更新日: 2020.09.05 その他老後

老後の生活。資産を守るにはリバランスが大事

老後の生活。資産を守るにはリバランスが大事
60歳前後になると、役職定年や転職など働き方に変化が生じることが多いです。この時に受け取る退職金などの一時金は、老後にとって大事な資金です。これをキチンと運用管理することが、資金寿命を延ばすことにつながります。
宮﨑真紀子

執筆者:宮﨑真紀子(みやざき まきこ)

ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士

大阪府出身。同志社大学経済学部卒業後、5年間繊維メーカーに勤務。
その後、派遣社員として数社の金融機関を経てFPとして独立。
大きな心配事はもちろん、ちょっとした不安でも「お金」に関することは相談しづらい・・・。
そんな時気軽に相談できる存在でありたい~というポリシーのもと、
個別相談・セミナー講師・執筆活動を展開中。
新聞・テレビ等のメディアにもフィールドを広げている。
ライフプランに応じた家計のスリム化・健全化を通じて、夢を形にするお手伝いを目指しています。

退職金はどこに預ける?

退職金のような「まとまった資金」を受け取った時の注意点として、「経験がないのに金融商品に投資にしない」「豪華クルーズのような旅行に行かない」などの、アドバイスを耳にしたことはありませんか。
 
これらは投資や旅行が悪いわけではなく、大金を前にして無計画に使ってしまうとダメですよ、の教示です。今後起こりそうな支出となると、住宅ローンを繰上げ返済する金額は? 旅行の費用は? 子どもへの支援は? 等々、大小いろいろなイベントがありますので、計画を立てるのには時間がかかりそうです。
 
退職金などはたいてい、給与振込の指定口座に振り込まれます。いわばメインバンクです。金融機関には「退職金特別プラン」などの名称の優遇金利プランがあります。定期預金のみのプランと定期預金+投資信託のプランが用意されている場合が一般的です。

リバランスは必要

Aさん(60歳)は今年2度目の転職をしました。以前勤めていた会社から支給された退職金は、銀行の退職金プラン(定期預金+投資信託)に預けています。リスク低めのプランで運用していますが、株式部分の運用成績が良く、予想以上に増えているそうです。「このままほったらかしで大丈夫なの?」という質問を受けました。
 
当初は「リスク低め」つまり、「株式<債券」の割合でポートフォリオを組んでいたはずです。株式の運用成績が良い状態が続けば、「株式=債券」あるいは「株式>債券」になるかもしれません。
 
Aさんは、あくまでも「リスク低め」を選び安心していますが、このまま株式比率が高まれば本来の思惑から離れてしまいます。タイミングをみて元の割合に戻す「リバランス」をする必要があります。

“運用しながら引き出す”世代のリバランス効果

老後資金を運用する目的は、資産寿命を延ばすことにあります。資産を“運用しながら引き出す”を実践している方も多いです。心配なのは株価が下がることです。途中で株価急落があると、「3%で運用したら」といった仮定がたちまち危うくなります。
 
株式と債券50%ずつで運用。そこから毎月それぞれ2万円ずつ引き出す、というパターンを考えてみます。途中で「○○ショック」が起きてしまい、株価が暴落し保有資産が40%も下がってしまったと仮定します。
 
イメージしやすいように下落直前の資産を1000万円(各500万円ずつ保有)とします。暴落後、株式500万円×60%=300万円 債券500万円 
ここから2万円ずつ引き出すことになります。
 
リバランスなしに“運用しながら引き出す”を続けていると、景気が回復した時点では、より株式の比率が少なくなっています。これでは、株価上昇の恩恵を受ける原資が少ない、挽回のチャンスを生かしきれないという残念な結果になります。
 
株式・債券を400万円ずつにリバランスしておけば、リバランスしない場合に比べて市場の回復とともに資産の回復も期待できます。 
 
補足になりますが、“運用しながら引き出す”場合は、どのような状況でも「定額を引き出す」ことが一般的です。同じ2万円でも500万円と300万円に与える影響は違ってきます。景気回復までの時間がかかれば、株式の比率はさらに減ってしまいます。
 
金融機関でライフプランを相談し、それに合わせた“運用しながら引き出す”仕組みを作ることは資産寿命を延ばす上で有効です。でも預けっぱなしではなく、リバランスにも目配せする配慮は必要です。
  
Aさんのように運用がうまくいっていると、「資産が増えているのだから、このままで良いじゃないか」と思い、リバランスを怠りがちです。今後長期運用していく上で、「○○ショック」のような株価暴落が起きる可能性もあります。
 
“運用しながら引き出す”生活までには少し時間があるようですが、バランスを整えてリスクを小さくしておくことは、資産寿命を延ばすことにつながります。
 
執筆者:宮﨑真紀子
ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士

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