更新日: 2019.07.30 セカンドライフ
「今後の生活がイメージできない」定年退職後の本音から読み取る、高齢期の「住まい」
まずは「知る」ことから始めましょう。実際にどうなるのかは、その時になってみないと分からないもの。人生を折り返し、自分らしく生きるために、1つでも多くの引き出しの中から選択ができればいいですね。今回は、今後の「住まい」にフォーカスします。
執筆者:大竹麻佐子(おおたけまさこ)
CFP🄬認定者・相続診断士
ゆめプランニング笑顔相続・FP事務所 代表
証券会社、銀行、保険会社など金融機関での業務を経て現在に至る。家計管理に役立つのでは、との思いからAFP取得(2000年)、日本FP協会東京支部主催地域イベントへの参加をきっかけにFP活動開始(2011年)、日本FP協会 「くらしとお金のFP相談室」相談員(2016年)。
「目の前にいるその人が、より豊かに、よりよくなるために、今できること」を考え、サポートし続ける。
従業員向け「50代からのライフデザイン」セミナーや個人相談、生活するの観点から学ぶ「お金の基礎知識」講座など開催。
2人の男子(高3と小6)の母。品川区在住
ゆめプランニング笑顔相続・FP事務所 代表 https://fp-yumeplan.com/
高齢期の「住まい方」をどうするか
「住居費」の占める割合は、人生の3大支出と言われるほど、大きなものです。持ち家の場合、退職前後でローンが終わり、心もお財布も落ち着いてくる頃だと思います。もちろん相談にやってくる方の多くは、このまま住み続けることを想定しています。
ただ、ここで一つ考えておいてほしいことがあります。年齢の上昇とともに、病気、認知症などを発症してしまうと、介護が必要になることがあるかもしれません。
そうなってくると、持ち家に住み続けることは難しくなってきます。夫婦2人であればよいけれど、もし1人になったら、と考えると不安ですね。そんな時のために、今のうちにどのような選択肢があるのか知っておくことが大切。そうすれば、いざという時にも、慌てずにすみます。
下記の図は、高齢者向けの住まい方を分類したものです。次章から、この図に従って解説していきます。
選択肢1 自宅に住み続けたい
やっぱり落ち着くのは自宅。家族や好きな家具に囲まれて最期まで過ごしたい、という方は多いですよね。ただ、そうした場合に考えておきたいのが、10年後、20年後、のこと。
体が衰えてくると、階段の上り下りがつらくなったり、ちょっとした段差につまずいたり、自宅内での日常生活に不便を感じるようになります。今のうちから、手すりを設置したり、段差を改善したり、対策をしておくとよいです。
またご近所さんとの関係づくりも大切です。よい関係を築いておけば、駅や病院までの移動手段の確保など、困った際に助け合うことができます。
選択肢2 元気なうちに住み替えたい
・1人では不安だという方、「安心」が付いている住まいを希望される方には、下記のような選択肢があります。
【1】(住宅型)サービス付き高齢者向け住宅……バリアフリー化され、安否確認サービスや緊急時対応サービスなど「高齢者の居住の安定確保に関する法律」に基づいて登録された住宅。
【2】(施設型)軽費老人ホーム(ケアハウス)……必要なサービスを受けながら自立した生活を送れる施設。
【3】(施設型)住宅型有料老人ホーム……食事等の日常生活上のサービスが付き、介護が必要な場合は軽度の場合なら別契約で利用して生活を送れる施設。
※原則として自立して生活できる方が対象のため、介護度合いが増していった場合に住み替えが必要になります。
・介護を必要としている方、介護度合いが増しても住み続けられる住まいを探している方は、上記に「介護サービス」が付いている住居や施設を探すとよいでしょう。「介護付」と表示できるのは、特定施設入居者生活介護の指定を受けた施設のみです。ホームページやパンフレットを見る際の参考にしてください。
選択肢3 介護が必要になったら住み替えたい
・介護が必要な方には下記の選択肢があります。原則、要介護1以上の認定を受けた方が対象となっています。
【1】老人保健施設……病状が安定し、病院から退院した人がリハビリテーションを中心とする医療ケアを受ける施設
【2】介護療養型医療施設……比較的長期にわたって療養が必要な人が入院し、療養上の管理や介護を受ける施設
【3】認知症高齢者グループホーム……認知症高齢者が5~9人の少人数で、家庭的な雰囲気のもと、介護や身の回りの世話を受ける施設
・特別養護老人ホーム(特養)は、原則、要介護3以上の認定を受けた方が対象となっています。
特別養護老人ホーム(特養)……常時介護が必要で家庭での生活が難しい人が、介護や身の回りの世話を受けながら生活する施設
介護状態やお財布事情により、選択の幅は変わります。その中でも、自分の環境を守れる個室タイプや、楽しく過ごしたい方は共同タイプなど「自分らしさ」を考慮して選びたいですね。
今、「決める」必要はありません。
誰にも未来のことは分かりませんが、予測して、準備することは可能です。どうなっても対応できるように、状況に応じていくつかのパターンを考えておくことが大切です。
国や市区町村のしくみや制度も改善されつつあります。また高齢社会に向けて新しい施設も増えてきています。情報や見識を得るためにアンテナを張り、ご夫婦、ご家族で話し合ってみてください。
そして高齢期のことを今すぐに決める必要はありません。以前ライフプラン相談に来られた方から、次のようなメッセージをいただいたことがあります。
「自分の今後について考えなきゃと思っていたけど、実家の母のことを一緒に考える機会になりました。母は心配しなくてもいいと言っていたので、気になりながらも妹に任せきりでした。しかし、実際に施設へ見学に行くと、それぞれ特徴やスタッフの態度に違いがあり驚きました。資金計画もふまえて考えていきたいです」
この方がおっしゃっているように、施設にはさまざまな違いがあります。その時が訪れ、勧められるがままに慌てて決断するよりも、じっくり時間をかけて自分たちにあったプランを選びたいものです。この記事が、皆さんの考えるきっかけとなれば幸いです。
出典
東京都福祉保健局「あんしんなっとく高齢者向け住宅の選び方」
執筆者:大竹麻佐子
CFP🄬認定者・相続診断士