2019.03.05 年金

遺族補償制度の1つ。夫と死別した際に受給できる「寡婦年金」とは?

遺族補償が薄い自営業者、もとい国民年金第一号被保険者(以下、本稿では国民年金第一号被保険者を自営業者と称します)ですが、自営業者のためだけの遺族補償があります。本稿では、その中の一つ、「寡婦年金(かふねんきん)」についてのお話です。
 

寡婦年金ってどんなもの?

所得税には、寡婦控除と共に寡夫控除もありますが、国民年金には寡婦年金はあっても、寡夫年金はありません。さて、そもそも寡婦年金とは、どのようなものでしょうか?
 
まず、もらうことができるのは(戸籍上)女性に限られます。そして、その女性の年齢も60歳~65歳に限られ、また、もらえる期間も同じく60歳~65歳の5年間に限られます(いわゆる有期年金ですね)。
 
加えて、その女性が「老齢基礎年金を繰り上げてもらっている」場合は、寡婦年金をもらうことはできません(「繰り上げ」とは、本来、65歳からもらう老齢基礎年金を前倒しして、早めにもらい始めること。前倒しは60歳までできます。
 
早めにもらい始める分、本来の金額からカットされた額を亡くなるまで、もらい続けることになります)。肝心の寡婦年金の年金額ですが、「夫がもらうハズだった老齢基礎年金の金額×3/4」という計算になります。
 
では、どんな時に、もらえるのでしょうか?寡婦というくらいなので、夫と死別した女性が対象ですが、死別なら誰でもOKということはありません。結婚生活が10年以上、続いた夫でなくてはなりません(なお、ここで言う結婚生活とは、内縁や事実婚などの未入籍でもOKです)。
 
加えて、夫の死亡当時、夫によって生計を維持されていた女性という条件もあります(生計維持要件と言われます。年収850万円未満なら、「生計を維持されていた」とされます)。
 
また、結婚生活が10年以上、続いた夫にも、以下のような条件があります。
 
☆自営業者として国民年金保険料を10年以上、納めたこと(「10年以上」には免除の期間を含みます。なお、ここで言う10年は結婚生活の10年間とかぶらなくても大丈夫です)。
☆亡くなった夫が老齢基礎年金をもらっていないこと。
☆亡くなった夫が障害基礎年金をもらっていないこと。

 
遺族基礎年金とは異なり、「子どもはいなくても」OKですが、女性が再婚した場合は、遺族年金と同じく寡婦年金も「失権」します(ちなみに、「失権」すると復活はありません。「再婚したけど、さっさと別れたから寡婦年金をちょうだい」と言っても、もらえません)。
 

寡婦年金の注意点

ここで、寡婦年金の注意点を一問一答形式でみてみましょう。
 
☆遺族基礎年金と寡婦年金を「両方をもらう」はありですか?
遺族基礎年金と寡婦年金、それぞれの条件を満たせば「両方をもらう」こともあり得ます。が、「同時」にはムリです。遺族基礎年金と寡婦年金、「もらう時期がずれている」なら、両方をもらうことができます。
 
☆遺族厚生年金と寡婦年金を「両方もらう」はありですか?
自営業者として国民年金保険料を10年以上納めた夫が、「法人成り」をして厚生年金に加入(=国民年金第二号被保険者)するような場合ですよね。
 
そして、夫が国民年金第二号被保険者の時に亡くなったら、確かに、遺族厚生年金と寡婦年金の両方の権利が発生することになりますが、両方をもらうことはできません。
 
どちらかを選択し、どちらかを諦めることになります。恐らく、遺族厚生年金の方が金額が高いと思われますので、遺族厚生年金を受け取ることになるでしょう。
 
☆寡婦年金を死亡一時金を「両方もらう」はありですか?
残念ながら、どちらかになります。
 

モデルケース別に寡婦年金の受け取りをみてみよう

○モデルケース1

夫:40歳。自営業者として20年もの間、お店を切り盛り。
妻:40歳。25歳の時に、夫と結婚し、夫のお店を手伝う。
子:15歳、現在、中学3年生。
 
以上のような、仲むつまじく平穏に暮らしていた家族ですが、ある日突然、夫が事故で亡くなったとします。子どもが「18歳になった後の、最初の3月31日」、つまり、子どもが高等学校を卒業するまでの間、遺族基礎年金を受け取ることができます。
 
