更新日: 2020.09.09 その他年金
〈個人事業主の年金〉 ①個人事業主の年金は少ない?老後の安定が欲しい!
所得となると税務上は経費が計上できて、節税の余地が大きいようにも見えますが、経費は実際の支出を伴っており、手元に残るお金、自由に使えるお金は少ないのが現状です。
会社員と比べると不安定な要素が多い生活をしてきた個人事業主が、老後について考えるとさらに不安になる……いったいいつまで働けるのか?健康を気遣っても、避けられない年齢の壁は高く立ちはだかります。
執筆者:黒澤佳子(くろさわよしこ)
CFP(R)認定者、中小企業診断士
アットハーモニーマネジメントオフィス代表
栃木県出身。横浜国立大学卒業後、銀行、IT企業、監査法人を経て独立。個別相談、セミナー講師、本やコラムの執筆等を行う。
自身の子育て経験を踏まえて、明日の子どもたちが希望を持って暮らせる社会の実現を願い、金融経済教育に取り組んでいる。
また女性の起業,事業承継を中心に経営サポートを行い、大学では経営学や消費生活論の講義を担当している。
個人事業主の公的年金は少ない!
日本は社会保障制度が整っている国で、老後の暮らしを支える年金が一生涯受給できます。
年金は、加入期間が長ければ長いほど、保険料を多く支払えば支払うほど、受取額が増える仕組みです。
会社員の場合、報酬月額の7.891%が毎月天引きされ、かつ同額を会社が負担してくれます(平成29年8月までの厚生年金保険料率:15.782%)。いわゆる労使折半です。
多くの保険料を納める会社員だった人がもらえる厚生年金の平均受取額は、月額147,872円です(平成27年度厚生年金の老齢年金)。
会社によっては、さらに企業年金がある場合もありますし、確定拠出年金(企業型)の制度を設けている場合は、掛金は原則会社が負担してくれます。会社員の年金制度は非常に手厚いと言えます。
一方で自営業者やフリーランスが加入する国民年金の平均受取額は、月額55,244円で(平成27年度国民年金の老齢年金)、厚生年金と比べると10万円近い差があります。年間にすると実に100万円以上の差です。
国民年金は、月額16,490円(平成29年度)と一定の保険料であり、年金受取額を増やしたくても掛金をたくさん捻出することはできません。
国民年金の受取額は満額でも779,300円です(平成29年4月)。
今年8月より、国民年金の受給要件が緩和され、加入期間10年で老齢年金が受給できるようになりますが、10年の加入期間で受け取れる年金額はこの満額の4分の1程度、年間20万円に満たないということになります。
日本の少子高齢化問題はとても深刻で、今後年金受取額が減る可能性も十分あるだけでなく、保険料の値上がりも心配です。
実際、平成元年には月額8,000円だった国民年金保険料も毎年じわじわと上がり、平成29年現在は月額16,490円と2倍以上になっています。
これでは老後の生活に不安を抱くのも無理はありません。
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老後の生活、いくら必要?いつまで働けばいい?
まず、老後の生活費はいくらかかるのか、介護が必要になったらいくらかかるのか、老後資金としていくらあればよいのかを知っておきましょう。
老後の生活費の平均は1か月あたり約28万円、年間約336万円です(高齢夫婦無職世帯の支出、総務省「家計調査」平成27年家計の概況より)。これは、二人以上世帯の消費支出、約358万円(総務省「家計調査」平成29年3月)とほぼ同水準です。子供が巣立ち、夫婦2人で慎ましやかかに暮らそうとしても、生活費はそれほど減らないのが実状なのです。現役の時ほど外出しなくなり、行動範囲も小さくなるとはいえ、自分で動けなくなる分、タクシー代などがかかるようになることもあります。孫にお小遣いもあげたいし、2人でのんびり旅行も行きたい、となれば、さらにお金がかかることになります。支出状況はすぐに変えられるものではなく、リタイアしたからといって急に質素な生活になるわけではありません。
介護費用は月約16万円(厚生労働省「介護給付費実態調査の概要」平成26年度、介護保険受有者1人あたりの費用)で、要介護状態になったときの初期費用平均額は252万円です(生命保険文化センター「平成27年度生命保険に関する全国実態調査」)。これは、どのような施設に入るのか、自宅で介護を受けるのか、子供と同居するのか、などリタイアメントプランによって大きく変わります。
もしも介護状態が10年続くとすると、252万円+16万円×12ヶ月×10年=2,172万円にもなります。
つまり老後資金の目安として、夫婦2人で月28万円は確保したい、その他に60歳時点で4,000万円くらいは作っておきたい、ということになります。
確かに個人事業主には定年がありません。働ける限り働くという選択もありますが、急に働けなくなったら……?と考えると、やはり老後資金は準備しておいた方が安心と言えるでしょう。