介護離職し、親の年金で暮らす「おひとり様」自分の老後はどうする?

配信日: 2021.01.06

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介護離職し、親の年金で暮らす「おひとり様」自分の老後はどうする?
総務省の発表によると、2040年にはわが国における単独世帯の数が、全世帯の40%に達する見込みとのこと。
 
シニアコンサルタントとして活動する筆者への相談でも、「親+未婚の子」で居住している事例が多く、実際に親の死後、単独世帯化している事例もあります。そのような世帯で特に問題なのが「親の介護離職」などで、無職の人たちの老後資金です。
 
いくつかの問題点があり、できるだけ40~50代半ばまでには、対策を打ったほうが良いと感じています。
寺門美和子

執筆者:寺門美和子(てらかど みわこ)

ファイナンシャルプランナー、相続診断士

公的保険アドバイザー/確定拠出年金相談ねっと認定FP
岡野あつこ師事®上級プロ夫婦問題カウンセラー
大手流通業界系のファッションビジネスを12年経験。ビジネスの面白さを体感するが、結婚を機に退職。その後夫の仕事(整体)で、主にマネージメント・経営等、裏方を担当。マスコミでも話題となり、忙しい日々過ごす。しかし、20年後に離婚。長い間従事した「からだ系ビジネス」では資格を有しておらず『資格の大切さ』を実感し『人生のやり直し』を決意。自らの経験を活かした夫婦問題カウンセラーの資格を目指す中「離婚後の女性が自立する難しさ」を目のあたりにする。また自らの財産分与の運用の未熟さの反省もあり研究する中に、FPの仕事と出会う。『からだと心とお金』の幸せは三つ巴。からだと心の癒しや健康法は巷に情報が充実し身近なのに、なぜお金や資産の事はこんなに解りづらいのだろう?特に女性には敷居が高い現実。「もっとやさしく、わかりやすくお金や資産の提案がしたい」という想いから、FPの資格を取得。第二の成人式、40歳を迎えたことを機に女性が資産運用について学び直す提案業務を行っている。
※確定拠出年金相談ねっと https://wiselife.biz/fp/mterakado/
女性のための電話相談『ボイスマルシェ』   https://www.voicemarche.jp/advisers/781 

「ねんきん定期便」と向き合って考えてほしいこと

毎年1回、誕生日の月に送付される「ねんきん定期便」ですが、ご覧になり、指標とされている方が少ないのには驚きます。公的年金は「終身保険」です。命ある限り、2カ月に1回受給できる「老後のお金の大黒柱」と言ってよいでしょう。
 
しかし、この公的年金は受給額に個人差があるのです。いくら同じマンションに住んでいても、学生時代からの同級生でも、働き方や納付状況により、受取額が大きく違います。だから、周りを見て感覚で予測するのではなく、しっかりご自身の「定期便」と向き合ってほしいのです。
 
なぜなら「ひとり暮らしで頑張っている人が近所に何人かいるからどうにかなるわ」とか「同窓会で同じような人がいるから大丈夫」という、短絡的な考えを持っている人もいるからです。
 
さらに、最近の定期便では年金を増やすことができることについての、アナウンスもあります。老後のお金の受給額がわかりますね。
 
また、「支出」もしかり、個人差があります。自分の毎月の固定費の把握が必要です。その固定費が、前記の公的年金の受給額を超えるようならば、何かしらの対策が必要です。なぜ、遅くても40~50代半までには対策をとったほうが良いかといいますと、万が一不足する場合は、対応ができるからです。
 

親の介護等で無職だった人はどうしたら良いのか

単独家族の中でも、若い頃から会社員として勤務しており、厚生年金が受給できる方は問題が少ないのですが、個人事業主や無職の人は、国民年金だけでは、老後のお金は足りません。2020年度の国民年金部分(老齢基礎年金)の受給額は、年間78万1700円。どう考えても、これだけでは生活はできないでしょう。
 
最近、多く見られるのは、親の介護をしていて無職だった方。このような方は、親御さんの年金額が多く、子どもひとり分くらいの生活費はどうにかなっていました。しかし、国民年金の支払いまではしておらず、満額受給できない人も少なくありません。
 
