年金だけで生活できている高齢者世帯は「半分もいない」って本当? “老後貧乏”に陥らないために最低限いくらくらい貯金しておくと安心?
こうした疑問に答えるには、個人の体験談ではなく、公的統計をもとに実態を整理することが重要です。本記事では、最新の統計データをもとに、高齢者世帯の収入構造と家計収支を確認し、老後資金について考える際の目安を整理します。
ファイナンシャルプランナー
FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。
編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。
FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。
このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。
私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。
目次
【PR】うちの価格いくら?「今」が自宅の売り時かも
【PR】イエウール
年金が「収入のすべて」という高齢者世帯はどれくらいか
まず、高齢者世帯の収入構造を見てみます。厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」によると、公的年金・恩給を受給している高齢者世帯のうち、公的年金・恩給が総所得の100%を占める世帯の割合は43.4%となっています。
これは、高齢者世帯の約4割が、年金以外の収入をほとんど持たず、年金だけで生活していることを意味します。
一方で、裏を返せば、半数以上の高齢者世帯は、年金以外にも何らかの収入(就労収入や財産収入など)を得ていることになります。「年金だけで生活できている高齢者世帯は半分もいない」という表現は、統計上、あながち誇張とはいえない状況と考えられます。
夫婦高齢者世帯でも月3万円超の赤字という現実
次に、高齢者世帯の具体的な家計収支を確認します。総務省統計局「家計調査報告[家計収支編]2024年(令和6年)平均結果の概要」によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯では、1ヶ月あたりの実収入が25万2818円で、そのうち年金を含む社会保障給付が22万5182円となっています。
一方、消費支出は25万6521円、税金や社会保険料などの非消費支出は3万356円となっており、差し引きすると1ヶ月あたり3万4058円の赤字となっています。統計上は、夫婦世帯であっても、年金収入だけでは毎月の生活費と非消費支出を賄いきれていない構造が示されています。
【PR】我が家は今いくら?最新の相場を無料で簡単チェック!
【PR】イエウール
単身高齢者世帯の家計収支はどうなっている?
同じく総務省統計局の「家計調査報告[家計収支編]2024年(令和6年)平均結果の概要」によると、65歳以上の単身無職世帯における1ヶ月の実収入は13万4116円で、そのうち社会保障給付は12万1629円となっています。
これに対し、消費支出は14万9286円、非消費支出は1万2647円で、1ヶ月あたり2万7817円の赤字となっています。金額だけを見ると夫婦世帯より赤字額は小さいものの、収入水準自体が低いため、生活の余裕は限られやすいと考えられます。特に、突発的な医療費や家電の買い替えなどが発生した場合、家計への影響は小さくありません。
「最低限いくら貯金が必要か」はどう考えるべきか
これらのデータを見ると、多くの高齢者世帯が、年金だけでは毎月数万円程度の不足を貯蓄の取り崩しなどで補っている実態が浮かび上がります。仮に、夫婦世帯で月3万円、単身世帯で月2万5000円程度の赤字が続くとすると、年間では30万円~40万円前後の不足になります。
老後期間を20年と仮定した場合、単純計算でも600万円~800万円程度の自己資金が必要になる可能性があります。ただし、これはあくまで平均的な家計収支を前提とした概算であり、住居費の有無や医療費、介護費用、働き方などによって必要額は大きく変わります。「最低限いくらあれば安心」と一律に言える数字があるわけではありません。
まとめ
公的統計を見ると、年金が収入のすべてを占める高齢者世帯は約4割にとどまり、65歳以上の夫婦世帯・単身世帯ともに、平均的には年金だけで毎月の家計が黒字になる構造ではないことが分かります。このため、「老後は年金だけで何とかなる」と考えるのは、やや楽観的といえるかもしれません。
老後資金について考える際は、「いくら貯めれば安心か」を断定的に決めるのではなく、自身の生活費水準や将来の支出リスクを踏まえて、不足が生じた場合にどの程度備えが必要かを整理することが重要です。不安がある場合は、公的年金の見込み額や家計の支出を確認し、早めに見通しを立てておくことが、老後の安心につながるでしょう。
出典
厚生労働省 2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況 結果の概要 II 各種世帯の所得等の状況 4 所得の種類別の状況(11ページ)
総務省統計局 家計調査報告[家計収支編]2024年(令和6年)平均結果の概要 II 総世帯及び単身世帯の家計収支 <参考4> 65歳以上の無職世帯の家計収支(二人以上の世帯・単身世帯) 表2 65歳以上の夫婦のみの無職世帯(夫婦高齢者無職世帯)及び65歳以上の単身無職世帯(高齢単身無職世帯)の家計収支 -2024年-(19ページ)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
