再雇用で“月給35万円”の夫が「年金18万円だから働き損になる」とポツリ…収入が“月53万円なら安泰”のはずが、なぜ「年金カットで損」になるのでしょうか? 手取り額もシミュレーション

配信日: 2026.03.26
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再雇用で“月給35万円”の夫が「年金18万円だから働き損になる」とポツリ…収入が“月53万円なら安泰”のはずが、なぜ「年金カットで損」になるのでしょうか? 手取り額もシミュレーション
定年退職後も再雇用などで働き続け、給与収入を得ながら年金を受給するシニア世代が増えています。その際、多くの人が気になるのが「一定以上の収入があると年金が減額される」という在職老齢年金制度の存在ではないでしょう。
 
年金の支給停止を避けるために、あえて労働時間や給与を抑えるべきか悩むケースも少なくありません。本記事では、制度の具体的な仕組みや今後の基準額改定を踏まえ、手取り総額を増やすための選択肢を解説します。
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在職老齢年金制度の基本と「年金停止」の仕組み

定年退職後も再雇用などで働き続け、厚生年金に加入しながら老齢厚生年金を受給する場合、給与と年金の合計額によっては、年金の一部または全額が支給停止される仕組みがあります。これが「在職老齢年金」制度です。
 
この制度における「給与」とは、単なる基本給ではなく、毎月の標準報酬月額と、直近1年間の標準賞与額を12で割った額の合計である「総報酬月額相当額」を指します。一方、「年金」とは、老齢厚生年金(報酬比例部分)の月額である「基本月額」のことです。
 
なお、老齢基礎年金(国民年金)はこの制度の対象外であり、収入の多寡にかかわらず全額が支給されます。「総報酬月額相当額」と「基本月額」の合計額が、国の定める「支給停止調整額(基準額)」を上回った場合にのみ、超過した金額の半額が老齢厚生年金から差し引かれます。
 

支給停止の計算方法と2026年時点の基準額

在職老齢年金制度の基準額となる支給停止調整額は、賃金や物価の変動などにより年度ごとに改定されます。近年ではおおむね50万円前後(2024年度は50万円、2025年度は51万円)で推移してきましたが、高齢者の就労意欲への影響を考慮し、年金制度改正によって基準額が引き上げられることになりました。
 
2026年(令和8年)4月以降の基準額は「65万円」となります。年金が支給停止される場合の基本的な計算式は以下のとおりです。
 
【支給停止額(月額)=(基本月額+総報酬月額相当額-支給停止調整額)÷2】
 
この計算式から読み取れるポイントは、年金が停止されるのはあくまで「基準額を超過した金額の半額」にとどまるという点です。給与が増えたことで、増えた給与以上に年金が減らされることはありません。「働くほどに全体の収入が減る」という認識は、制度の仕組みとは異なります。
 

収入を抑えるべきか? 手取り総額を比較するシミュレーション

ここで、基本月額(厚生年金)が18万円、総報酬月額相当額(月給および賞与の月割)が35万円の場合における総収入のシミュレーションを行います。両者の合計額は53万円です。
 
仮に基準額が50万円(2024年度水準)とすると、合計額53万円は基準額50万円を3万円上回るため、超過額3万円の半額である「1万5000円」が毎月の年金から支給停止されます。


・年金受給額:18万円-1万5000円=16万5000円
・給与:35万円
・月額の総収入(額面):16万5000円+35万円= 51万5000円

一方、「年金を1円も減らしたくない」と考え、合計額が50万円に収まるよう給与を32万円に抑えた場合はどうなるでしょうか。


・年金受給額:18万円(全額支給)
・給与:32万円
・月額の総収入(額面):18万円+32万円=50万円

給与を抑えた場合の総収入が50万円であるのに対し、年金の一部停止を受け入れて月給35万円で働いた場合の総収入は51万5000円です。給与を抑えずに働いたほうが、月額で1万5000円、年間で18万円ほど総収入が多くなる計算になります。
 
給与が高くなれば所得税や住民税、社会保険料の負担は増えますが、税金や社会保険料を差し引いた「手取り額」で比較しても、給与収入が多いほうが手元に残る金額は大きくなります。額面・手取りのいずれで見ても、「真面目に働いたほうが損をする」という事態は生じにくい仕組みです。
 

年金停止を過度に恐れず、総収入の最大化を目指す

在職老齢年金制度は、給与と年金の合計が一定額を超えた場合に年金が調整される仕組みですが、超過分の半額が停止されるにとどまるため、給与収入を増やすほど家計全体の総収入は増える傾向にあります。
 
年金の支給停止を避けるために給与を抑えると、結果的に世帯の総収入を減らすことにつながりかねません。
 
「年金が減るから損をする」という表面的な情報にとらわれず、制度の正しい計算方法を理解し給与と年金の総額を把握することが、老後の生活設計を考えるうえで大切な視点といえるでしょう。
 

出典

日本年金機構 在職老齢年金の計算方法
厚生労働省 在職老齢年金制度の見直しについて
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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