実家に帰ると悪質なリフォーム工事がされていた…そんなことを防ぐための財産管理の方法って?
配信日: 2020.05.16
家族に聞くと、「最近いろいろとお世話になっている親切な人が紹介してくれて、本当は100万円くらいするリフォームを80万円でやってもらった」とうれしそうな顔。しかし、新聞の折り込みチラシを見ると20万円くらいの予算でできそうです。
こんなことが続けば、大事な蓄えがすぐになくなってしまいます。そこで今回は、財産管理の方法についてご紹介します。
執筆者:宿輪德幸(しゅくわ のりゆき)
CFP(R)認定者、行政書士
宅地建物取引士試験合格者、損害保険代理店特級資格、自動車整備士3級
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所有者の自由
財産の使い方は、所有者の自由です。もったいない使い方をしても、本人の意思であれば有効です(ただし不当な契約は、消費者契約法などにより取り消しできることもあります)。
財産管理の対策をするには、まずは状況を本人に理解させることです。これが一番のポイントであり、難しいところですが、ここをクリアできたらあとはどの方法を使うかの検討に入ります。以下の4つの財産管理の方法をチェックしていきましょう。
委任契約
委任者が、財産管理を受任者に代理してもらいます。委任者と受任者の契約により、その内容は自由に決めることができます。
メリット
・本人が信頼する者に委任できる。
・本人が希望する財産管理。
・委任者、受任者のどちらからでも契約の終了ができる(信頼関係がなくなったら終了)。
デメリット
・登記などはないので重要な行為の際はその都度、委任状が必要になる(契約書に明記されている委任行為については不要)。
・認知症などで意思表示ができなくなると終了。
・受任者に対する監督がない。
法定後見ではありませんので、本人の法律行為は有効です。印鑑を預けるなどして、物理的に本人が契約をできないようにするのが確実です。
任意後見
万が一、認知症などで意思能力がなくなったとき、本人が指定した後見人に財産管理をしてもらう後見制度です。意思能力がなくなったときから死亡までの制度ですが、後見前の見守り契約(委任契約)や死後事務委任契約をセットにすることができます。
これにより、認知症になる前から死後の事務まで一連の財産管理が可能になります。
メリット
・財産管理だけでなく身上監護もできる。
・後見人および財産管理内容は本人が指定。
デメリット
・後見開始前は委任契約なので、第三者への信用度は低い。
・後見開始後は、後見監督人の報酬が発生し、家庭裁判所への報告などが必要になる。
契約書は公証役場で作成され登記もされますので、社会的信用は委任契約より高いといえます。ただし、後見開始までは委任契約となるので上記と同様の注意が必要です。
民事信託
委託者と受託者の2者による契約により、信託財産とした財産の名義を受託者に変更し、受託者が管理から処分まで行います。
メリット
・信頼する者に託し、希望に沿った自由な管理処分が指定できる。
・元気なときから認知症や死亡した後まで、全ての期間で有効。
デメリット
・身上監護はできない(家族としての身上監護は可能です)。
・信託できない財産がある(年金・農地など)。
信託財産は、委託者(=元の所有者)の管理外になりますので、だまされて財産を減らすことを確実に防げます。
成年後見(法定後見)
ここまで紹介してきた制度は、いずれも所有者に意思能力がないと利用できません。財産管理の対策をすることなく、認知症などになってしまった場合に使えるのは「成年後見」です。本人の意思ではなく、裁判所により後見人が指定され、被後見人のために財産の管理処分がされます。
メリット
・後見人に契約の取消権がある。
・本人のためだけに財産が使われる。
デメリット
・専門職が後見人となった場合、後見人に対し報酬が発生する。
・財産管理に厳しい制限がある(配偶者のためにも使えない)。
本人がだまされて契約しても、後見人の判断で取り消すことができますので、法的効果は強いです。だまされて財産を減らすことはありませんが、後見人への報酬などで財産が減少してしまいます。
まとめ
高齢になると、たまにしか会わない親族より、日ごろ優しくしてくれる人を頼るようになることもあります。実家に帰った際には、家の様子を確認し、もしも財産管理などに問題を発見したら、認知症などになる前に対策して財産を守りましょう。
執筆者:宿輪德幸
CFP(R)認定者、行政書士