59歳で貯蓄は“約500万円”、“2000万円程度”の「退職金」をもらえそう。「老後2000万円問題」はクリアできそうですし、「余裕のある老後」を過ごせますよね?
本記事では、老後2000万円問題の概要や、60歳以降に2500万円あれば余裕のある老後生活を送れるのかを解説します。
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目次
60歳代の金融資産保有額は“平均約2033万円”
金融経済教育推進機構(J-FLEC)が実施した調査によると、金融資産非保有世帯を含む二人以上世帯における60歳代の金融資産保有額の平均は2033万円、中央値は650万円です。
また、預貯金(運用または将来の備え)は811万円、うち定期性預貯金(預入期間が定められている貯金)は411万円となっています。以上から、掲題にある貯蓄500万円+退職金2000万円=2500万円の金融資産は平均を上回る水準といえます。
中小企業と大企業の退職金は“1000万円程度”の差がある可能性
東京都産業労働局が公開した「中小企業の賃金・退職金事情(令和6年版)」によると、大学卒・定年のモデル退職金は1149万5000円です。一方、厚生労働省中央労働委員会が実施した調査を基に、労働者数1000人以上の特定の大企業における男性の平均退職金支給額を表1にまとめました。
表1
| 勤続年数 | 大卒 | 高卒 |
|---|---|---|
| 勤続35年 | 1867万6000円 | 1319万8000円 |
| 満勤勤続 | 2139万6000円 | 2019万9000円 |
※厚生労働省中央労働委員会「令和5年退職金、年金及び定年制事情調査 調査結果の概要」を基に筆者作成
平均退職金は満勤勤続の場合、大卒・高卒にかかわらず約2000万~2100万円となっています。このことから、都内中小企業と大企業の退職金には1000万円程度の差があると思われます。
「老後2000万円問題」をクリアすれば余裕のある老後を過ごせる?
老後2000万円問題とは、金融庁の金融審議会市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」で提起された問題です。この報告書では、老後20年で約1300万円、30年で約2000万円の取崩しが必要になると試算されています。
しかし、これはあくまで令和元年時点の試算です。取り崩しの目安は物価や賃金の水準によって変化しているため、最新の水準で試算を行い、日々老後に向けて見直す必要があります。
総務省統計局が発表した「家計調査報告(家計収支編)2024年(令和6年)平均結果の概要」を基に、令和6年の水準で試算してみましょう。65歳以上の夫婦のみの無職世帯(夫婦高齢者無職世帯)の実収入は25万2818円です。一方、支出は非消費支出3万356円+消費支出25万6521円で合計28万6877円となっています。
この場合、家計収支はマイナス3万4058円です。つまり、夫婦高齢者無職世帯の場合、令和6年の水準では20年で817万3920円、30年で1226万880円の取り崩しが発生する恐れがあります。
日本年金機構が示す夫婦2人で標準的な金額の年金(23万2784円/令和7年度)を受給できれば、不足分は月5万4093円、30年で1947万3480円となるため、2500万円の貯蓄と退職金である程度、余裕のある生活ができるかもしれません。
ただし、これは令和6年時点の物価水準で計算した結果であり、物価が上昇した場合は必要資金が増加する可能性があります。
なお、本試算には60〜64歳の年金受給開始前に生じる生活費の取り崩しは含まれておらず、再雇用などで就労を続ける場合とそうでない場合とでは必要資金が大きく異なります。将来的な介護費用や住宅費(持ち家の修繕・賃貸の家賃など)の負担によっても、老後に必要となる資金額は前後する点にも注意が必要です。
まとめ
500万円の貯蓄と2000万円の退職金がある夫婦2人が標準的な年金を受け取れる場合、老後2000万円問題はクリアできるかもしれません。しかし、老後の必要資金は物価や賃金の水準によって変化します。老後生活を安心して過ごすためには、最新の水準で試算と定期的な見直しを行うことが重要です。
出典
金融経済教育推進機構(J-FLEC) 家計の金融行動に関する世論調査 2024年 二人以上世帯、各種分類別データ(令和6年)
東京都産業労働局 中小企業の賃金・退職金事情(令和6年版) 第8表 モデル退職金(120~130)
厚生労働省中央労働委員会 令和5年賃金事情等総合調査 調査結果の概要 令和5年退職金、年金及び定年制事情調査
総務省統計局 家計調査報告(家計収支編)2024年(令和6年)平均結果の概要
金融庁 金融審議会市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
