老後に年金「月30万円」受け取る両親。“余裕がある”と思っていたら「賃貸だからキツイ」とのこと。いくらあれば“老後は安心できる”のでしょうか?

配信日: 2025.11.03
この記事は約 4 分で読めます。
老後に年金「月30万円」受け取る両親。“余裕がある”と思っていたら「賃貸だからキツイ」とのこと。いくらあれば“老後は安心できる”のでしょうか?
高齢夫婦2人で月に30万円の年金収入があると聞くと、現役世代としては「ぜいたくはできないが、十分に生活できるのではないか」と感じるのではないでしょうか。
 
しかし、それだけの収入があっても生活に不安を抱えている高齢者世帯は少なくありません。なぜそのような気持ちが生まれるのか。高齢夫婦の生活費について実際のデータを確認しながら、考えていきましょう。
山田圭佑

FP2級・AFP、国家資格キャリアコンサルタント

【PR】株式会社アートネイチャー

おすすめポイント

・自毛になじむ自然な仕上がり
・気になる部分だけのピンポイント対応OK
初めてでも安心のカウンセリング体制

いまどきの高齢夫婦、「およその生活費」はいくら程度?

総務省のまとめた「家計調査報告(家計収支編) 2024年(令和6年)平均結果の概要」によると、「65歳以上の夫婦のみの無職世帯(夫婦高齢者無職世帯)」の1ヶ月の平均的な支出総額は28万6877円です。このうち、消費支出(生活費)は25万6521円となっています。
 
これだけ見ると、仮に「月30万円の年金」が「額面の金額」で、ここから社会保証料・所得税・住民税等が1割程度差し引かれたとしても、ぎりぎり生活費と年金手取り額は釣り合いが取れそうです。
 
しかし、統計の支出額内訳をよく見ていくと「住居費」の平均額はわずか1万6432円となっており、今回のケースでは両親が「賃貸住まい」であることを考えると、状況は大きく変わってきます。
 
高齢夫婦の「住居費」平均が非常に低額である理由は、現代日本の多くの高齢者世帯は、「持ち家」を保有しているからにほかなりません。つまり、賃貸住まいの高齢者の場合は、毎月の家賃が生活費に大きな負担となっていると考えられます。
 

「東京で住居を賃貸している高齢者夫婦」の生活費をシミュレーション

ここでは、老後を賃貸住宅で暮らし続ける場合の家計を考えてみましょう。都内で高齢夫婦2人が暮らすマンションの家賃・管理費等を、合計で「月13万円」としてシミュレーションします。まず、前記のデータから、住居費以外の生活費を計算します。


平均支出総額:28万6877円
平均住居費:1万6432円

住居費以外の支出:28万6877円-1万6432円=27万445円

この「住居費以外の支出」に、シミュレーション上の家賃「13万円」を足します。
 
賃貸暮らしの場合の支出合計:27万445円+13万円=40万445円
 
このように、平均的な生活レベルを維持しながら都内で賃貸暮らしを続ける場合、毎月の支出は40万円を超えるという計算になります。
 
これでは、年金が月30万円あっても、家計は「毎月10万円以上の赤字が生まれる」という状況になり、年間で120万円、20年間続けば2400万円もの貯蓄を取り崩していかなければなりません。
 
実際は、ここまで赤字が膨らむ前に、住居費以外の生活費を切り詰めるなどする世帯が多いでしょうから、両親が「生活がキツイ」とこぼすことは無理もないといえるでしょう。
 

【PR】株式会社アートネイチャー

おすすめポイント

・自毛になじむ自然な仕上がり
・気になる部分だけのピンポイント対応OK
初めてでも安心のカウンセリング体制

「いくらあれば老後は安心か」は、自分で決めるべき数字

筆者は常々違和感を覚えているのですが、「無職となった老後生活においては、年金収入だけで住居費も含めた基本生活費をすべてまかなうべきである」という考え方は、本来の年金制度の理念からは外れているのではないでしょうか。
 
現代日本ではやや批判される考え方かもしれませんが、現在の社会保障制度のもとでの自然な老後生活とは、「高齢者本人は基本的に現役世代に蓄えた金融資産や、家族も含む社会資本を活用して生活し、足りない部分を現役世代から徴収した社会保険料(年金)で補てんする」というものではないかと、筆者は考えています。
 
言ってしまえば、「現役時代に蓄えた資産を、老後に取り崩すこと」は、ある意味で当然の行動です。もし、どうしても最終的に資産額が足りなくなるという場合は、生活保護を受けることも当然に選択肢にいれるべきです。
 
人間心理として「現役時代に積み上げてきた資産を取り崩す」ことには大きな抵抗を覚えるかもしれませんが、その思いにとらわれすぎると、「年金がいくらあっても安心できない」という心理状況に陥りかねません。
 
筆者は、老後の生活が不安な人には、「まず受け取る年金額と資産の取り崩しペースをシミュレーションし、それにあわせて生活費をダウンサイジングすることを考えましょう。その上でもし、どうしても生活費が足りない場合は、無理のない範囲で収入を得る手段を考えましょう」とアドバイスしています。
 
厳しいようですが、「老後に年金をいくらもらえれば安心か」「老後の資産額はいくらあれば安心か」という問いに対しては、「自分で計算して答えを出し、それに合わせて行動を改めるか、『安心できるライン』を下げましょう」と伝えるほかありません。
 
現代日本においては、老後生活には「安心」をむやみに求めるのではなく、「納得」をいかにしてできるようにするか? を考える時期になっているのではないでしょうか。
 

まとめ

総務省のまとめた統計によると、「夫婦高齢者無職世帯」の1ヶ月の平均的な支出総額は28万6877円ですが、持ち家を持つ世帯が多いため、そのうちの「住居費」は極めて低額です。
 
賃貸住まいの高齢者世帯の場合、1ヶ月の平均支出総額が40万円に達することもあります。夫婦の受取年金が1ヶ月あたり30万円程度の場合は、生活に厳しさを覚えることも多いでしょう。
 
「安心できる状況」には決まった基準がないため、「いくら年金があれば老後は安心か」という思いにとらわれすぎると、老後生活に不安ばかりが心に浮かんでしまうことになりかねません。老後生活には「安心」を追い求めすぎず、シミュレーションと行動によって「納得」を得ていくことをおすすめします。
 

出典

総務省 家計調査報告(家計収支編) 2024年(令和6年)平均結果の概要
 
執筆者 : 山田圭佑
FP2級・AFP、国家資格キャリアコンサルタント

  • line
  • hatebu
【PR】 SP_LAND_02
FF_お金にまつわる悩み・疑問