退職金が2000万円だったという父。「パートでもしようかな」と言うのですが、無理に働かなくてもいいのではないでしょうか…
社会保険労務士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、FP相談ねっと認定FP、公的保険アドバイザー、相続診断士
大学卒業後、公務員、専業主婦、自営業、会社員、シングルマザーとあらゆる立場を経験した後、FPと社会保険労務士の資格を取得し、個人事業主から社会保険労務士法人エニシアFPを共同設立。
社会保険労務士とFP(ファイナンシャルプランナー)という二刀流で活動することで、会社側と社員(個人)側、お互いの立場・主張を理解し、一方通行的なアドバイスにならないよう、会社の顧問、個別相談などを行う。
また年金・労務を強みに、セミナー講師、執筆・監修など首都圏を中心に活動中(本名は三角桂子)。
退職金が2000万円あるから働く必要ない?
お父さまの老後の働き方について、ご相談に来たAさん。内容は、以下のとおりです。
Aさんの父親は、60歳定年の会社で退職を迎えました。学生を卒業してからずっと同じ会社で働き続けたこともあり、退職金2000万円を一時金で受け取りました。
さらに、父親のねんきん定期便を見たところ、65歳から受け取れる年金額は、企業年金を合わせて、年額220万円ありました。母親の年金は、専業主婦の期間が長いため年額90万円ほどで、夫婦で合わせると310万円(月額25万円)あります。
数年前に、老後2000万円問題がニュースで取り上げられているのをテレビで見ました。父親がどのくらい貯蓄があるのか分かりませんが、退職金が2000万円あると喜んでいたのを聞きました。
取りあえず2000万円以上あることが分かったので、定年退職後は無理して働かなくてもいいのではないかと思っているそうです。
働くことの意義について考えてみよう
前段でAさんが言われるように、お父さまは同じ会社で頑張ってこられた証しの退職金です。
老後2000万円問題とは、金融庁の報告で2019年に金融庁の報告書が、高齢夫婦世帯の平均的な家計で30年間に約2000万円の資金不足が生じる可能性があると試算したことが発端です。年金だけでは生活費を賄えないため、自助努力が必要になるということです。
Aさんの両親の家計が平均と同じような支出をしているのであれば、参考になるかもしれませんが、実際の生活費や住宅が持ち家または賃貸によっても変わってくるでしょう。幸いなことに、Aさんの両親が年金額で日常生活費が賄っていけると話していたとのことです。
上記から、Aさんは無理して働かなくてもいいのではと思っていますが、人生100年時代と考えるのであれば、60歳定年からは40年あります。また、原則65歳の年金受給までの収入がないと貯蓄が減るので、働く選択はありだと思われています。
働くことの意義として、真っ先に、収入を得るためと答える人が多いと思われますが、内閣府「高齢者の経済生活に関する調査」令和6年度で、現在、定期的に収入を伴う仕事をしている人は、60~64歳までの男性で79.8%、女性は62.9%、全体で72.1%となっています。
次に60歳を過ぎて仕事をしている主な理由を聞いたところ、「収入のため」が全体の55.1%で最も高くなっているものの、「働くのは体によいから、老化を防ぐから」が20.1%、「自分の知能・能力を生かせるから」が12.4%と続いています。
さらに高年齢者雇用安定法では、事業主に対して60歳未満の定年禁止と65歳までの定年の引き上げ、定年制の廃止、65歳までの継続雇用制度導入のうちいずれかの措置を講ずることで、65歳までの希望する全員の継続雇用が義務化となっています。
また、高齢期に受け取る年金は原則65歳からとなっていることもあり、60歳以降も働く人は増えています。高齢期の働く意義は収入だけでなく、健康面や培ったスキルを考慮しながら働き続けたいと考えていることが分かります。
まとめ
内閣府の「令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査」によると、何歳ごろまで収入を伴う仕事をしたいかと聞いたところ65歳までが23.7%、働けるうちはいつまでもが22.4%という結果でした。
実際に、内閣府「令和6年版高齢社会白書(全体版)」では、労働力人口のうち60~65歳の人は569万人、65~69歳の人は394万人、70歳以上の人は537万人であり、労働力人口総数に占める割合は、60歳以上では21.7%と増加しています。
シニア層の労働力を求める事業主は、多くなっています。労働者の多様な特性やニーズを踏まえ、高齢者が就業することは、経済的な不安の解消や生きがいや社会的貢献から意義のあることだと考えます。
まずは健康第一に健康寿命を延ばしつつ、個々の事情に応じた働き方を検討することが大切だと思います。Aさんのお父さまがどのような理由でパートを考えているのか、一度話を聞いてみてはいかがでしょうか。
出典
金融庁 金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書 「高齢社会における資産形成・管理」
内閣府 令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査結果(全体版)
内閣府 令和6年版高齢社会白書(全体版)
執筆者 : 三藤桂子
社会保険労務士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、FP相談ねっと認定FP、公的保険アドバイザー、相続診断士