定年後の「健康保険」について迷っています。任意継続、国民健康保険、家族(妻)の扶養… どれがお得でしょうか?
本記事では代表的な3つの選択肢について、それぞれの仕組みと費用の違いを整理しながらどの選択がお得かを考えます。
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退職後に選べる3つの健康保険制度
定年退職後の健康保険の代表的な選択肢は、「任意継続被保険者制度(任意継続)」「国民健康保険」「配偶者の扶養に入る(被扶養者)」の3つです。
どれを選ぶかによって保険料の負担が大きく異なるため、制度の特徴や加入条件を正しく理解し、家計全体の視点で判断することが大切です。まずは、それぞれの制度の概要とお金の特徴を見ていきましょう。
任意継続は、退職後もこれまでの健康保険を最長2年間継続できる制度です。給付内容は現役時代と同じですが、保険料は会社負担分がなくなるため全額自己負担となります。ただし、保険料には上限が設定されているため、退職前の収入が高かった人は国民健康保険より安くなる場合もあります。
国民健康保険は、市区町村が運営する制度で、保険料は前年の所得や世帯構成に応じて計算されます。退職後に収入が減ると保険料も下がる傾向がある一方、扶養制度がなく、家族一人ひとりに保険料がかかる点に注意が必要です。
また、自治体ごとに保険料率や軽減制度が異なるため、住む地域によって負担額が変わります。
配偶者の扶養に入る場合は、条件を満たせば本人の保険料負担はゼロになります。最も経済的な選択肢ですが、年間収入基準や生計維持状況などの条件があり、すべての人が利用できるわけではありません。年金や再雇用収入が一定額を超えると、扶養から外れて自分で保険に加入しなければならないケースもあります。
保険料で比較する際のチェックポイント
定年後の健康保険を選ぶ際、最も重要なのは「どの制度が家計にとって合理的か」という視点です。判断のポイントは、主に以下の4つがあります。
1つ目は、退職後の収入見通しです。任意継続では退職時の給与をもとに保険料が決まり全額自己負担となるため、退職後に収入が下がる場合は負担が重くなります。これに対して、国民健康保険は所得が減るほど保険料も軽くなるため、年金生活中心の人に向いています。
2つ目は、家族構成です。国民健康保険には扶養制度がなく、家族一人ひとりに保険料がかかるため、扶養制度のある任意継続や配偶者の扶養に入るほうが負担を抑えられることもあります。
3つ目は、保険料の上限と自治体ごとの違いです。任意継続では保険料の上限が定められており、高収入層に有利な場合があります。国民健康保険は自治体ごとに保険料率や軽減制度が異なり、同じ収入でも地域によって年額数万円の差が出ることもあります。
4つ目は、切り替えのタイミングです。任意継続は退職後20日以内の申請が必要で、最長2年で終了します。収入の変化を見ながら、最初の1年は任意継続、2年目以降に国民健康保険へ切り替える方法も選択肢となります。
定年後に選べる健康保険制度のメリット・デメリット
3つの健康保険制度には一長一短があり、保険料の安さだけで選ぶのは注意が必要です。本章では、任意継続・国民健康保険・扶養加入のメリットとデメリットを整理します。
任意継続は給付内容を維持できる安心感がある反面、保険料は全額自己負担で負担感が大きいです。保険料上限の範囲に収まる高収入者には有利ですが、収入が減る人には割高になることがあります。
国民健康保険は所得が少ない人には負担が軽く、年金生活者にも適しています。ただし、家族の人数が多いほど保険料が増え、自治体によっては負担額に差が出る点に注意が必要です。
配偶者の扶養に入ると保険料の負担が最も軽くなる可能性があります。ただし、収入や働き方の条件を満たさなければ利用できず、収入が増えれば扶養から外れて自分で健康保険に加入しなければなりません。
健康保険を選ぶ際は、それぞれの健康保険制度の特徴を正しく理解し、収入や家族構成に合った選択を心掛けましょう。
定年後の健康保険の選択はライフステージに合わせて賢く選ぼう
定年後の健康保険の選択は、「現在の収入」「家族構成」「将来の働き方」などによって最適解が変わります。保険料の安さだけで判断するのではなく、今後の変化を見据えた継続性も視野に入れて選ぶことが重要です。
まずは退職前の報酬や年金額をもとに、任意継続・国民健康保険・被扶養者それぞれの保険料を試算し、比較検討してみましょう。
そのうえで、どの制度が自分の生活に無理なく合う制度かを見極めることが、老後の医療費負担を抑える第一歩です。
退職後の家計を守るためにも、それぞれの健康保険制度の違いや手続きのタイミングを正しく理解し、適切に切り替える保険のリテラシーを身につけておくことが大切です。
出典
全国健康保険協会(協会けんぽ) 健康保険任意継続制度(退職後の健康保険)について
厚生労働省 国民健康保険制度
全国健康保険協会(協会けんぽ) 被扶養者とは?
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー