定年退職で「退職金1800万円」を受け取る予定です。夫は「十分」と言いますが、老後資金として本当に足りるのでしょうか? 家のローンもあるので心配です。
そこで今回は、退職金を1800万円受け取ったとして、住宅ローンを抱えた状態で老後資金は不足となったりしないのか、考えていきます。
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
1800万円では必ずしも十分とは言い切れない
1800万円という退職金は、決して小さな額ではありません。しかし、だからといって、老後の生活において必ずしも十分とは言い切れません。
総務省統計局の「家計調査報告[家計収支編]2025年(令和7年)平均結果の概要」では、65歳以上の夫婦のみの無職世帯における実収入は月に約25万円なのに対し、消費支出と非消費支出の合計額は月に約30万円となっています。
単純計算では、毎月およそ5万円の赤字です。この差額を年間に直すと約60万円です。仮に、毎年60万円ずつ退職金から取り崩すとすれば、1800万円の退職金はおよそ30年で底をつく計算です。
30年という数字だけ見ると十分そうにも見えますが、60歳で定年退職したとして、30年後はまだ90歳です。まだまだ夫婦でご存命ということもあり得る年齢です。
また、この計算はあくまで平均的な支出を前提にした単純計算です。実際には、住宅ローンの返済、家の修繕費、車の維持費、医療費や介護費などが上乗せされる可能性があります。
そう考えると、「1800万円あるから安心」とは言い切れないのが現実です。
カギを握るのは年金
老後資金を考えるうえで、退職金以上に重要なのが年金です。なぜなら、年金は働き方や加入歴、その間の平均給与などによって、受け取れる額に大きな差が出るからです。
参考までに、日本年金機構によれば、令和8年度の年金は、国民年金の場合、夫婦が満額受け取っても約14万円ですが、厚生年金は、夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な額で約24万円と大きく差がついています。
これを知ったうえで、夫婦の年金見込み額が毎月いくらになるか、ねんきん定期便などで確認してみましょう。もし、夫婦の毎月の年金収入で、想定される支出の大部分をカバーできるなら、退職金1800万円は「不足分を補うお金」としてかなり心強い存在になります。
逆に、年金が少なく毎月の赤字が大きいと想定される場合は、退職金が1800万円あっても老後資金が不足する可能性があります。
住宅ローンをどうするか
ここで心配になるのが住宅ローンの存在でしょう。なぜなら、老後に住宅ローンが残っていると、その存在が気になり「退職金で一気に返してしまったほうが安心では」と考えてしまうからです。
たしかに毎月の返済負担がなくなれば、その後の家計は見通しやすくなります。老後の固定費を減らすという意味でも、精神的な安心感も得られるでしょう。
しかし、退職後は、まとまった収入を新たに増やすことが難しいのが現実です。もし、退職金の大半をローン返済に使ってしまうと、その後に医療費や住宅修繕費、家電の買い替えなどの臨時支出が出たとき、老後資金が早期に足りなくなってしまうおそれがあります。
そのため、住宅ローンが残っている場合は、退職金を全額返済に回すのではなく、まずは老後の生活費が毎月いくら不足しそうかを確認し、そのうえで繰り上げ返済の可否やその額を検討するべきです。間違っても、繰り上げ返済で金利が節約できるからと、目先の金利に惑わされてはいけません。
まとめ
1800万円という退職金は一定のまとまった資金といえますが、老後資金として十分かどうかは一概に判断できません。
大切なのは、退職金の額だけを見て一喜一憂するのではなく、夫婦の年金見込み額と毎月の生活費、そして住宅ローンの残高を合わせて考えることです。
夫婦で老後資金について悩んだときは、退職金だけでなく年金の見込み額を確認し、将来の生活費や住宅ローンの返済方法も加味し、総合的な視点から考えるようにしてみてください。
そのうえで、どうしても考えがまとまらなかったり、不安が残ったりする場合は、ファイナンシャルプランナーなど専門家に相談することをおすすめいたします。
出典
総務省統計局 家計調査報告[家計収支編]2025年(令和7年)平均結果の概要 II 総世帯及び単身世帯の家計収支 <参考4> 65歳以上の無職世帯の家計収支(二人以上の世帯・単身世帯) 図1 65歳以上の夫婦のみの無職世帯(夫婦高齢者無職世帯)の家計収支 -2025年-(18ページ)
日本年金機構 令和8年4月分からの年金額等について
執筆者 : 柘植輝
行政書士