都内の家賃が高く、月15万円の年金暮らしには厳しい…都営住宅に引っ越したら23区内でも月3万円以内で暮らせるって本当?
一方で、都営住宅に入居できれば、23区内でも月3万円以内など、低額で住めるという話を耳にすることがあります。
本記事では、家計調査のデータや東京都内の家賃相場を基に高齢者の家計状況を整理し、都営住宅の家賃や申込条件とあわせてその現実性を検証します。
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年金暮らしの高齢者の家計状況
総務省統計局の「家計調査報告[家計収支編]2024年(令和6年)平均結果の概要」によれば、まず65歳以上の単身無職世帯における1ヶ月の実収入は13万4116円で、そのうち年金などの社会保障給付が12万1629円を占めています。
一方、消費支出は14万9286円、非消費支出が1万2647円で、差し引き2万7817円の赤字となっており、年金収入のみでは生活が成り立ちにくい実態が示されています。
また、65歳以上の夫婦のみ無職世帯についても、実収入は月25万2818円で、そのうち年金などの社会保障給付は22万5182円を占めています。消費支出は25万6521円、非消費支出が3万356円で、1ヶ月あたり3万4058円の赤字とされています。
単身世帯より収入は多いものの、支出額も大きいため、結果として持続的な赤字となり、貯蓄の取り崩しが前提となりやすい状況にあります。
このように、老後は単身世帯・夫婦世帯のいずれにおいても赤字が生じやすく、特に住居費の比重が大きい都市部では、家賃負担が老後の生活を不安定にする要因となりやすいといえます。
都内で月15万円の年金生活は現実的? 家賃相場から検証
アットホーム株式会社「全国主要都市の『賃貸マンション・アパート』募集家賃動向(2025年10月)」によると、東京23区の単身者向けマンションの平均家賃は10万4594円、アパートでも7万732円となっています。東京都下のエリアでも単身者向けマンションが6万2400円、アパートで5万6494円と、都内全域で高水準です。
月15万円の年金収入でこれらの家賃を支払うと、残りは4万円~9万円程度しか残らず、食費・光熱費・医療費・通信費を考えると生活はきわめて厳しくなる可能性があります。前述の家計調査で示された赤字額から見ても、民間賃貸に住み続ける場合、老後の生活設計が不安定になりやすいことは明らかです。
そのため、家賃負担を大きく抑えられる公営住宅がひとつの選択肢になるでしょう。
都営住宅の家賃は本当に安い?
東京都住宅政策本部によれば、都営住宅の家賃は、世帯の所得や住宅のある地域、住宅の広さ、建築年数などによって決定され、民間賃貸と比較すると非常に低く設定されています。
例えば、2人世帯で練馬区にある都営アパート(2DK・36平方メートル・昭和44年度建設)の場合、所得金額の区分に応じて1万7600円~3万8600円の家賃(使用料)となっています。
これは、公営住宅が「住宅に困窮する低所得者を対象とした住宅」であり、収入が少ないほど家賃が軽減される制度設計となっているためです。年金収入が月15万円前後の単身高齢者であれば、家賃区分が低く設定され、家賃が大幅に抑えられる可能性があります。
ただし、募集戸数は限られ、応募倍率が高い地域も多いため、必ずしもすぐ入居できるわけではありません。また、住宅によっては築年数が古い場合もあるなど、メリットだけでなく実際の住環境も確認した上で検討する必要があります。
都営住宅に申し込むには? 主な条件
東京都住宅供給公社(JKK東京)によれば、都営住宅の主な申込条件には次のような内容があります。
まず、東京都内に居住していることが条件となります。単身者の場合、東京都内に引き続き3年以上居住している必要があります。
次に、同居親族がいることです。配偶者がおらず、単身で居住している場合は「60歳以上」などの要件にあてはまっている必要があります。
また、所得が定められた基準内であることが求められ、これは世帯の所得金額が家族の人数に応じた基準の範囲内であるかどうかで判断されます。
さらに、現に住宅に困っていること、暴力団員でないことなども要件に含まれます。
これらの条件を満たせば単身高齢者でも応募でき、当選すれば低額の家賃で都内に住み続けることが可能となります。
まとめ
月15万円の年金収入では、東京23区の民間賃貸住宅の家賃相場を考えると、住居費の負担が生活を大きく圧迫するのが現実です。家計調査が示すとおり、高齢者の生活は年金だけでは赤字になりやすく、住居費の削減は重要な課題となります。
都営住宅は収入に応じて家賃が大幅に抑えられ、場合によっては23区内でも3万円以内で住むことが可能です。申込条件を満たしていれば単身高齢者でも応募できるため、家計の安定を図る上で有力な選択肢となるでしょう。
ただし、募集倍率や住宅環境には注意が必要であり、長期的な視点で検討することが大切です。
出典
総務省統計局 家計調査報告[家計収支編]2024年(令和6年)平均結果の概要 II 総世帯及び単身世帯の家計収支 <参考4> 65歳以上の無職世帯の家計収支(二人以上の世帯・単身世帯) 表2 65歳以上の夫婦のみの無職世帯(夫婦高齢者無職世帯)及び65歳以上の単身無職世帯(高齢単身無職世帯)の家計収支 -2024年-(19ページ)
アットホーム株式会社 全国主要都市の「賃貸マンション・アパート」募集家賃動向(2025年10月)(3~4ページ)
東京都住宅政策本部
東京都住宅供給公社(JKK東京) 公営住宅募集情報 都営住宅募集情報
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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