60代夫婦で通院が増え、医療費が「月2万円」を超えました。まわりは毎月どれくらい払っているの? 年代別で平均額を知りたいです。
医療費は健康に直結する一方、家計にとっては固定費のように重くのしかかる支出です。多いのか少ないのかが分からないまま支払い続けると、必要な治療を我慢したり、逆に不要な負担を抱え続けたりするリスクもあります。
本記事では公的統計に基づき、年代別の医療費平均を自己負担ベースで整理し、60代夫婦で月2万円という金額がどの位置にあるのかを解説します。また、公的制度や家計での工夫を踏まえ、無理のない医療費管理の考え方も紹介します。
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目次
年代別医療費の平均から相場感をつかむ
まずは、年代ごとにかかる医療費を押さえましょう。厚生労働省「令和5(2023)年度 国民医療費の概況」によると、年齢階級別の1人あたり年間の国民医療費は次のようになっています(保険診療の対象となる医療費の合計)。
・0~14歳:19万5400円
・15~44歳:14万8300円
・45~64歳:30万6800円
・65歳以上:79万7200円
同じ統計で、国民医療費全体に占める患者等負担分(窓口などでの自己負担)が約11.8%とされています。これは「医療費の約1~2割を患者が自己負担し、残りは保険者・公費などが負担している」という日本の医療保険制度の構造を示しています。
この11.8%という比率を用いて、ざっくりと自己負担分の平均を推計すると、図表1のようなイメージになります。
図表1 年代別・1人あたり自己負担額(推計)
| 年代 | 1人あたり年間医療費 | 年間自己負担 (推計・11.8%) |
月あたり自己負担(推計) |
|---|---|---|---|
| 0~14歳 | 19万5400円 | 約2万3000円 | 約1900円 |
| 15~44歳 | 14万8300円 | 約1万7000円 | 約1500円 |
| 45~64歳 | 30万6800円 | 約3万6000円 | 約3000円 |
| 65歳以上 | 79万7200円 | 約9万4000円 | 約7800円 |
※厚生労働省「令和5(2023)年度 国民医療費の概況」より筆者作成
高齢になると医療費が急激に増加するのは、薬の処方数や治療の長期化が影響しています。図表1を夫婦2人に置き換えると、高齢夫婦の平均医療費は月1万5000円前後と考えられます。体調や受診頻度で増減はありますが、日本全体の平均水準として覚えておきたいデータです。
60代夫婦の月2万円はどのくらいの位置づけ?
では、60代夫婦で医療費が月2万円を超えるケースは、平均と比べてどうなのでしょうか。先ほどの国民医療費の統計は、45~64歳と65歳以上で区切られているため、60代はちょうど「医療費が増える入り口」にあたるといえます。
・45〜64歳:1人あたり月約3000円(推計自己負担)
・65歳以上:1人あたり月約7800円(推計自己負担)
60~64歳は前者寄り、65~69歳は後者寄りと考えると、60代全体のざっくり平均像としては「1人あたり月5000~6000円前後」、夫婦2人だと月1~1万2000円前後が標準的なレンジと推測できます。
この仮の平均と比較すると、60代夫婦で月2万円の医療費は、平均的な60代夫婦よりはやや多めといえます。しかし、以下のような事情があれば、月2万円は十分あり得る水準です。
・片方または両方が持病の薬を複数服用している
・定期的な検査やリハビリがある
・歯科治療や眼科治療(白内障など)が続いている
特に、通院1回あたりの窓口負担が1000~3000円程度であっても、月に3~4回ずつ夫婦で受診すれば、それだけで1万円以上かかります。そこに薬代・歯科・整形外科などが重なれば、2万円を超えるのは珍しくありません。
つまり、2万円だから異常値というわけではないが、何にいくらかかっているかは一度分解して確認したほうがよい金額といえます。
医療費が家計に占める割合も確認しよう
金額だけでなく、家計全体に対する負担感を見ることも重要です。
総務省統計局「家計調査(家計収支編)2024年(令和6年)平均結果の概要」によると、二人以上の世帯の消費支出(生活費全体)の月平均額は60〜69歳世帯が31万1392円、70歳以上世帯:25万2781円です。医療費はその約6%を占めますが、60代が月1万8000円前後、70代:月1万5000円前後となります。
つまり、月2万円という医療費は統計的にも「十分あり得る水準」です。一方で、次のような状態は負担が重いサインです。
・医療費が消費支出の1割を超える
・医療費のために食費や光熱費を削り始めている
・貯蓄の取り崩しが急に増えている
60代・70代は、今後も医療費が上昇していく可能性が高い世代です。今の段階で「どれくらいまでなら無理なく払えるか」というラインを、夫婦で一度話し合っておくのが望ましいでしょう。
公的制度と家計管理で無理なく続ける医療費対策
医療費は年齢とともに増えやすい支出ですが、公的制度や家計の工夫を活用すれば、負担を和らげることが可能です。必要な治療を続けながら家計を守るために、まずは利用できる制度と見直しの方法を押さえておきましょう。
1. 高額療養費制度で月の負担を抑える
高額療養費制度は、医療費の自己負担が一定額を超えた際に超過分が払い戻される制度です。所得や年齢に応じて自己負担の上限額が決められており、事前に限度額適用認定証を取得すれば医療機関の窓口負担を抑えられます。入院や高額な治療の予定がある場合は、早めに確認しておきましょう。
2. 医療費控除で年単位の負担を調整
年間の医療費が一定額を超えると、確定申告で医療費控除が受けられます。夫婦分の医療費を合算できるため、年間20万円前後の支出がある家庭では効果が大きい制度といえます。
3. 家計側での工夫
・医療費専用の積立口座を作る
・医療費の科目別に記録し、必要・不要を整理する
・加入中の民間保険が過剰ではないか確認する
特に慢性疾患がある場合、保険より貯蓄で備えが合理的な場合もあるため、状況に応じて見直しを検討しましょう。
データを基に、医療費を賢くコントロールしよう
60代夫婦で月2万円という医療費は平均より高めではあるものの、通院内容や治療の状況によっては十分に起こり得る範囲です。重要なのは、感覚的な判断ではなくデータを基に自分たちの位置を把握し、家計とのバランスを確認することです。
公的制度や家計の工夫を積極的に活用し、無理のない支払いラインを夫婦で共有しながら、安心して必要な治療を続けられる環境を整えていきましょう。
出典
厚生労働省 令和5(2023)年度 国民医療費の概況
総務省統計局 家計調査報告 家計収支編 2024年(令和6年)平均結果の概要
厚生労働省保健局 高額療養費制度を利用される皆さまへ(平成30年8月診療分から)
国税庁 No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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