退職金で「憧れのポルシェ」を買うのは危険? 夫が「退職金2800万円もあるから」と購入を検討中ですが、老後資金から取り崩すと“生活費”が足りなくなりますよね?
本記事では、退職後に必要な生活費はどの程度なのか、また退職金で高級車(ポルシェ)を買っても大丈夫なのかを解説します。
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
退職後に必要な生活費
退職する予定の人をはじめ、退職して間もない人、将来のお金の不安を抱えている人は、定年後にどのくらい生活費が必要なのか気になるでしょう。内閣府が発表している「令和6年度 高齢社会対策総合調査(高齢者の経済生活に関する調査)」の結果によると、老後に必要な生活費は図表1のとおりです。
内閣府 令和6年度 高齢社会対策総合調査(高齢者の経済生活に関する調査)
図表1の調査結果は、配偶者と一緒に暮らしている場合の1ヶ月あたりの生活費です。平均で20万6000円、最も多いのは「20~25万円未満」(19.4%)です。
そして「30万円以上」(19.1%)、「15~20万円未満」(14.9%)と続きます。希望している生活水準やどの地域に住んでいるかなどの要因で生活費は異なりますが、老後は毎月20万円程度の生活費が必要になるケースが多いでしょう。
退職金のお金で高級車を買うのは危険?
「せっかく退職金が入ったのだから、少しくらいぜいたくしたい」と考える人もいるでしょう。特に車が好きで、ドライブを楽しみたい人にとっては、またとない購入のチャンスともいえます。
ただし、多額の退職金が入ったからといって、あまり考えずにお金を使ってしまうのは危険な場合もあります。退職金で高級車をはじめとした多額の支出が発生する、主なリスクは次のとおりです。
・長生きして資金が足りなくなる
・ほかのぜいたくができなくなる
・予想外の出費に対応できなくなる
・資産が減っていくストレスを感じる
高齢者に限った話ではありませんが、人はいつまで生きるのかわからないため、ある程度余裕を持った資金計画を立てておく必要があります。また、老後資金に余裕がなくなれば、ほかのぜいたくができなくなったり、急な出費に対応できなくなったりするおそれもあります。
いつまで生きるのかわからないなか、資産が減り続けていくのにも、精神的なつらさを感じる人もいるため、退職金が入ったとしても、慎重に老後の生活を考えなければならないでしょう。
退職金2800万円・ポルシェ(中古)1800万円で買うケース
1つの目安として、以下の例で老後の生活をシミュレーションしてみます。
【退職金】2800万円
【ポルシェ購入費】1800万円
【年金】月20万円
【毎月の生活費】23万円
【寿命】平均寿命まで生きると仮定(男性81.09歳、女87.13歳)
退職金でポルシェを購入したとすると、手元に残るのは1000万円です。毎月の生活費と年金の差額が3万円のため、28年弱は夫婦2人で暮らしていける計算になります。65歳で定年を迎えたとすると、約93歳までの生活費は足りる計算です。
つまり、退職金でポルシェを購入しても、平均寿命までの生活費は足りるケースが多いでしょう。ただし、前記のとおり平均寿命より長生きした場合や、急な出費が多く発生した場合は、手元の資金が尽きる可能性があります。
また、「余裕を持った生活がしたい」「1年に1度は旅行に行きたい」などと考える夫婦は、生活費が上がることもあります。退職金でポルシェを購入したい場合は、退職後もアルバイトで収入を得るなど、手元のお金が増えるようにするとよいでしょう。「年金+収入」が生活費を上回るようにすれば、貯蓄を使う機会も減るため、安定した老後生活を送れます。
まとめ
老後に必要な生活費は平均20万6000円で、計算上問題なくても高額の買い物をする際は、よく検討する必要があります。本記事では、退職金2800万円で1800万円のポルシェを購入するケースを紹介しましたが、本当に大丈夫かどうかは不確定要素が多いため分かりません。
ただし、長年働いてきた対価でもある退職金で、念願のポルシェを買いたいと考える人もいるでしょう。購入するのであれば、退職後もできる範囲で収入を得て、年金と収入が生活費を上回るようにすることをおすすめします。
出典
内閣府 令和6年度 高齢社会対策総合調査(高齢者の経済生活に関する調査)の結果
厚生労働省 令和6年簡易生命表の概況 1 主な年齢の平均余命
執筆者 : 藤岡豊
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
