来年“定年退職”を迎える夫、「貯金が500万円しかない」ことを気にしているみたいです。実際60歳代の「金融資産保有額」は“平均2000万円以上”なんでしょうか? 老後生活が成り立つ基準とは
実際のところは、貯金額だけでなく退職金や金融資産全体を踏まえた考え方が必要になります。本記事では、公的データをもとに60歳代の金融資産の実態や退職金の水準、老後生活を成り立たせるための基準について解説していきます。
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60歳代の「金融資産保有額」は“平均2000万円以上”
金融経済教育推進機構(J-FLEC)が発表した「家計の金融行動に関する世論調査 2024年」によると、「60歳代」の金融資産保有額は平均2033万円で、中央値は650万円とのことです。
なお同調査によれば、60歳代の現在保有している預貯金残高合計は、358万円であることも分かります。
掲題の「貯金が500万円」は金融資産保有額で見ると少ないかもしれませんが、預貯金残高でみると平均より多い水準と考えられます。つまり、現金以外の資産がいくらあるかによって、60歳以降の生活が変わりそうです。
都内中小企業のモデル退職金は“1149万5000円”
東京都産業労働局が発表した「中小企業の賃金・退職金事情(令和6年版)」によると、大学卒・定年のモデル退職金は1149万5000円となっています。
一方、厚生労働省中央労働委員会「令和5年賃金事情等総合調査」の「令和5年退職金、年金及び定年制事情調査」によると、労働者数1000人以上の特定の大企業における平均退職金支給額(男性)は、調査産業計・大学卒で勤続35年1867万6000円、満勤勤続2139万6000円となっています。
大企業と中小企業の間で退職金水準に差は見られますが、中小企業に勤めていても退職金として1000万円以上が支給されるケースも考えられるでしょう。この退職金を、現在の貯金500万円に加味して考えても良いかもしれません。
現在の水準で「老後生活」が“成り立つ”基準は?
総務省統計局が発表した「家計調査(家計収支編)調査結果 2024年(令和6年)」によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯(夫婦高齢者無職世帯)の家計収支は月額マイナス3万4058円となっています。
つまり、以下の老後資金が最低でも必要になるようです。
・65歳から85歳までの20年間:月額3万4058円×12ヶ月×20年=817万3920円
・65歳から95歳までの30年間:月額3万4058円×12ヶ月×30年=1226万880円
退職金を加味すれば、掲題の「貯金が500万円」でも生活は成り立つ可能性があります。
まとめ
老後の生活を安定させるためには、単に「貯金額」だけで判断するのではなく、金融資産全体のバランスを考えることがポイントです。
統計上、60歳代の金融資産保有額は平均2000万円を超えていますが、中央値を見ると650万円に留まっています。退職金や年金を含めて考えれば、「貯金が500万円」でも老後生活が成り立つ可能性はあるでしょう。
大切なのは、自身の資産構成を正しく把握し、長期的な収支を見据えた生活設計を早めに整えることです。貯蓄額にとらわれすぎず、現実的なライフプランを立てることで、老後への不安を軽減できるでしょう。
出典
金融経済教育推進機構(J-FLEC)「家計の金融行動に関する世論調査 2024年」家計の金融行動に関する世論調査 2024年 種分類別データ(令和6年)2 現在の預貯金残高<問2(a)>
金融経済教育推進機構(J-FLEC)「家計の金融行動に関する世論調査 2024年」家計の金融行動に関する世論調査 2024年 分類別データ(令和6年)4 融資産保有額(金融資産を保有していない世帯を含む)
東京都産業労働局 小企業の賃金・退職金事情(令和6年版) 8 モデル退職金(集計表 第8表) 図表8-1>モデル退職金(1ページ)
厚生労働省中央労働委員会 令和5年賃金事情等総合調査 令和5年退職金、年金及び定年制事情調査〔調査結果の概要〕3退職金額(6ページ)
総務省統計局 家計調査(家計収支編)調査結果 2024年(令和6年)平均結果の概要 図1 65歳以上の夫婦のみの無職世帯(夫婦高齢者無職世帯)の家計収支 -2024年-(18ページ目)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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