財産管理に賃貸契約……。親の認知症で発生する問題とは?

配信日: 2019.07.17

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財産管理に賃貸契約……。親の認知症で発生する問題とは?
連日の報道等で、老後2000万円問題が大きく話題になっています。筆者のセミナーの参加者も、今まで以上に「老後のお金」に対してシビアになっていますし、個別相談も増えています。
 
この問題提起の発端になったのは、金融審議会 市場ワーキンググループの「報告書」です。この「報告書」の中で、話題の老後2000万円問題に触れているのはごく一部。その他にも、沢山の問題が警告されているのです。中でも筆者は『認知症』に関してのレポートがとても気になりました。
 
寺門美和子

執筆者:寺門美和子(てらかど みわこ)

ファイナンシャルプランナー、相続診断士

公的保険アドバイザー/確定拠出年金相談ねっと認定FP
岡野あつこ師事®上級プロ夫婦問題カウンセラー
大手流通業界系のファッションビジネスを12年経験。ビジネスの面白さを体感するが、結婚を機に退職。その後夫の仕事(整体)で、主にマネージメント・経営等、裏方を担当。マスコミでも話題となり、忙しい日々過ごす。しかし、20年後に離婚。長い間従事した「からだ系ビジネス」では資格を有しておらず『資格の大切さ』を実感し『人生のやり直し』を決意。自らの経験を活かした夫婦問題カウンセラーの資格を目指す中「離婚後の女性が自立する難しさ」を目のあたりにする。また自らの財産分与の運用の未熟さの反省もあり研究する中に、FPの仕事と出会う。『からだと心とお金』の幸せは三つ巴。からだと心の癒しや健康法は巷に情報が充実し身近なのに、なぜお金や資産の事はこんなに解りづらいのだろう?特に女性には敷居が高い現実。「もっとやさしく、わかりやすくお金や資産の提案がしたい」という想いから、FPの資格を取得。第二の成人式、40歳を迎えたことを機に女性が資産運用について学び直す提案業務を行っている。
※確定拠出年金相談ねっと https://wiselife.biz/fp/mterakado/
女性のための電話相談『ボイスマルシェ』   https://www.voicemarche.jp/advisers/781 

認知症の増加

『認知症』に関しての話題も絶えず、また最近では、高齢者ドライバーの交通事故の報道に胸が痛みます。筆者自身も人生の後半期を迎え、物忘れをする度に「ドキっ」とするのは、無意識に認知症への不安があるからなのでしょう。
 
「報告書」によりますと、2012年の65歳以上の約7人に1人が認知症で、軽度認知症(正常なもの忘れよりも記憶などの能力が低下している状態)の人も合わせると、4人に1人が、認知・判断能力に何かしらの問題を有していることになるそうです。
 
加齢と共に、認知判断能力が衰えるのは仕方がないことでしょう。心身の機能低下、老いることは自然現象です。しかし、これに伴い、準備・対策を考えておかないと、老後の生活に支障を侵し、家族にも迷惑をかけることになります。
 

 

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認知症においての終活の制限

人生において、資産管理・財産管理は重要な仕事です。しかし、認知症の診断が下ってしまうと、金融サービス等において下記のようなことに制限がかかります。
 
●金融資産の自由な引き出し・解約・変更新規申込等
●本人名義の財産の移動・活用

 
例えば、親の年金は親の住む地方のJAバンク口座に振り込まれていたとします。親は認知症になり、自宅の側の施設に入所させました。最初は親のカードを使用して、必要経費を引き出していましたが、カードは消耗してしまいました。
 
新しいカードに切り替えたくても、手続きをするには、その地方のJAバンクに行かないとできません(例:JA常陸の契約をJA東京中央で手続きができない)。もちろん、本人ではないので、窓口での引き出しはできないのです。
 
「それなら、近所の銀行に新しく口座を作り、その口座に親の年金を振り込もう」、そう思っても、子供や親族でも勝手には開設も変更もできないのです。
 

空き家問題もここから派生する

多くのご家族から「田舎で高齢の親が一人暮らしをしているが、頑固で介護サービスを受けない」というお話を伺います。しかし老いは待ってはくれません。残念ながら、1年ごとに進行は早まると思います。
 
筆者自身も90代の伯母の介護をしていました。ここ数年、熱い夏が続いていますが、夏を過ぎる度に、老いは進行。
 
「そろそろ危ないかな?」と思った92歳の夏、それから2年後の9月に、ついに電話の音も聞こえなくなってしまったのです。伯母の家まで行き、現場をみて唖然。とても一人で暮らせる状態ではありませんでした。その荒れ様は、今でも鮮明に覚えています。
 
その後入院をし、施設に行きましたが、入所して2ケ月経過した時に、伯母は自分の名前・生年月日・住所も言えなくなりました。アルツハイマー型認知症の診断を下されたのです。配偶者も子供もいない伯母は、自宅へ帰ることはできないでしょう。しかし、伯母が亡くなるまで、家の処分はできないのです。
 
都心に住む方で「親がもし一人暮らしができなくなったら、親の住んでいるマンションを貸して、その費用を介護施設の費用にあてます」という方が多いのですが、もし、名義が親御さんのものなら「賃貸契約」もできません。
 
このように、売ることも貸すこともできずに「空き家」になってしまう場合もあります。
 

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「認知症だから」は通用しないの?

先日のセミナーでこんな質問を受けました。「うちの親は認知症だから!と言っても通じないのですか?」。そうですよね。「認知症だから、もう判断できないのですから、どうにか勘弁してください。仕方が無いですよ…」は残念ながら通じません。
 
なので、80歳を過ぎたら、認知症リスクを考えて、事前に対策をしておく必要があります。
 
「家族信託」(民事信託)や成年後見制度を利用して、認知症になった家族の資産や財産等を管理・移動できるようにしておく必要はあると思います。できたら、本人が事前に行うことがベストですが、できない場合もあるでしょう。その時は若い人が率先して行うことです。
 
終活~相続対策は時間がかかるものです。遅くても60代中盤には考えて、準備を開始して、70代前半までには整えておきたいものです。
 
執筆者:寺門美和子
ファイナンシャルプランナー、相続診断士
 

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