78歳の父の医療費は「1割負担」、75歳の叔父は「2割負担」だそうです。同じ年金暮らしなのになぜ違うのでしょうか?
そのため、年齢の近い親戚や友人と比較して負担割合が変わるケースもあります。今回は、後期高齢者医療制度で自己負担割合に差が出る理由や、自己負担を軽減できる制度などについてご紹介します。
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後期高齢者医療制度の自己負担割合に差がある理由
後期高齢者医療制度の自己負担割合に差が生じる主な理由は、所得です。後期高齢者医療制度では、同じ世帯にいる被保険者の所得に応じて自己負担割合が1割、2割、3割から決められます。政府広報オンラインによると、自己負担割合ごとの基準は表1の通りです。
表1
| 自己負担割合 | 条件 |
|---|---|
| 3割 | ・同一世帯の被保険者の中に課税所得が145万円以上の人がいる (一定の基準・要件を満たす場合には、負担割合が1割または2割になるケースがある) |
| 2割 | ・同一世帯の被保険者の中に課税所得が28万円以上の人がいる、 かつ同一世帯の被保険者の「年金収入+その他の合計所得金額」が、 1人の場合は200万円以上、2人以上の場合は合計で320万円以上 |
| 1割 | ・上記に該当しない |
出典:内閣府大臣官房政府広報室政府広報オンライン「後期高齢者医療制度 医療費の窓口負担割合はどれくらい?」を基に筆者作成
つまり、今回のケースで、父親よりも叔父の方が自己負担割合が高い場合、叔父は2割負担の所得条件に該当しており、父親は該当していないことになります。
課税所得とは
課税所得とは名前の通り税金が課される所得金額です。1年間の合計所得金額を求めたあと、適用される所得控除をすべて差し引いた金額が、課税所得となります。
国税庁によれば、所得控除は15種類あり、そのうち基礎控除は全員に適用される控除です。例えば、合計所得金額140万円の人で適用される所得控除が基礎控除のみの場合、基礎控除額88万円を差し引いた52万円が課税所得となります。
なお、基礎控除は合計所得金額に応じて金額が変動するので、計算時には間違えないようによく確認しておきましょう。
後期高齢者医療制度の自己負担割合は、表1のように課税所得や合計所得の金額によって変わります。もし将来自分の自己負担割合が2割や3割になるのか不明な場合は、各所得を求めるとよいでしょう。
計算をしても分からないときは、自治体の窓口などに相談することをおすすめします。
自己負担を軽減できる制度がある
人によっては、所得が多いことから自己負担割合が2割になるものの、けがや病気による入院で費用の工面が厳しいというケースもあります。そうしたときは、自己負担が高額になった場合に利用できる「高額療養費制度」も検討しましょう。
高額療養費制度とは、1ヶ月(月初めから終わりまで)の上限を超えて支払った医療費の自己負担分を給付してもらえる制度です。70歳以上の場合、所得に応じて1ヶ月あたりの上限額は表2のように変動します。
表2
出典:厚生労働省保険局「高額療養費制度を利用される皆さまへ(平成30年8月診療分から)」を基に筆者作成
医療費とは、自己負担分として減額される前の金額を指します。例えば、2割負担で20万円を実際に支払った場合、医療費は100万円となります。
自己負担割合が異なるのは所得によって変動するため
後期高齢者医療制度では、自己負担割合が所得によって1割、2割、3割から決められます。例えば、父親の課税所得が20万円で叔父の課税所得が30万円、かつほかの条件も満たしている場合、今回のように同じ後期高齢者でも自己負担割合が異なるでしょう。
課税所得は合計所得金額から所得控除を差し引いて求めます。自身や家族が対象になるのか気になる場合は、簡単に計算してみるのも方法のひとつです。
なお、医療費の自己負担が多いと感じたときは高額療養費制度が利用できる可能性があります。所得を基に、上限を超えて支払っていないか調べてみるとよいでしょう。
出典
内閣府大臣官房政府広報室政府広報オンライン 後期高齢者医療制度 医療費の窓口負担割合はどれくらい?
国税庁 パンフレット「暮らしの税情報」(令和7年度版)所得税のしくみ
厚生労働省保険局 高額療養費制度を利用される皆さまへ(平成30年8月診療分から)(4ページ)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
