認知症の父を介護施設に入居させたいのですが、年金15万円で収まるか不安です。医療費も含め、どのくらい費用がかかるのでしょうか?
本記事では、年金でどこまで賄えるのかを客観的に整理し、現実的な判断基準を解説します。
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施設入居にかかる費用の目安
介護施設の費用は、立地やサービス内容で大きく変わります。近年は初期費用を抑えた施設も増え、入居一時金なしのケースも珍しくありません。月額費用は10~20万円台が中心で、公的施設や多床室では10万円台前半に収まる例もあります。一方、民間の有料老人ホームや個室、医療ケアが手厚い施設では20万円以上となることもあります。
年金15万円以内で抑えたいと考える場合、月額10~15万円の施設が候補になりますが、これはあくまで「施設利用料のみ」を想定した数値です。居室タイプや地域の物価、介護度、認知症の進行状況によって費用は上振れしやすく、年金だけで完結しないケースも多く見られます。
医療費・介護保険負担・雑費などの付帯費用
施設費用に加え、医療費や介護保険の自己負担(原則1割)、通院・薬代、日用品費、オプションサービスなどが発生します。特に、認知症の方は複数の慢性疾患を併発しやすく、通院や投薬の頻度が増える傾向があります。
医療費に関しては、個人の自己負担額を月単位で示す最新の統計は限られていますが、参考となる研究として、慶應義塾大学の推計(2015年)では認知症の入院医療費が月34万4300円、外来医療費が月3万9600円とされています。ただし、これらは公費や保険者負担を含めた“医療費総額”であり、本人が支払う額とは異なります。
それでも、認知症では医療費が積み上がりやすいという構造を理解する材料になります。実際には、診察料や薬代、訪問診療費などで月に数千~1万円台が中心ですが、医療ニーズが高い場合は数万円に及ぶこともあり、施設の月額は予算内でも付帯費用を含めると年金を超える可能性があります。
年金15万円で収まるか判断するポイント
年金の範囲で無理なく支払い続けられるかを判断するには、費用に影響する主要なポイントを整理し、一つずつ確認していくことが欠かせません。具体的には、次のような点を事前に把握しておくことで、年金15万円で賄えるかどうかの見通しが立てやすくなります。
1. 施設の種類・居室タイプ
公的施設や多床室であれば、比較的費用を抑えられます。一方、個室や民間施設、医療ケアが必要なタイプでは予算を超えることが多く、安定的な支払いには工夫が必要です。
2. 地域の相場
都市部は施設費用が高くなりやすく、同じサービス内容でも地方との差は数万円に及ぶことがあります。住まいの近隣だけでなく、近県を含めて相場を比較することが有効です。
3. 介護度・医療ケアの必要性
要介護度が高い、医療ケアが必要といった場合は費用も増えます。認知症は進行により夜間対応や医療処置が必要になる可能性があるため、今の状態だけで判断しないことが大切です。
ケース別のイメージ
費用の考え方をより具体的にイメージするために、年金15万円を前提にした代表的なケースをいくつか見てみましょう。実際の介護度や医療ニーズによって差はありますが、全体像をつかむ参考になります。
・公的施設
月額10万円+付帯費用2万円前後。年金15万円以内で収まる可能性がある、最も現実的な選択肢です。
・民間施設(標準)
月額15万円+付帯費用3万円程度。年金15万円では毎月3万円程度の赤字となり、貯蓄を取り崩したり家族支援が必要になったります。
・医療ケア強化型施設(民間施設)
月額20万円以上+医療費5万円前後。年金15万円では大きく不足し、資産や家族のサポートが必須です。
このように、年金内で安定した支払いを目指すなら、月額10~13万円前後を満たす施設が現実的なラインとなるでしょう。
将来の費用増に備えて早めに準備しよう
年金15万円で施設入居を検討する場合、月額費用が低めの公的施設や多床室を中心に選ぶことで収まる可能性があります。しかし、認知症の病状の進行や医療ニーズが変化することで費用が増えるリスクがあるため、年金だけでは十分でない場面も考えられます。
将来の費用増加に備え、貯蓄や家族の支援、資産の活用などを早めに検討しておくことが安心につながります。長期的視点を持って、余裕のある計画づくりを進めていきましょう。
出典
慶應義塾大学 認知症の社会的費用を推計 -認知症患者や家族の生活の質の向上のため最適な解決の手がかりに-
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー