【ある世代のみ?】特別支給の老齢厚生年金の繰り上げ・繰り下げ支給の注意点
配信日: 2018.05.23 更新日: 2019.07.17
「年金の繰り上げ支給と繰り下げ支給、その損益分岐点とは」
https://financial-field.com/pension/2018/04/25/entry-16113
今回は、厚生年金の繰り上げ・繰り下げ支給についてお伝えしたいと思います。
執筆者:前田菜緒(まえだ なお)
FPオフィス And Asset 代表、CFP、FP相談ねっと認定FP、夫婦問題診断士
保険代理店勤務を経て独立。高齢出産夫婦が2人目を産み、マイホームを購入しても子どもが健全な環境で育ち、人生が黒字になるようライフプラン設計を行っている。子どもが寝てからでも相談できるよう、夜も相談業務を行っている。著書に「書けばわかる!わが家の家計にピッタリな子育て&教育費のかけ方」(翔泳社)
繰り上げ支給・繰り下げ支給とは
年金の受取開始年齢は原則65歳ですが、65歳より早くもらう「繰り上げ支給」、65歳より遅くもらう「繰り下げ支給」という制度があります。
繰り上げ支給をすると年金は減額されますし、繰り下げ支給をすると年金は増額されます。
自分の寿命が何歳かはわかりませんから、年金を何歳からもらうのが良いか、悩ましいところです。
さらに、年金制度の複雑さが、その悩みをいっそう深めます。とくに、厚生年金の繰り上げ・繰り下げ支給は複雑です。賢い選択をするために、年金受給開始までに、ある程度知識を身に付けておいたほう良さそうです。
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老齢厚生年金の繰り上げ支給
昭和36年4月2日以降生まれの男性および、昭和41年4月2日以降生まれの女性は、老齢厚生年金の繰り上げができます。繰り上げ請求をすると年金は1カ月あたり0.5%減額され、減額は生涯続きます。
老齢厚生年金を繰り上げする場合は、老齢基礎年金も同時に繰り上げすることになります。
繰り上げ支給の注意点
注意が必要なケースは、老齢厚生年金を繰り上げし、一方で会社勤めをして厚生年金に加入する場合です。この場合、給料の額に応じて老齢厚生年金が減額される場合があります。
老齢厚生年金が減額される仕組みは、厚生年金に加入することによるものですから、厚生年金に加入しない働き方を選択すれば、カットされることはありません。
また、失業保険と繰り上げした老齢厚生年金を、同時に受給することはできません。ハローワークで求職の申し込みをしたときは、老齢厚生年金全額の支給が停止されます。
年金を早く受け取るために、繰り上げをしたとしても、支給額が減ってしまってはメリットがなくなってしまいます。繰り上げをする場合は、十分確認してください。
世代によって異なる繰り上げ支給
昭和28年4月2日から昭和36年4月1日までに生まれた男性、および昭和33年4月2日から昭和41年4月1日までに生まれた女性は、経過的な繰り上げ支給制度があります。内容は、前述の繰り上げ支給と同じです。
この世代の人は、65歳より前に受け取れる「特別支給の老齢厚生年金」があり、この部分も繰り上げ請求ができます。
老齢厚生年金の繰り下げ支給
老齢厚生年金の繰り下げ請求をすると、年金額は1カ月あたり0.7%増額され、増額は生涯続きます。
老齢厚生年金と老齢基礎年金はそれぞれ繰り下げ時期を選択できますから、厚生年金を繰り下げたから基礎年金も繰り下げないといけないということはありません。
繰り下げ支給の注意点
注意が必要なケースは、65歳以降も厚生年金に加入し働き続ける場合です。繰り下げをして年金を受給していないにもかかわらず、給与の額に応じて将来の年金額が調整されるのです。
仕組みとしては、繰り下げしなかった場合の本来の年金を減額し、減額後の年金額に繰り下げによる増額率をかけた金額が受給する年金額となります。
つまり、繰り下げをしてもしなくても、働いて減額されれば、その部分は受け取れないということです。
一方で、65歳以降も厚生年金に加入することで、納める保険料も増えるわけですから、将来もらう年金も増えるということになります。これは厚生年金の考え方であり、基礎年金には影響しません。
また、繰り下げによって加給年金も先送りされます。加給年金とは、厚生年金の家族手当のようなものです。生計を維持している65歳未満の配偶者などがいる場合に、上乗せして支給されます。
繰り下げ支給をしたからといって、加給年金は増額されません。先送りされるだけです。また、繰り下げ期間中に配偶者が65歳を迎えると加給年金を受け取れなくなってしまいます。
まとめ
厚生年金の繰り上げ・繰り下げ支給は複雑で、注意すべき点が多いです。自身の生年月日、家族構成、働くか働かないかなどの事情によって、メリット、デメリットが大きく変わってきます。
今回お伝えした注意点も一部ですし、繰り上げ・繰り下げ支給できる条件もあります。年金事務所などで相談して、自身にとってベストな受け取り方を見つけてください。
Text:前田 菜緒(まえだ なお)
1級ファイナンシャルプランニング技能士、CFP(R)認定者