毎月12万円の年金だけでは生活できないため、公営住宅に入居希望です。入居基準の「政令月収」から見て、自分は対象になるのでしょうか?
今回は、都営住宅を例に入居要件、特に政令月収について詳しく解説します。
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士
元航空自衛隊の戦闘機パイロット。在職中にCFP(R)、社会保険労務士の資格を取得。退官後は、保険会社で防衛省向けライフプラン・セミナー、社会保険労務士法人で介護離職防止セミナー等の講師を担当。現在は、独立系FP事務所「ウィングFP相談室」を開業し、「あなたの夢を実現し不安を軽減するための資金計画や家計の見直しをお手伝いする家計のホームドクター(R)」をモットーに個別相談やセミナー講師を務めている。
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都営住宅の入居要件とは
都営住宅に入居するためには、以下の入居資格を満たしていなければなりません(※1)。
(1)東京都内に継続して3年以上居住している単身者で次のいずれかに該当していること
【1】60歳以上の方または昭和31年4月1日以前に生まれた方
【2】障害者基本法第2条に規定する障害者でその障害の程度が下記のア~ウにあてはまる方
(ア) 障害者手帳の交付を受けている1~4級の障害者
(イ) 精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている1~3級の障害者(障害年金等の受給に際し、障害の程度が同程度と判定された方を含む)
(ウ) 知的障害者(愛の手帳の場合は総合判定で1~4度)
【3】生活保護受給者等
【4】海外からの引き揚げ者やハンセン病療養者等で一定条件を満たす方
【5】配偶者等から暴力を受けた被害者で一定の要件を満たす方
(2)所得が定められた基準内であること
(3)住宅に困っていること
(4)申込者が暴力団でないこと
(1)申込日現在、東京都内に居住していること
(2)同居親族(パートナーシップ関係も対象)がいること
(3)住宅に困っていること
(4)所得が定められた基準内であること
(5)申込者(同居者を含む)が暴力団でないこと
入居要件の収入基準は政令月収で判断される
公営住宅の入居要件の一つである収入基準は、公営住宅法(※2)と公営住宅法施行令(※3)により詳細が定められており、これを政令月収と呼んでいます。
政令月収=(年間総所得額-控除)÷12
1. 年間総所得額
年間総所得額とは、前年の年間収入から必要経費を差し引いた額になります。給与収入であれば給与所得控除額、年金であれば公的年金等控除額を差し引いた額となります。
2. 控除
年間総所得から控除できる額は、公営住宅法施行令に図表1のように記載されています。
図表1
| 控除項目 | 控除額 | 備考 |
|---|---|---|
| 扶養親族控除 | 1人あたり38万円 | 本人以外の扶養親族 |
| 特定扶養親族控除 | 1人あたり25万円 | 19歳以上23歳未満の扶養親族 |
| 老人扶養親族控除 | 1人あたり10万円 | 70歳以上の扶養親族または配偶者 |
| 障害者控除 | 1人あたり27万円 | 身体障害者手帳3~6級など |
| 特別障害者控除 | 1人あたり40万円 | 身体障害1~2級など |
| 寡婦(寡夫)控除 | 最大27万円 | 配偶者と死別後、再婚していない者 |
(※3を基に筆者作成)
3. 都営住宅の収入要件
都営住宅の場合、「都営住宅 所得基準判定 シミュレータ」(※4)で収入要件を確認することができます。
例えば、年金収入が月額12万円の単身者の場合でシミュレートしてみると、入居基準を満たしている可能性が高いという結果になります。
まとめ
公営住宅に入居するためには、収入が所得基準以下であることが求められます。この収入の判定に用いられるのが政令月収といわれ、年間収入から給与所得控除や公的年金等控除を差し引いた年間総所得額から、扶養親族等の有無に応じて定められた控除額を控除した金額を12で割った政令月収で判断されます。
出典
(※)東京都住宅政策本部 都営住宅入居募集サイトポータルページ
(※1)東京都住宅政策本部 都営住宅の入居資格
(※2)デジタル庁 e-Gov 法令検索 公営住宅法
(※3)デジタル庁 e-Gov 法令検索 公営住宅法施行令
(※4)東京都住宅政策本部 都営住宅 所得基準判定 シミュレータ
執筆者 : 辻章嗣
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士
