退職金の受け取り方「一括」と「年金」どちらがお得なの?
配信日: 2019.10.15 更新日: 2019.10.23
『退職金』とは、一生涯で一番まとまったお金を受け取る機会という人も多いでしょう。今回は将来のために、退職金について考えてみたいと思います。
執筆者:寺門美和子(てらかど みわこ)
ファイナンシャルプランナー、相続診断士
公的保険アドバイザー/確定拠出年金相談ねっと認定FP
岡野あつこ師事®上級プロ夫婦問題カウンセラー
大手流通業界系のファッションビジネスを12年経験。ビジネスの面白さを体感するが、結婚を機に退職。その後夫の仕事(整体)で、主にマネージメント・経営等、裏方を担当。マスコミでも話題となり、忙しい日々過ごす。しかし、20年後に離婚。長い間従事した「からだ系ビジネス」では資格を有しておらず『資格の大切さ』を実感し『人生のやり直し』を決意。自らの経験を活かした夫婦問題カウンセラーの資格を目指す中「離婚後の女性が自立する難しさ」を目のあたりにする。また自らの財産分与の運用の未熟さの反省もあり研究する中に、FPの仕事と出会う。『からだと心とお金』の幸せは三つ巴。からだと心の癒しや健康法は巷に情報が充実し身近なのに、なぜお金や資産の事はこんなに解りづらいのだろう?特に女性には敷居が高い現実。「もっとやさしく、わかりやすくお金や資産の提案がしたい」という想いから、FPの資格を取得。第二の成人式、40歳を迎えたことを機に女性が資産運用について学び直す提案業務を行っている。
※確定拠出年金相談ねっと https://wiselife.biz/fp/mterakado/
女性のための電話相談『ボイスマルシェ』 https://www.voicemarche.jp/advisers/781
退職金の金額と位置づけ
退職金とは、会社を退職する際に「慰労金」の意味も含め、支給される賃金のことですが、どの会社でも必ず支給されるとは限りません。また、法律で金額・支給率が定められているわけではないので、自分の退職金を知らない人が多いのも仕方ないでしょう。
しかし、「一生涯で必要なお金の計算」をする際に、この退職金の金額がわからないと正しい数字がつかめません。退職金が1000万円なのか、300万円なのか……金額により、将来のお金の設計が変ってくるのです。
かつて「会社に骨を埋める」という言葉が美徳とされていました。これは、一生涯この会社に捧げきる覚悟を言葉に表したもので、日本人は転職することを嫌っていました。
しかし令和時代となり、その認識は変わってきています。就職サイトをいくつか調査したところ、多くのサイトで「20代の転職率は3割」「20代の3人に1人は3年以内に転職している」というデータが掲載されています。
そうすると、退職金についての認識も変わってくるでしょう。かつての時代では、長年の勤務の功労賞として、また、老後の生活資金としての意味合いが大きかったと思います。
しかし、今や一生涯同じ会社に勤務する人も少なくなり、若いうちに退職金を受け取る人もでてきました。現役の途中で受け取ると次の仕事への「準備金」または「臨時大型ボーナス」という認識でしょうか?
あまりに勤務期間が短い場合は、退職金が支給されないケースもありますので、事前に確認しておきましょう。
退職金所得制度
そもそも退職金には「老後資金」という意味合いがあるので、「退職金所得制度」という制度があります。他の所得税とは別計算となり、税金が優遇されているのです。
また下記のように、2つの受け取り方法を選択できるのですが、どちらがお得なのでしょうか(※会社によっては「一括払いのみ」というところもありますので、確認してください)。
■一括払い
→退職金を一括で受け取る
■年金払い
→退職金を年金として分割として受け取る(定年退職の場合)
若いうちの退職金を受け取るなら「一括払い」ですね。最近では、定年時の退職金を「一括払い(一時金)」、「年金払い」、「一時金と年金払いを併用」という受け取り方法も出てきました。最もお得に受け取るには、税金の優遇制度を考えてみると良いと思います。
【一括払い時の退職所得にかかる所得税の計算】
退職所得(所得税が課税される金額) = (退職収入 − 退職所得控除額)÷ 2
【一括払い時の退職所得にかかる所得税の計算】
・1年未満の月は1年とカウントする→(例)9年7ヶ月は10年
上記の退職金の控除額を考えるとわかりやすいのですが、例えば、大学卒業後に入社、60歳で退職した方の「退職金所得控除額」は2060万円です。退職金が2060万円以下なら、一括払いの受取時の税金は0円です。
また、年金として分割で受け取る場合には、「公的年金控除額」を元に計算をされますが、他の所得との合算で決まりますし、社会保険料などにも影響がでてきます。状況によって異なりますので、税理士やFPに相談をしてベストな方法を選んでみてください。
早期退職や転職の際の諸注意
定年退職前に退職金を受け取ると、大金ゆえについつい普段できないことにお金を使ってしまいがちます。もちろん、それは悪いことではありませんが、注意が必要です。
そもそも退職金は、臨時ボーナスではなく「老後の資金」として考えられ、それを前払いで受け取ったのです。お金を使った分、「老後の資金」の補填をしていかなくては老後破綻を招きかねません。
税金も安かったし、たくさんお金がはいったから、大盤振る舞いでぜいたくに海外旅行に行こう! という気持ちが湧いたら、ちょっと考えてみてください。
最近では、企業の退職金制度も変化してきており、「確定給付型」から自らが運用する「確定拠出年金型」に変遷してきています。
筆者のところにも「会社の退職金制度が確定拠出年金に急に変わったが、わからない」という問い合わせがあります。「退職金」も含めた将来の年金は、「受給されるものではなく、自ら作るもの」へ移行しています。
退職金に関して向き合うことは少ないと思いますが、まずは「金額を知ること」でしょう。そして、将来の受け取り方に関しても、研さんしてみてください。
※2019/10/23 内容を一部修正させていただきました。
執筆者:寺門美和子
ファイナンシャルプランナー、相続診断士