父と母はともに70代後半。父は認知症ですが、母は「私は大丈夫」と“老老介護”を続けています。母の負担を減らすための支援はありますか?
「母は元気だから大丈夫」と思っていても、認知症の介護は身体的・精神的な負担が大きいうえに、悪化してもよくなることはない出口が見えない状況のなかで、介護する側が限界を迎えてしまうケースも少なくありません。実は、介護される側だけでなく、介護する高齢者本人を支える制度も数多く用意されています。
そこで本記事では、母親の負担を軽減するために活用できる支援制度を整理します。
CFP(R)認定者
大学を卒業後、保険営業に従事したのち渡米。MBAを修得後、外資系金融機関にて企業分析・運用に従事。出産・介護を機に現職。3人の子育てから教育費の捻出・方法・留学まで助言経験豊富。老後問題では、成年後見人・介護施設選び・相続発生時の手続きについてもアドバイス経験多数。現在は、FP業務と教育機関での講師業を行う。2017年6月より2018年5月まで日本FP協会広報スタッフ
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目次
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老老介護で最も見落とされやすいリスク
老老介護で必ず問題になるのは、「介護する側が倒れるリスク」です。
認知症介護は、徘徊への対応、服薬管理、感情の起伏への対処など、24時間気が抜けません。高齢の配偶者が一人で抱え込むと、転倒・うつ・持病の悪化といった二次的な健康リスクが高まります。
また、「まだ介護保険を使うほどではない」「他人に頼るのは気が引ける」という心理的なハードルも、支援の利用を遅らせる要因になります。しかし実際には、介護保険は限界になってから使う制度ではなく、「限界になる前に使う制度」です。負担を減らす第一歩は、制度の理解から始まります。
介護保険の要介護認定を受ける
認知症のあるお父さまについては、要介護認定の申請が支援の出発点になります。第一歩となる申請は本人または家族が、市区町村の窓口で行います。申請に基づき、かかりつけ医師の意見書や行政担当者の訪問審査を経て審査会で介護度が決定されます。
要介護1以上に認定されると、次のようなサービスが利用可能です。
・訪問介護(ヘルパー):入浴・排せつ・食事の介助
・デイサービス:日中の見守り・入浴・機能訓練
・ショートステイ:数日間の施設預かり(介護者の休息確保)
特に老老介護では、ショートステイやデイサービスを利用して、介護する側が「介護しない時間・日」を意識的に作ることが重要です。費用は原則1割負担(一定所得以上は2~3割)で、家計面でも利用しやすい設計になっています。
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介護する母親自身を支える制度
見逃されがちですが、介護する側の高齢者を支える仕組みも整備されています。その中心が、各市区町村に設置されている「地域包括支援センター」です。
地域包括支援センターでは、以下のような相談について無料で受けることができます。
・介護保険サービスの相談・調整
・介護者の心身の負担に関する相談
・必要に応じた見守りや専門職の介入
「母が無理をしていないか心配」「第三者の目で状況を見てほしい」といった相談でも構いません。
そのほか、市区町村によっては、以下のような独自施策を行っている場合もあります。
・家族介護者向けの相談会
・介護者リフレッシュ事業(外出・休養支援)
詳細は、住所地の市区町村窓口や地域包括支援センターで確認しましょう。
経済面・将来を見据えた備え
介護は長期化する可能性が高いため、以下のような経済面の確認も欠かせません。
・高額介護サービス費制度(自己負担上限あり)
・医療費との合算による高額医療・高額介護合算制度
・認知症に備えた任意後見制度・家族信託の検討
これらについても、窓口で相談しておきましょう。
特に認知症が進行すると、預貯金の引き出しや契約行為ができなくなる可能性があります。元気なうちに家族で話し合い、専門家に相談することで将来の混乱を回避することが大切です。
家族を守るには「頑張らせない介護」
「母はまだ元気」「本人がやりたいと言っている」
そう思っていても、老老介護はある日突然限界を迎えます。大切なのは、一人の介護者にすべてを負わせるような仕組みを「早めに」作ることです。
介護保険サービスや地域の支援は、決して「特別な人のためにある制度」ではありません。利用することは甘えではなく、「家族全員の生活を守る」ことにつながります。「不安を感じた時点で、地域包括支援センターや市区町村に相談すること」それが、最も確実で、母親の負担を軽くする第一歩です。
ご参考までに、以下で利用した場合の費用と共倒れリスクについてシミュレーションしてみました。
シミュレーション(東京23区の場合)
2025年時点の介護保険制度(1割負担・一般的所得層)を前提にした目安としてシミュレーションを示しておきます。
前提条件(モデルケース)
父:78歳・認知症
要介護2(中等度の認知症で日常生活に一部介助が必要)
母:76歳・年金生活(介護者)
世帯:年金収入のみ なので介護保険自己負担1割
■ケース1 介護保険をほとんど使わない
医療費(父):約1万5000円
介護サービス :ほぼなし
介護用品(おむつ等):約1万円
合計:約2万5000円
金額は低く抑えられているように見えますが、共倒れリスクが高く、長期的には高額になる恐れがあります。
■ケース2 最低限の在宅介護サービスを使う
(1割負担)
デイサービス:約1万2000円
訪問介護:約4000円
医療費:約1万5000円
介護用品:約1万円
合計:約4万1000円
金銭的負担はアップしますが、デイサービス週2回と、訪問介護(ヘルパー)週1回を利用すると、「介護しない日」ができ、母の介護時間が大きく減少します。
月4~5万円の費用を支払っても「介護者の健康を買う」ことが重要です。介護は「頑張る家族」よりも「倒れない家族」を優先させることが大切でしょう。
出典
厚生労働省 介護保険制度の概要
厚生労働省 地域包括ケアシステム
一般社団法人日本ケアラー連盟 ケアラー支援ツール
執筆者 : 柴沼直美
CFP(R)認定者
