今後「70歳以上」でも“医療費負担が3割”になるって本当ですか? 母は年金を「年180万円」受け取っていますが、1割負担から増えるでしょうか? 基準見直しで“3割負担”になる人とは

配信日: 2025.11.28
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今後「70歳以上」でも“医療費負担が3割”になるって本当ですか? 母は年金を「年180万円」受け取っていますが、1割負担から増えるでしょうか? 基準見直しで“3割負担”になる人とは
2022年10月から、一定以上の所得がある後期高齢者の医療費の負担割合は2割になりました。そして、2025年11月13日に行われた社会保障審議会部会で、現役世代と同じ3割とする70歳以上の対象者の見直しが検討されました。
 
結論は年内にも出るとされていますが、まずは現在の段階でどのような仕組みになっているのか気になる人も多いかと思います。
 
本記事では、どのような条件の場合に後期高齢者の医療費が1割となるのか、3割になるのはどのような人なのかを解説します。また、年金を年間で180万円受給している場合を例として、負担割合はどうなるのかを解説します。
金成時葉

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後期高齢者医療制度とは

後期高齢者医療制度とは、75歳以上の人、または65歳から74歳までの人で一定の障害の状態にあると後期高齢者医療広域連合から認定を受けた人が加入する医療保険です。75歳になったとき、勤めているかどうかにかかわらず、自動的に加入します。
 
医療費負担については、現在、70~74歳の人が原則2割、75歳以上の人が原則1割ですが、負担の割合は年齢や所得によって異なります。
 

後期高齢者医療制度の見直しが行われている背景

なぜ、後期高齢者医療制度の見直しが行われているのでしょうか。背景をくわしく見ていきましょう。
 

現役並みの所得の判定基準が長い間見直されていない

2022年以降、団塊の世代が後期高齢者となり、医療費の増大が見込まれています。医療費の財源としては、窓口負担を除いた約4割を現役世代が負担する構造であり、今後も負担が重くなると予想されています。
 
2025年現在、現役並みの所得がある高齢者は3割の自己負担が求められますが、現状、該当する高齢者は約7%です。
 
なお、現役並みの所得がある人の給付費には公費が含まれておらず、今の状態で現役並みの所得に該当する人を増やすと、現役世代の負担が増えることになります。また、現役並みの所得の判定基準は2006年から変更されていません。
 

自己負担額の逆転が起きている

一般的に、高齢者は若い世代と比較して、所得が低い一方で医療費が高い傾向にあるとされています。なお、年齢階級別の一人あたり医療費と自己負担額を見ると、高齢になるにつれて一人あたりの医療費は高くなりますが、自己負担額は60代後半をピークに低くなる逆転現象が起きています。
 

窓口の負担割合には金融所得が反映されていない

医療費の窓口の負担割合は、市町村民税の所得情報をもとに計算が行われています。そのため、非課税所得や源泉徴収で課税関係が終了する金融所得、金融資産などは反映されていません。
 
ただ、厚生労働省の「世代内、世代間の公平の更なる確保による全世代型社会保障の構築の推進(医療保険における金融所得の勘案について)」によると、2019年の2人以上の世帯における世帯主の年齢階級別の利子・配当金シェアを見ると、75歳以上は30%と、2009年の21%から増加しています。
 
高齢者全体で見ると、所得が増加・多様化の傾向にあり、世代間の不公平感を是正するため、制度の見直しが進められています。
 

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高齢者における現役並み所得の金額とは

では、窓口の負担割合が3割となる「現役並み所得」とは、どのような基準なのかを見ていきましょう。なお、ここでは医療保険における判定基準を解説します。
 
図表1

図表1

厚生労働省「世代内、世代間の公平の更なる確保による全世代型社会保障の構築の推進(医療保険における金融所得の勘案について)」より筆者作成
 
課税所得とは、収入から必要経費や所得控除などを差し引いた後の額を指します。また、国民健康保険と被用者保険における被保険者や被扶養者は70~74歳の人に限られます。
 
つまり、課税所得が145万円以上かつ単身世帯であれば年収が383万円以上、複数世帯であれば年収520万円以上だと現役並み所得とみなされ、窓口での負担割合が3割となります。
 

窓口の負担割合が1割になる基準は?

一方、後期高齢者において、窓口の負担割合が1割になる基準は、次の3つのいずれかに該当する場合です。
 

・課税所得が28万円未満
・世帯全員が住民税非課税で年収約80万円超
・世帯全員が住民税非課税で年収約80万円以下

 
例えば、76歳の母が一人暮らしで年金収入180万円のみの場合を見てみましょう。65歳以上で年金収入が110万円超330万円未満の場合、控除額は110万円です。住民税における基礎控除は43万円のため、課税所得は27万円となり、窓口の負担割合は1割となります。
 

今後の動きに注目しよう

現役並み所得がある後期高齢者の給付費は、現役世代による支援金が約9割を占めており、対象者の拡大のみを行う場合、現役世代の負担がますます増えることになります。
 
また、現役並み所得の基準は20年近く変わっておらず、確定申告をしていない場合は金融所得が含まれていないことから、年金とその他の所得を合わせたものへの見直しが検討されています。
 
支払い能力に見合った医療費負担を求める声が上がっていますが、生活が苦しく働かざるをえない後期高齢者がいることも事実です。今のところ、1割負担の基準に関しては議題に上がっていませんが、今後の動きを注視する必要があるでしょう。
 

出典

厚生労働省 世代内、世代間の公平の更なる確保による全世代型社会保障の構築の推進(医療保険における金融所得の勘案について)
 
執筆者 : 金成時葉
2級ファイナンシャル・プランニング技能士

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