定年後に再雇用になると賃金が大きく下がると聞きました。実際、どれくらい下がるものなのでしょうか?
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士
元航空自衛隊の戦闘機パイロット。在職中にCFP(R)、社会保険労務士の資格を取得。退官後は、保険会社で防衛省向けライフプラン・セミナー、社会保険労務士法人で介護離職防止セミナー等の講師を担当。現在は、独立系FP事務所「ウィングFP相談室」を開業し、「あなたの夢を実現し不安を軽減するための資金計画や家計の見直しをお手伝いする家計のホームドクター(R)」をモットーに個別相談やセミナー講師を務めている。
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再雇用になると賃金はどのくらい下がるの?
厚生労働省の資料(※1)によると、図表1のとおり、令和7年の賃金は50~59歳をピークに、年齢とともに下がる傾向がみられます。
図表1
(※1を基に筆者作成)
大学卒を例にすると、55~59歳の52万9100円をピークに、60~64歳で約20%減の42万200円、65~69歳で約40%減の36万7500円に下がっていることが分かります。
再雇用で賃金が下がる要因は
再雇用になると、通常は職務内容が変更され、役職や責任のある立場から離れることになります。
その結果、役職手当や職務手当などがなくなり、賃金の低下につながります。また、勤務時間が減ることから、賃金が減少することも考えられます。
ただし、同一労働同一賃金の原則(※2)により、雇用形態だけを理由とした一方的な賃金カットは認められておらず、再雇用であっても、同じ内容で同じ責任の仕事をしている社員と同様の賃金を支払うことが求められています。
再雇用で手取り額はどうなる?
賃金が減少すると、賃金に応じて徴収される税金や社会保険料も下がるため、手取り額は賃金減少率ほど下がりません。また、60歳到達時点の賃金に比べて、60歳以上65歳未満の賃金が75%未満に低下した場合、雇用保険から、図表2のとおり高年齢雇用継続給付金が支給されます(※3)。
図表2
| 各月に支払われた賃金の低下率 | 賃金に上乗せされる支給率 |
|---|---|
| 64%以下 | 各月に支払われた賃金額の10% |
| 64%超75%未満 | 各月に支払われた賃金の10%から0%の間で、賃金の低下率に応じ、 賃金と給付額の合計が75%を超えない範囲で設定される率 |
| 75%以上 | 不支給 |
(※3を基に筆者作成)
したがって、60歳以上65歳未満の労働者は、賃金の低下率などの条件を満たした場合、高年齢雇用継続給付を受けられます。また、65歳以上の再雇用者は、賃金に加えて基本的に老齢年金を受給することになります。
一方で、賃金と年金額の合計が一定額を超えると、老齢厚生年金の一部または全部が支給停止される「在職老齢年金制度」に注意する必要があります。
在職老齢年金制度では、基本月額(注1)と総報酬月額相当額(注2)の合計が65万円(令和8年度額)を超えると、超えた額の2分の1に当たる年金が支給停止となります(※4, 5)。
(注1)基本月額:加給年金を除いた老齢厚生年金(報酬比例部分)の月額
(注2)総報酬月額相当額:その月の標準報酬月額+(その月以前1年間の標準賞与額の合計)÷12
まとめ
定年後に再雇用で働くと、職務内容や勤務時間の変更に伴って、賃金が低下する場合があります。しかしながら、賃金の減少に伴って徴収される税や社会保険料も減少するため、手取り額は賃金減少率ほど影響を受けません。
なお、60歳以上65歳未満の労働者であれば、60歳到達時点と比べて賃金が一定以上低下するなどの条件を満たすと、雇用保険の高年齢雇用継続給付の対象となります。また、65歳以上の労働者は、賃金に加えて年金を受給しますが、老齢厚生年金の受給については在職老齢年金制度に注意する必要があります。
出典
(※1)厚生労働省 令和7(2025)年賃金構造基本統計調査 速報
(※2)厚生労働省 同一労働同一賃金ガイドライン
(※3)厚生労働省 令和7年4月1日から高年齢雇用継続給付の支給率を変更します
(※4)日本年金機構 在職中の年金(在職老齢年金制度)
(※5)厚生労働省 令和8年度の年金額改定についてお知らせします
執筆者 : 辻章嗣
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士

