“年金支給67歳”引き上げ検討って本当? 65歳定年の人は“無収入2年”どう乗り切る?
現役期間の延長や年金の繰下げ受給など、さまざまな選択肢があります。今のうちから家計設計を考えておくことが、将来の安心につながります。
本記事では、年金支給開始までの家計の空白を避ける対策について考えていきます。
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目次
年金の支給開始が65歳から67歳になる?
老齢年金は原則として65歳で受給権が発生し、受給開始時期は本人の選択で調整できます。具体的には、受給開始を66歳から75歳まで遅らせる「繰下げ受給」により、受給額を増額できる制度が整備されています。
日本年金機構の資料によれば、繰下げ受給は66歳から75歳の範囲で選択でき、繰り下げた月数に応じて年金額が増える仕組みです。
2025年10月現在、年金の支給開始年齢引き上げに関する制度改正はなされておらず、まずは現行制度の「65歳原則+繰下げ受給選択」を正しく押さえ、報道の見出しに過度に振り回されない姿勢が重要です。
定年退職後の無収入2年は避けられるか? 在職老齢年金の支給停止基準が62万円に引き上げ
2025年に年金制度改正法が成立し、関連する見直しが2026年4月以降、段階的に施行されます。厚生労働省の「年金制度改正の全体像」によると、在職老齢年金制度について、賃金と老齢厚生年金額の合計に基づく「支給停止の基準」を月50万円(2024年度価格)から月62万円へ引き上げると明記されており、施行は2026年4月からです。
これにより、65歳で定年後も再雇用や転職で就労を続けながら、一定範囲で年金を受け取りやすくなる制度設計になっています。
「就労+繰下げ受給+貯蓄取り崩し」を制度に沿って設計する
家計の空白を避ける現実的な順番は「就労収入の確保→在職老齢年金の基準内で受給調整→不足分の貯蓄取り崩し→繰下げ受給の活用」です。在職老齢年金における支給停止基準が62万円に引き上がることで、賃金と老齢厚生年金の合計がこの水準に収まる働き方であれば年金支給が止まりにくく、就労と受給の両立がしやすくなります。
さらに、繰下げ受給は66歳から75歳まで選択でき、月単位で増額するため、健康状態や就労見込み、余命の見通しを踏まえた「開始時期の最適化」によって、生涯の年金キャッシュフローを底上げできます。制度の仕組みと施行時期の双方を踏まえ、手取りベースでの家計設計を年次見直しで運用するのが堅実です。
65歳以降の就労と受給開始時期の設計で家計の空白を回避する
厚生労働省の公表どおり、年金制度改正法は成立済みで、在職老齢年金の支給停止基準引き上げなどが2026年4月から施行されます。現行制度は65歳での受給権発生を前提に、繰下げ受給選択と在職との両立を広く認める枠組みです。
したがって、就労設計と受給開始時期の調整により、65歳定年でも無収入になることなく、むしろ繰下げ受給による増額を生かした生涯受給の最適化が可能と考えられます。
施行スケジュールを踏まえ、雇用条件と賃金水準、年金見込み、貯蓄のブリッジ資金計画を具体化しておくことをおすすめします。
出典
日本年金機構 老齢年金の繰下げ制度(1ページ)
厚生労働省 年金制度改正の全体像 在職老齢年金制度の見直し(7ページ)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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