定年を迎えた父が「退職金は1500万円あるから老後は大丈夫」と言っています。住宅修繕や医療費のことを考えても、本当に余裕があると言えるのでしょうか?
FPオフィス Conserve&Investment代表
2級ファイナンシャルプランニング技能士、管理業務主任者、第一種証券外務員、ビジネス法務リーダー、ビジネス会計検定2級
製造業の品質・コスト・納期管理業務を経験し、Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)のPDCAサイクルを重視したコンサルタント業務を行っています。
特に人生で最も高額な買い物である不動産と各種保険は人生の資金計画に大きな影響を与えます。
資金計画やリスク管理の乱れは最終的に老後貧困・老後破たんとして表れます。
独立系ファイナンシャルプランナーとして顧客利益を最優先し、資金計画改善のお手伝いをしていきます。
老後の生活資金は個人差が大きい
老後の生活費は2000万円が目安といわれた時期もありますが、実際の老後資金は家計構造による個人差が大きく、一概にこの金額なら大丈夫といえるものではありません。
基本的に収入が多い人ほど支出も大きくなる傾向があります。サラリーマンの賃金カーブは、定年後20~30%ほどの収入減少が見込まれますが、収入減少に伴い生活レベルをどこまで下げられるかが老後の生活費を左右する大きな要因といえます。
今回の退職金1500万円は、大企業では約2000万円、中小企業では約1000万円が平均といわれる現在の退職金相場的にはおおよその平均値となりますので、退職金とモデルケースでの公的年金の給付額でどの程度の生活ができるかを紐解いていきましょう。
退職金1500万円と公的年金の生活感とは?
・退職金:1500万円
・夫婦の公的年金額:月額23万7000円(手取り額を20万円で試算)
・住居関連費用(火災保険料+固定資産税等)を年額20万円、修繕費を年額10万円
・医療費の自己負担額を年額20万円
65歳から85歳までの20年間の生活費を年金と退職金で賄うとすると、使える金額は年額約265万円(月額22万円)ほどになります。
この試算では生活費に回せる金額が大きいので十分な生活費になりそうですが、これは戸建てで住宅ローンの支払いがないためで、賃貸住宅を利用している場合やマンション住まいで管理費・修繕費が別途必要な場合は生活費の金額がもっと少なくなります。
また前提条件が変わるリスクもあります。マンションの管理費・修繕費の値上げや、85歳以降も老後生活が続いた場合、夫婦一方が先に亡くなった場合、介護・医療費が想定以上にかかる場合は退職金が想定よりも早く枯渇するリスクがあります。
年金と退職金1500万円で暮らすのは、住居費の負担が軽い場合は大丈夫そうですが、それ以外の場合はややリスクが高い水準といえます。
退職金1500万円で不足するかはどう判断すればいい? 不足時の対策は?
退職金1500万円はまとまった金額ですが、不足するか否かは家計収支を確認し、マネープランを作成する必要があります。もし不足すると見込まれた場合、そのままにしてしまうと老後貧困に陥り、家族・親族等のサポートを求める事態に至ってしまう可能性があります。
不足時の対策としては再雇用などで定年退職後も賃金収入を確保したり、支出を見直して金額が大きいものや格安スマホなどのより安価なサービスに切り替えられるものなどから削ったりするのがおすすめです。また、コレクションがある場合は資産性のあるものを売却したりすることも選択肢となります。
注意したいのが退職金で住宅ローンの繰り上げ返済を行うことです。住宅ローンには多くの場合で生命保険契約が付帯しており、契約者に万が一のことがあった場合は住宅ローンが保険金によって完済される仕組みとなっています。
繰り上げ返済は残りの返済期間での金利分を節約できる反面、手持ちの現金を大きく減らしてしまうデメリットがあります。現金は老後生活で想定外の事態が発生した際の緩衝材となりますので繰り上げ返済を行う際は注意が必要です。
余裕を持った老後生活を送るためには退職金の額だけでなく、老後全体を見通すマネーリテラシーを持つことが重要といえるでしょう。
執筆者 : 菊原浩司
FPオフィス Conserve&Investment代表



















