未満になる場合は、60歳以降の給与の15%を「高年齢雇用継続基本給付金」として、65歳に達した月まで受け取ることができます。事業主を経由して申請をしますが、被保険者本人でも申請できます。
ただし、特別支給の老齢厚生年金を受給しながら高年齢雇用継続基本給付金も受給する場合、年金の一部が調整される場合がありますのでご注意ください。
また、60歳以降の給与と特別支給の老齢厚生年を受け取る合計額が51万円(2026年4月より62万円)を超えると、超えた分の半分の年金が減額されます(在職老齢年金)。
そのほかに、企業型確定拠出年金の加入者が定年退職後再雇用される場合、受け取るか、iDeCoに移換するか、運用指図者かを選びますが、運用指図者になる場合の再雇用後の手数料負担の有無を確認しましょう。
まとめ
再雇用される際の注意点として、給与金額、勤務時間や勤務内容等の雇用条件のほかに、加入している企業年金についても、職場に確認しましょう。
出典
厚生労働省 高年齢者の雇用
厚生労働省 令和5年「高年齢者雇用状況等報告」の集計結果を公表します(令和5年12月22日報道発表資料)
厚生労働省 令和6年「高年齢者雇用状況等報告」の集計結果を公表します(令和6年12月20日報道発表資料)
厚生労働省 高年齢雇用継続給付の内容及び支給申請手続について
日本年金機構 在職老齢年金の計算方法
執筆者 : 林智慮
CFP(R)認定者
