【比較】「早期退職」vs「定年退職」53歳退職なら“500万円上乗せ”でも、意外とデメリットも多いって本当ですか?「53歳・60歳」の受取額をシミュレーション
「早期退職で500万円の上乗せ金を支給します」といった形で提示されると、早期退職のほうが得に見えることもあるでしょう。しかし実際には 退職金、年金、社会保険料、その後の働き方など、さまざまな要素によって、早期退職が得かどうかは決まります。
本記事では、モデルケースをもとに、早期退職と定年退職のどちらが得なのかを、制度面と簡単なシミュレーションを交えて比較します。
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目次
早期退職すると「本来の退職金」はどう変わる?
退職金は、一般的には勤続年数が長いほど増える仕組みで、多くの場合、満額を受け取るには定年まで働き続ける必要があります。
例えば、53歳で早期退職した場合、60歳までの7年間で積み上がるはずだった退職金部分がなくなり、総額が減少します。仮に定年まで働いた場合の退職金が2000万円だった人が、53歳で退職することで1400万円に下がるケースを考えると、その差は600万円です。
上乗せ金は、この下がった金額(1400万円)の不足分を補う趣旨で設定されることが多々あります。仮に上乗せ金が500万円だと、確かに53歳時点の退職金の積み上げ金額よりは多くもらえますが、本来の退職金(2000万円)と比べると100万円目減りしている計算になります。
割増金は、得というより「減る部分の補てん」という意味合いが強いと言えるでしょう。
早期退職すると将来受け取る年金額が減る
早期退職の大きな影響として、「厚生年金の加入期間が途中で止まる」点が挙げられます。会社員として60歳まで働き続ければ、その期間は全て厚生年金額の計算に反映されます。
しかし、例えば53歳で退職すると、そこから先の7年間は厚生年金に加入していないため、将来受け取る年金額が減ることになります。
健康保険料の負担
会社員時代は、会社が健康保険料の半分を負担してくれますが、退職後は、前の会社の健康保険をそのまま任意継続(2年間まで)したり、国民健康保険に加入したりします。
任意継続と国民健康保険は、年収や家族構成によって最適なものが異なるので、場合によっては健康保険料の負担が増すことがある点を認識しておきましょう。
社会保険の恩恵や保険料は「働き方」で大きく変わる
年金受給額や健康保険料の変更などの社会保険に関する項目は、退職した後の働き方によって大きく変わります。
早期退職後に再就職し、再び会社員として働く場合には、厚生年金と健康保険に再加入でき、その保険料は再就職先の会社が半分負担します。収入の規模の変化にもよりますが、場合によってはこれまでよりも老後の生活が安定することもあるでしょう。
一方、「無職の期間が続く場合」や「パート勤務で社会保険の加入条件を満たさない場合」については、これまでの想定と大きく変わる可能性がある点に注意が必要です。
早期退職は本当に得なのか? 簡易シミュレーション
それでは、早期退職は得なのかシミュレーションしてみましょう。今回は年金や健康保険は考慮せず、収入のみを比較し、前提は下記とします。
・53歳で早期退職
・本来(60歳まで働いた場合)の退職金:2000万円
・早期退職で割増金込みの退職金:1900万円(▲100万円)
・早期退職後に再就職したものの、年収が100万円下がる(600万円→500万円)
・再就職先の退職金はなし
・早期退職しなくても、再就職後も60歳まで働く
この場合の定年までの収入差を比べると、年収分で700万円(100万円×7年)、退職金で100万円、合計で800万円、早期退職が不利になります。
ただし、この結果は「再就職後の年収ダウンが大きい」「再就職先の退職金がない」という前提での試算です。再就職後の収入が今までよりも上がる、退職金が出るなどの場合は、再就職のほうが得になるかもしれません。
ちなみに、再就職をせず、無職期間が長い場合、本来60歳までもらえていた給料よりもかなり収入が減ります。極端な例ですが、53~60歳までずっと無職の場合、年収分で4200万円(600万円×7年)、退職金で100万円、合計で4300万円減ってしまいます。
まとめ
早期退職は、上乗せ金が提示されるため一見お得に見えますが、実際には退職金の減額、厚生年金の加入期間の短縮、健康保険料の負担増などが重なり、必ずしも得とは限りません。
一方、再就職して会社員として働き続ければ、再び厚生年金や健康保険に加入でき、老後資金にプラスに働く場合もあります。
今回のシミュレーションでは、再就職後の年収ダウンが大きく、早期退職が不利となりましたが、働き方や収入次第で結果は変わります。早期退職は提示額だけで判断せず、総合的な視点で検討することが重要です。
執筆者 : 三浦大幸
2級ファイナンシャルプランニング技能士/日商簿記3級/第一種衛生管理者/証券外務員/英検2級など