標準的な夫婦2人分の年金額「月23万円」でも老後赤字は避けられない!? いくらあれば安心? 50代からできる備えとは
日本年金機構の令和7年度のモデルケースによれば、夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な厚生年金額は月額約23万円とされていますが、実際の生活費と比較すると収支がマイナスになるケースも見受けられます。
年金だけでは十分な生活が難しいという現実が浮かび上がる中、老後資金の準備や生活設計の見直しが求められています。本記事では、老後に必要な金額の目安や、50代から可能な備えについて解説します。
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目次
夫婦2人の標準的な年金収入「月23万円」でも赤字に陥る現実
まず、夫婦2人分の公的年金の「標準額」とその背景を確認します。日本年金機構によれば、令和7年度における「夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な厚生年金額」は月額23万2784円となっています。
これは、平均的な収入(平均標準報酬45.5万円)で40年間就業した場合に受け取り始める老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額)の給付水準です。
一方で、総務省統計局の「家計調査報告[家計収支編]2024年(令和6年)平均結果の概要」では、65歳以上の夫婦のみ無職世帯の平均収入(1ヶ月)は25万2818円、そのうち年金などを含む社会保障給付が22万5182円となっています。
なお、この夫婦高齢者無職世帯の月間支出は28万6877円にのぼり、月あたり約3万4000円の赤字という計算です。このように「年金だけで生活できる」という前提は、少なくとも平均的な夫婦世帯においては成り立たない可能性が高いのです。
なぜこのようなギャップが生じるのでしょうか。主な理由としては、物価上昇などで日常的な支出が増えていること、医療・介護、住居維持費など高齢期特有のコストが重くなること、支出構造が定年後にもそれほど大きく落ちない(あるいはむしろ増えることもある)という点が挙げられます。
つまり、夫婦2人分の年金収入が月23万円台でも、生活費の現実にはそれを上回ることが多いというわけです。
「安心できる老後」にはいくら必要か? 50代からの備え
では、具体的に「いくらあれば安心か」という目安を考えてみましょう。まず、年金収入だけで収支がプラスになるようにするには、支出を収入以下に抑えるか、年金+その他収入(貯蓄取り崩し・就労収入・資産運用収益など)を充てる必要があります。
例えば、夫婦2人世帯の老後を20年~30年と仮定したとき、月々の赤字が3万円だったとすれば、20年で720万円、30年で1080万円もの不足が生じる計算です。また、生活水準を少し上げたり、医療・介護が必要になったりした場合にはさらに上振れする可能性があります。
少し余裕を持たせるのであれば、年金を月23万円程度もらえるケースでも、毎月5万円程度の不足を見込んでおくと安心でしょう。
例えば、5万円×12ヶ月=60万円×20年=1200万円、30年なら1800万円の“補填資金”が必要という考え方です。50代からできる備えとしては以下のような選択肢があります。
・年金の見込額を早めに確認し、収入と支出のギャップを把握する。
・住宅ローンの有無、住まいの維持費など固定費を見直す。
・シニア就労や副業、資産運用による収入確保を検討する。
・保険・医療・介護のリスクを整理し、必要な備えを早めに始める。
・生活支出の「無駄」をチェックし、固定費削減や暮らし方の見直しを図る。
50代という時点から早めに動いておくことで、定年後の収支ギャップを小さくすることが可能でしょう。特に、退職金などのまとまった資金を“取り崩し”ではなく“運用”する設計を立てることが有効と考えられます。
まとめ:年金だけで「安心できる老後」を迎えるのは難しい可能性がある。今からできる“備え”を
夫婦2人で月23万円程度の年金収入があっても、現実には月数万円の赤字が出る可能性が高いです。年金収入だけに頼るのではなく、支出の見直し・収入源の確保・資産の有効活用という三本柱で備えておくことが、安心した老後生活の鍵になります。
50代から動き始めることで、定年後の「赤字生活」を回避しやすくなるでしょう。将来の暮らしに「ゆとり」を持たせるためにも、早いうちから準備を始めることをおすすめします。
出典
日本年金機構 令和7年4月分からの年金額等について
総務省統計局 家計調査報告[家計収支編]2024年(令和6年)平均結果の概要 II 総世帯及び単身世帯の家計収支<参考4>65歳以上の無職世帯の家計収支(二人以上の世帯・単身世帯)図1 65歳以上の夫婦のみの無職世帯(夫婦高齢者無職世帯)の家計収支 -2024年-(18ページ)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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