介護施設も多様化、施設の特徴を知り入居を考える
配信日: 2017.11.15 更新日: 2019.01.10
しかし最近では、介護が長期化するケースが多く、介護をする人の負担も考慮し、施設介護を希望する人が増えてきました。
ではどのような基準で、介護施設を選ぶのがよいでしょうか。
入居する施設を選ぶ基準
介護施設にはいくつか種類があり、それぞれの特徴を理解したうえで入居を検討するのが望ましいと思われます。
まず経営主体が公共か民間かがあります。
公共の施設は財政支援などもあり同じサービスを受けても、民間に比べ安く入居できる傾向があります。
次に、介護度がどの程度かによって、入居する施設が異なります。
介護度が高くないと入居できない施設がある一方で、主として健常者を中心に受け入れ、老後を趣味や運動で楽しんでもらおうという施設もあります。
また肝心な入居にかかる費用についても、かなりの差があります。一般的には、民間に比べ公共の介護施設のほうが経費はかかりません。
入居時に入居一時金という敷金に相当する料金を取られる施設もありますし、一切必要のない施設もあります。
一時金を取る場合は、月々の利用料は安くなります。毎月の利用料もさまざまです。月に5~6万円程度で済む施設から、月に100万円以上かかる施設まであります。
最も大切なのは、介護を受ける人にとって、その施設が適しているかという点です。それに加えて、入居後の費用がどの程度になるかも見ておく必要があります。
公共の介護施設の種類と特徴
公共の介護施設には次のようなものがあります。
比較的低料金で利用が可能なため、希望者が多くなかなか入居できない、入居のための条件が厳しい、といった問題があります。
<特別養護老人ホーム>(特養)
公共の介護施設で最も代表的な施設です。希望者が多いため、入居できる人は常時介護が必要な人(施設にもよるが要介護3以上が多い)が対象です。
大都市では敷地の確保などが塗図かしく施設数はあまり増えてはいません。
認知症にも十分対応してもらえますが、費用が比較的安いため、多くの施設が順番待ちとなっているのが実情です。入居期間については、とくに制限はありません。
<介護老人保健施設>(老健)
主として病院で手術などで治療を受けた人が、在宅復帰に向けてリハビリを行うことを目的につくられた施設です。
在宅介護が難しく、特別養護老人ホームへの入居待ちの人もいます。
リハビリが中心なので、入居期間も3ヵ月程度に制限されています。
<介護付きケアハウス>
健常者は入居できませんが、介護度の低い人から高い人まで入居が可能で、利用料金は特別養護老人ホームに比べるとやや割高です。
医療面を含め介護サービスは充実しています。
施設によるサービス内容と利用料金にはかなりバラツキがあり、良質なサービスを受けられる施設もあります。
<自立支援型ケアハウス>(軽費老人ホーム)
独居者など身寄りがないとの理由で、自宅介護が難しい人が主たる入居者になります。
介護度が要支援程度か、介護を必要とせずまだ自立できる人が対象です。
長期入所が続き介護度が高くなる(要介護3以上)と、退所することになります。
<介護療養型医療施設>
病院での治療が終了したが、しばらく療養が必要とする人が対象です。公営もありますが医療法人が経営する施設が多くなっています。
医療ケアは充実しており、長期入所も可能なため、空きが出にくい施設です。
2024年春までに廃止の予定で、別の施設に引き継がれることが検討されています。
民間の介護施設の種類と特徴
全般的にみて、公共の施設に比べると利用料金は高くなりますが、入居についてはそれほど難しくはありません。
介護目的の施設が中心ですが、老後を豊かに暮らしたいと思う人を対象とした高額の施設もあります。
主な民間の介護施設は以下の通りです。
<介護付き有料老人ホーム>
民間の介護施設の中心的な存在で、施設数も増加が目立ちます。
軽度で多少介護が必要な人から、重度で常に介護が必要な人まで入居できます。
施設内で専門スタッフにより介護サービスが受けられ、レクリエーションなどもあります。
立地や設備内容により、入居にかかる費用も大きく変わってきます。入居時にかなりの一時金が必要な施設も多く、月々にかかる費用も、公共の特別養護老人ホームに比べると割高です。
<住宅型有料老人ホーム>
原則として健常者から軽度の要介護者までが入居します。介護が必要な場合は、施設内では対応できないため、外部のサービス業者に依頼します。
介護費用は別料金となります。介護付き老人ホームより割安の施設が多いですが、専門スタッフがいないため、介護度が高くなると入居を続けにくくなります。
<サービス付き高齢者住宅>(サ高住)
高齢者向けのバリアフリーで設計された共同住宅です。自立した人は自宅同様自由な活動ができ、介護サービスが必要な場合は、外部に委託します。
安否確認、生活支援などは可能な施設です。
<シニア向けマンション>
住宅型老人ホームの発展型ともいえるもので、分譲も賃貸もともにあり、主として健常者がゆったり過ごす施設になります。
入居金・利用料は高額ですが、スポーツ施設やレクリエーション施設が充実しており、豊かな老後生活には最適です。
ただし介護サービスはないため、介護度の高い人の入居は不向きです。
<グループホーム>
比較的軽度な認知症の人たちが共同で生活することが目的の施設です。
認知症に対応できる専門スタッフが常駐している施設が多く、少人数でお互いに協力しながら、機能回復訓練なども受けることができます。
ただし医療ケアに関しては十分とはいえません。
公共・民間の介護施設にかかる費用と入居対象者を表にしました。入居を検討されている場合は、参考にしてください。
それぞれ施設には特徴があり、施設から受けるサービスの満足度とそれにかかる費用を評価する必要があります。
介護を受ける人のニーズに応じて施設を選び、実際に見て出来れば体験入居をしてからの入所をお勧めします。
Text:黒木 達也(くろき たつや)
経済ジャーナリスト。大手新聞社出版局勤務を経て現職