「住宅ローン一括返済」VS「老後のための貯金」退職金2000万円の使い道としてどっちが賢い? 年金は夫婦で月20万円もらえる予定です。
退職金で住宅ローンを一括返済して“住居費ゼロ”の安心を得るか、それとも老後の貯蓄や運用に回して“収入の柱”を強化するか――例えば、夫婦で毎月20万円の年金収入が見込まれている場合でも、実際の家計支出やリスクを考えれば、どちらの選択が将来の安心につながるかは一概には言えません。
本記事では、退職金2000万円という前提をもとに、それぞれの選択肢のメリット・デメリットを整理し、事前にできる備えと判断軸を分かりやすく解説します。
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目次
退職金2000万円+年金月20万円で見える老後の家計の現実
はじめに、老後の家計状況をデータから確認しましょう。年金収入として夫婦2人で月20万円、年間240万円が想定されている場合でも、それだけで生活が成り立つとは限りません。
総務省統計局の「家計調査報告[家計収支編]2024年(令和6年)平均結果の概要」によると、65歳以上の夫婦のみ無職世帯では消費支出と非消費支出の合計が月平均約28万7000円となっており、年金収入との差額から年間100万円以上の赤字が生じる計算になります。
仮にこの状態が20年間続けば、老後資金として2000万円以上が必要です。30年間であれば3000万円にのぼる可能性もあるため、退職金2000万円では足りないことも想定しておく必要があります。
もちろん、実際の支出額は住宅ローンの有無、健康状態、生活スタイルなどによって大きく変わりますが、平均的なデータでも支出が老後の収入を上回っている点には注意が必要です。
こうした状況を前提とすると、退職金をどう使うかが今後の生活設計において極めて重要になります。
住宅ローンを一括返済するメリット・注意点とは?
退職金を使って住宅ローンを一括返済すれば、毎月のローン返済という固定費をなくすことができるため、家計の安定性が高まるというメリットがあります。
特に、定年後は収入が限られるため、支出をコントロールしやすいという点は大きな安心材料になるでしょう。また、金利負担を抑えられる点も見逃せません。ローンの残存期間が長い場合は、利息の負担が大きいため、早めの返済は総支払額の削減にもつながります。
さらに、住宅ローンが残っていることによる心理的な不安がなくなることも、多くの人にとっては大きな効果です。老後を借金なしで迎えることは、精神的な安心感にもつながります。
ただし、退職金の大半を一括返済に使ってしまうと、手元の現金がほとんど残らないというリスクもあります。病気や介護など予測できない支出が発生した場合に対応できる余力がなくなってしまうのは大きな不安材料です。
また、住宅ローンの金利が低く、繰上げ返済のメリットが限定的である場合は、一括返済が必ずしも最良の選択とは言い切れません。
このように、一括返済にはメリットも多くありますが、「返せるから返す」という判断ではなく、手元資金の残し方や今後のライフプラン全体を踏まえて検討することが重要です。
老後のために貯金・運用を重視するメリット・リスクとは?
一方で、退職金を住宅ローンの返済に使わず、貯金や資産運用に回すという考え方もあります。
この方法では、手元資金を維持することができるため、医療費や介護費、住まいの修繕費など、不測の事態への備えが可能になります。現金や流動性の高い資産を残しておけば、生活の自由度が高まるとともに、安心感も得られるでしょう。
また、運用によって収入を補うことができれば、年金以外の収入源として家計の助けになります。仮に年1%~2%程度の利回りでも、2000万円を運用すれば年間20万円~40万円程度の収益が得られる可能性があり、これは生活費の一部として十分に役立ちます。
ただし、資産運用には元本割れのリスクがつきものです。特に高齢期にはリスク許容度が低いため、慎重な資産運用設計が求められます。ローンを残したまま運用に資金を回した場合、運用がうまくいかないと家計の収支が苦しくなるリスクも考えられます。
このように、老後資金として退職金を残しておく選択は柔軟性があり、将来的な不安に備える方法として有効ですが、ローン返済とのバランスをどう取るかがポイントです。
まとめ:どちらが“賢い選択”かの判断ポイント
退職金2000万円をどう活用するかは、家計状況や将来設計によって最適な答えが異なります。住宅ローンの残高が多く、返済による家計の負担が大きいならば、一括返済による固定費削減の効果は大きいでしょう。
反対に、貯蓄が乏しい、将来的な支出リスクに不安があるという場合は、手元資金を確保しておく選択が適しています。また、ローン金利が低く、繰上げ返済の恩恵が少ない場合には、あえて返済を急がずに、ゆとりある生活や資産運用を重視する判断も考えられます。
大切なのは、どちらか一方に偏るのではなく、返済と貯蓄をバランスよく両立させる視点を持つことです。例えば、退職金の一部を返済に回し、残りを生活費や予備費、資産運用に活用することで、安心感と柔軟性を同時に確保することが可能です。
住宅ローンの条件、年金額、支出傾向を把握したうえで、必要に応じて専門家と相談しながら、自分にとって最適な選択を見つけることが、将来の安心につながります。
出典
総務省統計局 家計調査報告[家計収支編]2024年(令和6年)平均結果の概要 II 総世帯及び単身世帯の家計収支<参考4>65歳以上の無職世帯の家計収支(二人以上の世帯・単身世帯) 図1 65歳以上の夫婦のみの無職世帯(夫婦高齢者無職世帯)の家計収支 -2024年-(18ページ)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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