80歳の母が10月の医療費が「7000円も高くなった」と言っていました。決まった通院だけだったはずなのですが、何が原因なんでしょうか?
これにより、同じ通院内容でも医療費が大きく増えるケースが見受けられます。本記事では、こうした負担増の背景にある制度変更の内容と、その影響を受ける世帯がとるべき対応について解説します。
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「後期高齢者医療制度」の窓口負担割合が変わる仕組み:1割から2割へ
後期高齢者医療制度は、75歳以上の高齢者などが対象の公的医療保険制度で、原則として医療費の自己負担は1割とされています。しかし、一般所得者等のうち、一定以上の所得がある場合には、令和4年10月から窓口負担割合が2割に引き上げられました。
政府広報オンラインによれば、該当するのは、同じ世帯の被保険者の中に課税所得が28万円以上の後期高齢者がいるうえで、年金収入やその他の合計所得金額の合計額が、被保険者が世帯に1人の場合なら200万円以上、被保険者が世帯に2人以上いる場合は合計320万円以上であるときです。
このように2割負担の対象となった方には、経過措置として令和4年10月1日から令和7年9月30日までの3年間、外来医療の負担増加分を月3000円までに抑える「配慮措置」が実施されてきました。
しかしこの措置が令和7年9月末で終了したため、10月以降は実際にかかった医療費の2割をそのまま支払う必要があり、外来受診が多い方を中心に、月あたり数千円の医療費増加が発生する可能性があります。
「医療費が7000円増えた」背景:制度改正の影響可能性
外来診療の回数や内容が変わらないにもかかわらず、医療費が大きく増えた場合、最も考えられるのは前述の「窓口負担割合の引き上げ」における配慮措置の終了です。例えば、1ヶ月に5万円の医療費がかかっていた場合、1割負担であれば5000円の自己負担だったのが、2割負担となることで1万円に倍増します。
これまでは、こうした負担増を抑えるため、配慮措置により月の増加分は3000円以内に制限されていました。
しかし、この措置が終了したことで、10月以降は実際の2割負担がそのまま適用され、自己負担額が一気に増加することになります。月間の医療費が高額な方では、この配慮措置終了によって1ヶ月で7000円程度増えるケースもあるでしょう。
つまり、医療費の急な増加は、治療内容の変化ではなく、制度的な負担割合の見直しに伴うものと考えられます。所得基準を満たして2割負担に該当していた方が、配慮措置の恩恵を失い、実質的に全額を自己負担するようになったのです。
家計と医療負担をどう見直すか
まず確認すべきは、世帯の所得状況と現在の窓口負担割合です。仮に2割負担に該当する場合、今後の医療費がどれほど家計に影響するかを見通しておく必要があります。
例えば、毎月5万円の医療費がかかっている高齢者であれば、1割負担では5000円、2割負担では1万円となり、1ヶ月で5000円の差が出ます。これが年間となると、6万円の負担増となり、主な収入源を年金に頼っている高齢者世帯にとっては無視できない金額です。
こうした負担増に備えるには、「高額療養費制度」の利用も検討するとよいでしょう。この制度では、医療機関などで支払う医療費の自己負担額にひと月の上限が設けられており、上限を超えた分は申請により払い戻しを受けることが可能です。
また、自治体によっては、高齢者向けの医療費助成制度などを独自に設けている場合もありますので、住んでいる地域の制度も併せて確認しておくと、負担軽減につながることがあります。
まとめ
令和7年10月以降、今回の事例における80歳の母親の医療費が増加した背景には、一定以上の所得がある方の「2割負担」への引き上げと、それに伴う配慮措置の終了が考えられます。これにより、通院内容が変わらなくても、月あたり数千円規模の医療費増加が発生する可能性があります。
家計への影響を見据えて、負担割合の確認、医療費の見直し、制度の活用など、早めに対策を講じることが大切です。医療費は生活に直結する支出だからこそ、変化の背景を正しく理解し、必要な対応を進めていきましょう。
出典
政府広報オンライン 後期高齢者医療制度 医療費の窓口負担割合はどれくらい?
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
