“賃貸暮らし”で“国民年金”だけだと老後に「5500万円」必要と聞き、不安です。「賃貸×国民年金×貯金1000万円」で、生活は厳しいでしょうか?
本記事では、夫婦2人で、「賃貸×国民年金×貯金1000万円」で生活が可能かについて試算し、より安心できるための対応策について解説します。
ファイナンシャル・プランナー
中小企業診断士
早稲田大学理工学部卒業。副業OKの会社に勤務する現役の理科系サラリーマン部長。趣味が貯金であり、株・FX・仮想通貨を運用し、毎年利益を上げている。サラリーマンの立場でお金に関することをアドバイスすることをライフワークにしている。
「賃貸×国民年金×貯金1000万円」で生活が可能か
収入から支出を引き、不足分を貯金でまかなうことで、貯金が1000万円で十分かどうかを試算してみます。
1. 収入
国民年金は、20歳から60歳まで40年間保険料を納付して満額受給できる場合、月額約6万9000円(令和7年度)です。したがって、夫婦2人で月約13万8000円となります。
2. 支出
総務省「家計調査年報(家計収支編)2024年(令和6年)」によると、65歳以上で夫婦のみの無職世帯の消費支出は、月平均25万6521円という結果になっています。
日常生活費の内訳は、食費、光熱費、住居費、医療費などです。なお、このデータに含まれる「住居費」は持ち家世帯も含まれるため、月1万6432円となっている点に留意が必要です。
また、生命保険文化センターが行った「2022(令和4)年度 生活保障に関する調査」によれば、ゆとりある老後生活を送るために夫婦2人で必要だと考えられる額は、旅行やレジャー、日常生活費の充実、趣味や教養などの費用が上乗せされ、月平均で37万9000円となっています。
3. 「賃貸×国民年金×貯金1000万円」で生活が可能か
(1)最低必要生活費で生活する場合
今回の事例のように賃貸であれば、総務省のデータである「住居費約1万6000円」では、多くのケースで不足することが考えられます。住む場所にもよりますが、家賃が6万円の場合、消費支出はおよそ30万円にもなります。
国民年金13万8000円から平均消費支出の30万円を引くと、月額16万2000円、年間194万4000円が不足します。老後生活が30年だと仮定すると不足分は5832万円となり、1000万円の貯金では到底まかなうことができません。
したがって、生活は不可能ということになります。また、最低必要な生活費には、冠婚葬祭費用や耐久消費財の買い替え、賃貸の更新料など日常生活以外でかかってくる突発的な費用は含まれていません。
加えて、旅行や趣味の費用が含まれていませんので、改善が急務であることは言うまでもありません。
(2)ゆとりある老後生活をする場合
国民年金13万8000円からゆとりある老後生活費の37万9000円を引くと、24万1000円が不足する計算になります。
年間で289万2000円が不足し、それを貯金で補てんしていくとなると30年8676万円となり、貯金1000万円では大きく不足することになります。また賃貸であれば、さらに家賃も考慮しなければなりません。
「賃貸×国民年金×貯金1000万円」で生活していくためには
試算したように、「賃貸×国民年金×貯金1000万円」で、最低必要生活費での生活も、ゆとりある老後生活も困難であることが分かりました。冠婚葬祭などの突発費用や旅行や趣味も老後生活に取り入れるためにも、より安心できるために、以下の対策を検討することをおすすめします。
1. 働き続ける
健康で働くことが可能であれば、無理のない範囲で、アルバイトやパートなどで働き続けることです。働くことで、年金収入の不足分を補うことができますし、社会とのつながりも維持でき、健康面でもメリットがあります。
2. 生活費の見直し
携帯電話料金などの通信費や保険料など、毎月の固定費を見直して支出を減らしましょう。賃貸の家賃が負担であれば、家賃の低い地域への引っ越しも検討してもよいでしょう。
3. 年金の繰下げ受給
年金の受給開始年齢を遅らせることで、受給額を増やすことができます。ただし、受給開始までの生活費は自分でまかなう必要がありますので、よく検討をしましょう。
4. 私的年金の活用
iDeCo(個人型確定拠出年金)や国民年金基金など、国民年金に上乗せして老後資金を準備できる制度の活用を検討しましょう。税制上の優遇措置もあるので、検討してみるとよいでしょう。
まとめ
試算の結果、「賃貸×国民年金×貯金1000万円」で最低限の生活も厳しいと言わざるを得ません。さらに突発の支出や趣味、教養といったことにも、老後生活には必要と思われます。
生活に潤いを持たせ、より安心して暮らしていくためにも生活費を抑える工夫をしたり、健康に留意して長く働いたりすることをおすすめします。具体的な生活設計を立て、必要に応じてファイナンシャルプランナーなどの専門家にも相談してもよいでしょう。
出典
総務省統計局 家計調査報告 家計収支編 2024年(令和6年)平均結果の概要
公益財団法人生命保険文化センター 2022(令和4)年度 生活保障に関する調査
執筆者 : 堀江佳久
ファイナンシャル・プランナー