孫のためにと“毎月2万円”のお小遣いをくれる祖父母。ありがたいのですが「負担」になっていないか心配です。年金でこんなに余裕はあるものですか?

配信日: 2025.12.25
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孫のためにと“毎月2万円”のお小遣いをくれる祖父母。ありがたいのですが「負担」になっていないか心配です。年金でこんなに余裕はあるものですか?
祖父母が孫のために毎月2万円のお小遣いを送ってくれるのは、ありがたい反面、「年金収入でそこまで余裕があるのだろうか」「生活に負担がかかっていないか」と心配になる人もいるでしょう。高齢者世帯の暮らしについては、「年金で安定している」というイメージがある一方で、実際の家計や生活意識には個人差があります。
 
こうした不安を整理するには、感覚的な印象ではなく、公的統計に基づいて高齢者世帯の実態を見ることが重要です。
 
本記事では、公的な統計データをもとに、高齢者世帯の収支状況や年金への依存度、生活意識を整理し、毎月の金銭支援をどう考えるべきかを解説します。
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夫婦高齢者無職世帯の収入と支出の状況

高齢者世帯の家計状況を把握するうえで参考になるのが、総務省統計局「家計調査報告[家計収支編]2024年(令和6年)平均結果の概要」です。
 
同調査によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯(夫婦高齢者無職世帯)における1ヶ月の実収入は25万2818円となっています。
 
このうち、年金を含む社会保障給付は22万5182円を占めており、収入の大部分を公的年金などに依存している構造がうかがえます。一方、1ヶ月の消費支出は25万6521円で、これに加えて税金や社会保険料などの非消費支出が3万356円発生しています。
 
これらを差し引くと、1ヶ月あたりの家計収支は3万4058円の赤字となっており、統計上は、年金を中心とした収入だけでは生活費と非消費支出を賄いきれていない状況が示されています。実際には、貯蓄の取り崩しなどで不足分を補っている世帯も多いと考えられますが、「毎月余裕がある」と言い切れる家計構造ではない点には注意が必要です。
 

年金が所得のすべてを占める高齢者世帯も少なくない

さらに、収入の内訳に注目すると、高齢者世帯がどれほど年金に依存しているかが見えてきます。厚生労働省の「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」によると、公的年金・恩給が総所得の100%を占める高齢者世帯は43.4%となっています。
 
これは、公的年金・恩給を受給している高齢者世帯のおよそ4割が、公的年金・恩給以外の所得をほとんど持たず、年金だけで生活していることを意味します。ほかの世帯についても、年金が主要な収入源となっているケースは多く、高齢者世帯の生活が年金制度に大きく支えられている実態がうかがえます。
 
このような構造を踏まえると、月々の支出に加えて、継続的な金銭支援を行う余力があるかどうかは、世帯ごとに慎重に見極める必要があるといえるでしょう。
 

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高齢者世帯の「生活が苦しい」という実感

収支や所得構造だけでなく、生活に対する意識も重要な視点です。同じく厚生労働省の「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」によると、生活意識について「苦しい」(「大変苦しい」と「やや苦しい」)と答えた高齢者世帯の割合は55.8%にのぼっています。過半数の高齢者世帯が、家計に対して何らかの厳しさを感じていることになります。
 
年金収入が安定して入っていたとしても、物価上昇や医療費、将来への備えなどを考えると、心理的な余裕を持ちにくい状況にある世帯は少なくありません。このため、外から見て「余裕がありそう」に見える場合でも、本人の生活実感としては決して楽ではない可能性があります。
 

「毎月2万円」の支援をどう受け止めるか

これらのデータを踏まえると、今回の事例のように祖父母が毎月2万円を孫のために出している場合でも、それが「年金に余裕があるから当然にできる支援」とは言い切れません。家計上は赤字構造で、貯蓄を取り崩しながら支援している可能性も考えられます。
 
そのため、支援を受ける側としては、金額そのものよりも、祖父母本人が「無理のない範囲」と考えているかどうかを確認することが重要です。感謝の気持ちを伝えたうえで、「負担になっていないか」「何かあれば遠慮なく言ってほしい」と声をかけるだけでも、心理的な安心につながる場合があります。
 

まとめ

公的統計を見ると、平均的な夫婦高齢者無職世帯では、年金を中心とした収入だけでは毎月の家計が赤字になるケースが示されており、また年金が所得のすべてを占める世帯や、生活が「苦しい」と感じている世帯も少なくありません。こうした実態を踏まえると、「年金があるから余裕がある」と一概に判断することは適切ではないといえるでしょう。
 
祖父母からの金銭的な支援については、感謝しつつも、本人たちの生活に無理が生じていないかを気にかける姿勢が大切です。制度や統計を正しく理解したうえで、家族間で丁寧にコミュニケーションを取ることが、安心につながる対応といえるでしょう。
 

出典

総務省統計局 家計調査報告[家計収支編]2024年(令和6年)平均結果の概要 II 総世帯及び単身世帯の家計収支 <参考4> 65歳以上の無職世帯の家計収支(二人以上の世帯・単身世帯) 図1 65歳以上の夫婦のみの無職世帯(夫婦高齢者無職世帯)の家計収支 -2024年-(18ページ)
厚生労働省 2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況 結果の概要 II 各種世帯の所得等の状況 4 所得の種類別の状況(11ページ)、5 生活意識の状況(12ページ)
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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