更新日: 2020.07.31 その他老後

リバースモーゲージはどんな人に向いている? メリット・デメリットを解説

執筆者 : 新井智美

リバースモーゲージはどんな人に向いている? メリット・デメリットを解説
自分が所有している不動産を担保にしてお金を借りる「リバースモーゲージ」という仕組みは、実は30年前のバブル期に多く活用されていました。しかしその後、超低金利時代に突入してからは金融機関も取り扱いを控えていましたが、最近になって再び話題となっています。
新井智美

執筆者:新井智美(あらい ともみ)

CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員

CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員

聞くのは耳ではなく心です。
あなたの潜在意識を読み取り、問題解決へと導きます。
https://marron-financial.com

リバースモーゲージってなに?

リバースモーゲージとは、自宅を担保にして老後資金などの生活資金を融資してもらい、自分が死んだ後、担保としていた不動産を処分して借入額を返済するという、老後の資金調達手段の1つです。
 
各都道府県(自治体)の社会福祉協議会や金融機関などが取り扱っていますが、取り扱い社会福祉協議会や金融機関によって資金使途や借入額のほか、対象となる担保物件が異なりますので、利用する際にはどの機関を利用するか、比較して検討することが大切です。

■自治体が行うリバースモーゲージ

自治体が行っているとはいえ、相談窓口が社会福祉協議会となっているだけで、運用主体は国(厚生労働省)になります。具体的には、厚生労働省が定めた「生活福祉資金貸付制度」による貸付資金の1つとして「不動産担保型生活資金」があり、これを貸し付けることがリバースモーゲージに該当するわけです。
 
また、不動産担保生活資金には、通常の不動産担保生活資金のほかに「要保護世帯向け不動産担保生活資金」があります。要保護と認められた場合は、より有利な条件で融資を受けることが可能です。
 
この制度は基本的に低所得者が利用できます。したがって、金利についても民間の金融機関を利用するより低く設定されているのが特徴です。

■金融機関が行うリバースモーゲージ

金融機関においても、独自の商品としてリバースモーゲージを取り扱っています。金融機関と国が行うリバースモーゲージの最大の違いは、資金使途にあります。国が行うリバースモーゲージは、生活福祉制度の一環であることから、資金の使い道が生活費や医療費などに限定されます。
 
しかし、金融機関のリバースモーゲージについては、資金使途に制限はありません。例えば、老人ホームへの入居資金に充てたり、介護における自宅等のリフォーム資金に充てたりと、考えているライフプランに沿った使い方ができます。
 
また、融資金額の受け取りについても、一括で受け取ることもできれば、毎月定額の年金形式で受け取ることも可能です。このように柔軟性の面で使い勝手が良いことが、金融機関が行うリバースモーゲージの特徴といえるでしょう。

知っておきたいメリット

主に老後の生活資金の確保として利用されるリバースモーゲージですが、具体的にどのようなメリットがあるのか、以下にまとめてみました。

■自宅を売却しなくてもよい

これはリバースモーゲージを利用するうえでの最大のメリットです。所有している物件を売却することなく融資を受けられることから、そのまま自宅に住み続けることが可能です。そして、本人の死亡後に自宅を売却することで元金の一括返済を行うことになります。

■資金の使い道が自由

上述のとおり、金融機関が取り扱うリバースモーゲージについては、資金の使い道に制限はありません。旅行費用などの趣味にも使うことができます。

■毎月の返済額を少なくできる

金融機関が取り扱うリバースモーゲージの商品では、返済については基本的に利息分のみを毎月支払えばよく、元本部分の返済については本人の死亡時に行われます。したがって、毎月の出費を抑えることができるという意味でも活用しやすいといえます。

知っておきたいデメリット

<融資限度額と長生きリスク>

1.融資限度額
融資限度額は、担保となる自宅の評価によって決まります。したがって、自宅の評価額があまり高くない場合は、思っていたほどの融資を受けられない可能性があります。ちなみに融資限度額については、自宅の評価額の50%程度で設定されることが多いようです。
 
2.長生きリスク
リバースモーゲージでは、契約者本人が亡くなった後に担保となっている自宅を売却することで借入額を返済する契約です。しかし、最近は平均寿命が延びていることから、金融機関の融資総額が物件の評価額を超えてしまう可能性があります。
 
したがって、最近ではリバースモーゲージの契約において契約期間を定める金融機関も増えてきました。ということは、契約期間を超えて借入を行うことはできませんので、契約期間が終了した場合、契約者本人がまだ生きていたとしても、自宅を明け渡すことになります。
 
亡くなるまで確実に融資を受けることができるわけではない、ということをしっかりと認識しておく必要があります。

どんな人が利用できる?

リバースモーゲージには以下のとおり、利用するための要件があります。利用の際にはその要件に自分が該当しているか確認しておきましょう。

1.年齢:60~80歳

金融機関によって異なりますが、ほぼこの基準で設定しています。ちなみに都道府県社会福祉協議会が実施主体として行っているリバースモーゲージは65歳以上が利用可能となっています。

2.資金使途が老後の生活資金であること

原則として資金使途は自由とされていますが、金融機関によっては「事業資金」や「投資資金」として利用することを禁じています。

3.担保となる不動産の条件が当てはまること(原則として一戸建て)

リバースモーゲージの場合、担保にできる不動産の対象は一戸建てとしているケースが多くみられます。もちろん、金融機関によってはマンションでも可能という場合もありますが、この場合は物件の評価(資産価値)によります。
 
他にも「年金など継続した収入があること」や「同居家族が配偶者のみであること」などの条件があります。特に子供が同居している場合は利用できないことや、契約の際には推定相続人全員の同意が必要であることも覚えておきましょう。
 
また、金融機関によっては不動産の所在エリアに制限を設けているところもあります。ご自身の不動産が該当エリア内であるかどうかについて、事前に確認しておくことも大切です。

利用する際の注意点

<リスクに気をつける>

リバースモーゲージを利用する際は、以下のリスクを考えながら利用することが大切です。
 
1.金利上昇リスク
リバースモーゲージの金利は変動金利が主体となっています。したがって金利が大幅に上昇する局面においては、毎月の返済額が増加したり、借入可能額が減少したりする可能性があります。
 
2.地価下落リスク
担保となる不動産の評価は、定期的に見直されます。その際に融資金額が減額されることもあれば、増額されることもあります。
 
3.長生きリスク
物件の評価額を超えての融資を受けることができないことから、もしも生きている間に融資限度額に達した場合、そこで契約終了となり家を明け渡す必要が出てくることになります。
 
死ぬまで自宅に住み続けることがメリットであるリバースモーゲージですが、最近はこのようなケースも増えてきています。

まとめ

最近では、昔のような「親の建てた家に子供が住む」という世帯も少なくなってきています。したがって、老後は配偶者もしくは1人で別に居を構え住む方が多いといえます。
 
死んだ後にその人が住んでいた家を処分するのは相続人であり、そのような負担をかけたくないと考える方もおられるのではないでしょうか。
 
自分が亡くなった後、できるだけ相続人に負担がかからず、かつ老後生活資金を得ることができるリバースモーゲージは、上手に活用することで豊かな老後生活を送ることにもつながるかもしれません。もちろん利用の際には、その注意点もきちんと把握したうえで利用することが大切です。
 
執筆者:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員


 

ライターさん募集