子どもが高等学校を卒業するころには寡婦となった妻は44歳でしょうか?妻が44歳になった時、「子の加算」とセットで受け取っていた遺族基礎年金は打ち切られます。そして、その後、再婚をしなければ、16年後、妻が60歳~65歳までの間、寡婦年金を受け取ることができます。
 
その金額は77万9300円×20年×12ヶ月÷480×3/4≒29万2200円です。(便宜上、2019年度の年金額をベースに計算しています)。
 

○モデルケース2

夫:64歳。自営業者として44年もの間、お店を切り盛り。
妻:64歳。25歳の時に、夫と結婚し、夫のお店を支え続ける。夫の亡くなった日から、6ヶ月後に65歳。
子:35歳、現在、上場企業の管理職。
 
以上のような、仲むつまじく平穏に暮らしていた家族ですが、ある日突然、夫が、がんで亡くなったとします。子どもはおりますが、もはや「遺族基礎年金」を議論するような年齢ではありません。
 
以上のケースですと、寡婦年金と死亡一時金のどちらを選ぶか、という議論になります。そこで、寡婦年金の金額を計算してみましょう。77万9300円×40年×12ヶ月÷480×3/4≒58万4500円(便宜上、2019年度の年金額をベースに計算しています)
 
妻は6ヶ月後に、65歳になりますので、寡婦年金の実際の受給額は、58万4500円÷12ヶ月×5ヶ月間≒24万3542円です。(年金は「翌月開始&当月終わり」なので、亡くなった月の翌月から寡婦年金の権利が発生します)
 
その一方で、死亡一時金は「国民年金の保険料を35年以上、納めている」場合には、32万円を受け取ることができます。よって、このケースでは、妻は死亡一時金を受け取った方が有利です。
 
ちなみに、年金は偶数月に2ヶ月分をもらうのが原則ですが。一時金は「一回だけ」もらって、それで終わりです。
 

○モデルケース3

夫:65歳。自営業者として44年もの間、お店を切り盛り。65歳になって、すぐに老齢基礎年金の手続きを行う。2ヶ月後の最初の年金の受け取りを楽しみにしている。
妻:64歳。25歳の時に、夫と結婚し、夫のお店を支え続ける。
子:35歳、現在、上場企業の管理職。
 
以上のような、仲むつまじく平穏に暮らしていた家族ですが、ある日突然、夫が、がんで亡くなったとします。こちらのケースも子どもはおりますが、もはや「遺族基礎年金」を議論するような年齢ではありません。そればかりか、寡婦年金も死亡一時金も受け取れないケースです。
 
夫は「最初の年金の受け取りを楽しみにして」いましたが、(老齢基礎)年金を受け取ることなく亡くなってしまいました。老齢基礎年金はもらっていなくても、もらうための手続きを済ませてしまっています。
 
もう、こうなってしまうと、寡婦年金も死亡一時金ももらえません。妻がもらうができるのは、夫が楽しみにしていた「最初の年金」を未支給年金として受け取るだけです。余談ですが。このケースは、筆者が実際にお受けした相談の事例です。
 

まとめ

寡婦年金は、もらえる金額も決して多くはありませんし、もらえる期間も5年間と短いです。が、もらえるものは、なるべく、もらっておきたいものですね。ちなみに、寡婦年金も含め、遺族年金は非課税です。
 
執筆者:大泉稔(おおいずみ みのる)
株式会社fpANSWER代表取締役
 
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大泉稔

執筆者:大泉稔(おおいずみ みのる)

株式会社fpANSWER代表取締役

専門学校東京スクールオブビジネス非常勤講師
明星大学卒業、放送大学大学院在学。
刑務所職員、電鉄系タクシー会社事故係、社会保険庁ねんきん電話相談員、独立系FP会社役員、保険代理店役員を経て現在に至っています。講師や執筆者として広く情報発信する機会もありますが、最近では個別にご相談を頂く機会が増えてきました。ご相談を頂く属性と内容は、65歳以上のリタイアメント層と30〜50歳代の独身女性からは、生命保険や投資、それに不動産。また20〜30歳代の若年経営者からは、生命保険や損害保険、それにリーガル関連。趣味はスポーツジム、箱根の温泉巡り、そして株式投資。最近はアメリカ株にはまっています。



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