親の介護はつらいよ 認知症保険の是非を問う
配信日: 2017.12.08 更新日: 2019.01.10
Text:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/
認知症保険発売の背景
認知症保険の背景には、認知症の方の増加があります。認知症の方は、2015年には517万人、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になる2025年には1.3倍の675万人になると推計されています(「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」平成27年1月厚生労働省社会保障審議会資料)。これは、65歳以上人口の約5人に1人の割合です。認知症は要介護状態の原因で見ると、男性では第2位、女性では第1位となっています
(厚生労働省「平成25年国民生活基礎調査」)。
認知症介護は通常の介護に比べ、見守り(付き添い)が多く必要になります。公的介護保険のデイサービスやショートステイの利用が多くなると考えられます。このため、認知症介護の場合、公的介護保険の利用限度額を超えてサービスを利用する可能性があります。利用限度額を超えてサービスを利用した場合、全額自己負担になりますので、経済的に大きな負担になります。
たとえば、生命保険文化センター「介護保障ガイド」によると、デイーサービスは1日7,800円(要介護3/5時間以上7時間未満)、ショートステイは1日8,550円(要介護3/ユニット型個室・準個室)となっています。重度の認知症の場合には、年間約60万円もの追加費用がかるという試算もあります。このように、認知症の方の増加と、認知症介護は、通常の介護より費用がかかるといった背景から2016年に相次いで太陽生命と朝日生命から認知症保険が発売されました。
認知症保険の特徴
太陽生命と朝日生命の認知症保険について比較してみます。太陽生命の認知症保険は、時間、場所、人物いずれかの認識ができなくなった状態(見当識障害)が180日間継続した際に、300万円を上限に一時金が支払われるしくみです。ただし、契約初年度は半額しか給付されない点は注意しましょう。
また、7大疾病(女性は、プラス女性特有の疾病)で入院・手術・放射線治療を受けた場合や骨折して治療した場合も保障されます。健康に不安のある方でも簡単な告知で加入できます。
朝日生命の認知症保険は、支払基準が公的基準(「公的介護保険制度」および「認知症高齢者の日常生活自立度判定基準」)に連動しています。所定の認知症に該当しない場合でも、公的介護保険制度の要介護1以上に認定されると 以後の保険料の払込みが免除になります。事実婚の配偶者や弁護士・司法書士などの財産管理人なども指定代理請求人の対象としているのも特徴です。年金タイプと一時金タイプの2種類があります。
認知症保険は必要か?
認知症介護の費用に備えるには、通常の介護保険で備えることもできます。認知症保険では認知症しか保障されません。そこで、まずは、民間介護保険に加入し、認知症介護に必要な追加的費用については、貯蓄で備えるのが良いのではないでしょうか。あるいは、保険に頼らず、要介護になるリスクは一般的に75歳以上ですので、貯蓄で備えるという方法もあります。
仮に今50歳であれば75歳まで25年間ありますから、保険に入ったつもりで年間12万円を貯蓄していくと25年間で300万円の介護資金ができます。300万円が十分かどうかは別としてこういう考え方もできます。
Text:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。
http://fp-trc.com/