70歳の母が「月8万円で一人暮らしを続けたい」と言っています。年金は月12万円…。娘の私(32歳・手取り22万円)は援助すべき?
特に今回の事例にように、親が月8万円で一人暮らしを続けたいと希望している場合、年金月12万円で生活費は足りているのかを把握することが、援助の要否を判断する重要なポイントとなります。
本記事では、統計データをもとに、年金収入だけで高齢者が一人暮らしできるのかを検証し、子どもが援助を考えるべきケースについて解説します。
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年金月12万円の生活は本当に成り立つのか?
総務省統計局の「家計調査報告[家計収支編]2024年(令和6年)平均結果の概要」によると、65歳以上の単身無職世帯における1ヶ月の平均的な家計収支は、以下のようになっています。
まず、実収入は13万4116円で、そのうちの大部分である12万1629円が年金などを含む社会保障給付です。一方、消費支出は14万9286円に達しており、食費や光熱費、医療費、交際費などの日常的な支出をまかなうだけでも、年金収入をやや上回っている状況です。
さらに、税金や社会保険料などの「非消費支出」も1万2647円発生しており、収支の差し引きで見ても、月間で2万8000円近くの赤字となっています。
仮に「月8万円でやりくりできる」とお母さまが言っていたとしても、それはかなり切り詰めた生活を想定していると考えられます。実際の支出が少ない場合でも、家電の買い替えや急な病気・入院など、突発的な出費は避けられません。
「家に仕送り」は必ずしも正解とは限らない
こうした状況を踏まえると、「やはり援助すべきでは?」と感じる方もいるかもしれません。ただし、仕送りをすることが常に最善とは限りません。
まず、子世代自身の生活の余裕を考える必要があります。仮に今回のケースのように、手取り22万円で家計に余裕がない場合、安易に月数万円を送金することは将来的な自分の生活資金を圧迫する可能性があります。老後の自分自身の資金確保や、子育て、住居費といった支出を優先せざるを得ない局面もあるでしょう。
一方で、親が年金収入で基本的な生活を維持できており、貯蓄や資産がある程度あるならば、仕送りの必要性は下がります。実際に支出の内訳や固定費の状況を聞いてみて、必要であれば一部を援助するというスタンスでも問題はないでしょう。
例えば、毎月ではなく医療費や高額な買い物のタイミングだけ援助するなど、「スポット支援」という形をとる選択肢もあります。
金銭的な援助以外にもできることを考える
もし子どもが金銭的に十分な援助が難しいと感じる場合でも、他にできるサポートは多くあります。
例えば、節約方法を一緒に考える、公共料金や保険の見直しを手伝う、自治体の高齢者向けサービスを活用するなど、「生活支援」という形で寄り添うことができます。また、スマートフォンの使い方を教える、買い物や手続きの付き添いをするだけでも、高齢者にとっては大きな助けとなるでしょう。
定期的に連絡を取ったり、帰省時に家計の状況をさりげなく確認したりすることも、将来的なリスクを早期に察知するためには有効です。特に高齢者は遠慮して「大丈夫」と言いがちなので、実際の生活水準を見極める目が重要になります。
まとめ
年金が月12万円で生活費は月8万円でやりくりできると言っていても、統計的には高齢の単身生活にはおおよそ15万円前後の支出がかかっているという実態があります。お母さまの生活が本当にその金額で成り立っているかを把握することが、援助すべきか否かを判断する第一歩です。
娘さん自身の生活に無理がない範囲で、必要に応じたサポートを考えるのが理想的です。
仕送りにこだわらず、生活支援や心のケアなど、さまざまな形での援助方法を検討することで、親子ともに安心できる暮らしを築けるのではないでしょうか。
出典
総務省統計局 家計調査報告[家計収支編]2024年(令和6年)平均結果の概要 II 総世帯及び単身世帯の家計収支<参考4>65歳以上の無職世帯の家計収支(二人以上の世帯・単身世帯)表2 65歳以上の夫婦のみの無職世帯(夫婦高齢者無職世帯)及び65歳以上の単身無職世帯(高齢単身無職世帯)の家計収支 -2024年-(19ページ)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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