そして、親の死後、年金の受給は止まり、その後の生活費の捻出ができなくなります。やはり、自分だけでなく、兄弟姉妹にそのような人がいる場合は、生前に親に対応をしてもらえるようにしっかりと話をするのが一番です。
 

本人が40~50代半ばのうちに「親なき後について話し合う」

年老いた親がいなくなった後について、話し合いをするのはとても重いテーマかもしれません。しかし、親から本人に話をしてもらうことにより、重い腰の本人の気持ちが変わる場合もあります。または、親御さんがご自身の資産より、何かしら策を打ってくれるかもしれません。
 
最近もこのようなケースがありました。
 
親が亡くなった時、介護をしていた長女は60歳無職です。公的年金受給額は年間50万円の見込みで、この不足分についてどうするのか、話し合いをしなくてはいけません。
 
弟と妹は「姉の面倒を見る余裕がないので、働いてほしい」と言いますが、長年無職だった姉は「体がつらくて今さら無理」と言い、話は平行線になりました。
 
ですから、心身にまだ余裕がある40代半ば~50代半ばまでに働きだせば、問題は回避できたかもしれません。また、この時期から、会社員として厚生年金に加入すれば「公的年金」の受給額を増やすことも可能です。

公的年金は「終身保険」。増やせば老後が楽になる

前述したように、厚生年金に加入することにより、老後の「公的年金」の受給額が増えます。しかし、会社員として働く体力がない場合はどうしたら良いのでしょうか。
 
これは、今話題の「適用拡大」に乗ることでしょう。適用拡大とは、正社員でなくても厚生年金に加入ができる事業所を、政策により拡大していくことです。現在は下記の要件があります。
 

<個人要件>

・1週間の所定労働時間20時間以上
・月額賃金8万8000円以上(残業費を含まない契約賃金)
・1年以上継続して雇用をされる見込みがある
・学生でない

 

<事業所要件>

・現在、従業員501人以上の企業が対象
・会社と従業員の合意があれば、500人以下の企業でも適用拡大が可能
・2022年10月から従業員101人以上の企業に対象が拡大
・2024年10月からは51人以上の企業に対象が拡大

 
例えば、ランチタイムの配膳のパートでも、近所の定食屋で週に4回10時~15時まで働いても、厚生年金には加入できません。しかし、大手ファミレスで働けば、厚生年金に加入することができるのです。
 

意外と知らない「任意加入制度」

相続でまとまったお金が入ることもあります。資産がなくても、親の「死亡保障」でまとまったお金が入る人も多いはずです。そのような場合、前記の「国民年金未納」期間がある方は、そのお金で「任意加入制度」を使って補填をしてください。
 
「任意加入制度」とは、60歳までに老齢基礎年金の受給資格を満たしていない場合や、40年間の納付済期間に満たないため、老齢基礎年金を満額受給することができない方が、60歳以降も国民年金に任意加入することができることです。これにより、老齢基礎年金の受給額を増やすことができるので、おすすめです。
 

<任意加入する条件>

1.日本国内に住所を有する60歳以上65歳未満の方
2.老齢基礎年金の繰上げ支給を受けていない方
3.20歳以上60歳未満までの年金保険料の納付月数が480月(40年)未満の方
4.厚生年金・共済年金などに加入していない方
上記をすべて満たしている方。

 
また下記の方も対象です。

・年金受給資格期間(10年120月)を満たしていない65歳以上70歳未満の方
・外国に居住する日本人で、20歳以上65歳未満の方

 
仮に5年間任意加入で年金を支払うと、1年間でどのくらいの年金額が増えるのでしょうか? あくまでも概算ですが、2020年度受給額をベースに計算してみましょう。
 
78万1700円÷480月=1628円
1628円×12×5年=9万7680円
 
年間約10万円増やすことができます。65歳から受給した場合、75歳で約100万円、85歳で約200万円増加されるのですから、大きいですね。できることを少しずつ積み重ねるのが、これからの老後資産形成のポイントかと思います。諦めずに、取り組んでください。
 
執筆者:寺門美和子
ファイナンシャルプランナー、相続診断士

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