2019.03.11 年金

夫婦が離婚すると年金はどうなる? (4)‐既に年金を受給している場合の年金分割と注意点‐

離婚時の年金分割には合意分割と3号分割の2種類があり、前回は老齢年金を受給する年齢になる前に離婚した場合、将来分割を反映された年金を受給するために必要なことについて取り上げました。
 
既に年金を受け取っている人が離婚し、年金分割を行った場合は、どのような注意点があるでしょうか。
 

既に年金を受け取っている人の離婚の場合

年金は月単位で計算され、受け取れることになりますが、既に老齢年金を受け取っている人が離婚し、年金分割を行った場合、分割の請求をした月の翌月分から、分割が反映された年金額に変わることになります。
 
年金額が変わるのは老齢厚生年金になりますが、離婚した一方の当事者である分割した側の年金は減り、もう一方の当事者である分割を受けた側の年金は増えることになるでしょう。
 

分割を受けられる一方、加算がなくなることも

年金分割は、これまで述べてきたとおり、婚姻期間中の標準報酬を分割し、老齢厚生年金を対象としている制度ですが、国民年金制度の老齢基礎年金への加算にも影響が出ることがあります。
 
既に65歳を過ぎて、老齢基礎年金を受けている人について、会社員期間の長い配偶者がいる専業主婦(夫)の老齢基礎年金には振替加算という加算がされている場合があります。
 
振替加算は、配偶者の厚生年金加入期間が240月以上あり、本人の厚生年金加入期間が240月未満で、収入要件など一定の要件を満たした場合に、本人の65歳以降(配偶者が年下の場合は配偶者が65歳になって以降)に加算がされるもので、本来、一度加算されると、その後先に配偶者が亡くなっても、本人が亡くなるまで終身加算されるものとなっています(【図表1】)。

 
しかし、元々厚生年金加入期間が240月未満で既に振替加算込みの年金を受けている人が離婚し、年金分割により、分割の対象となった厚生年金加入期間と元々の本人の厚生年金加入期間を合わせて240月以上になった場合は、それ以降、振替加算は加算されなくなります(【図表2】)。

 

分割を受けたのに年金が思ったほど増えないことも?

振替加算は大正15年4月2日~昭和41年4月1日生まれの人が対象で、年間224,500円~15,042円(平成31年度の場合)と生年月日により金額が異なり、生年月日の早い世代ほど加算額が多くなります。
例えば、平成31年度に69歳になる人の振替加算は年間80,820円になりますが、仮に年金分割により、老齢厚生年金が30万円増えても、一方、約8万円の振替加算が加算されなくなると、実質的に22万円ほどしか増えないことになります。
 
分割を受けたことにより、老齢厚生年金の額が増えたとしても、離婚しなければ一生涯加算されるはずの振替加算分の年金が減ることもあり、合計額で思ったほど増えないことや、場合によっては分割によって合計の年金額では減ることがあります。既に年金を受給している人が離婚し、年金分割するに当たってはこの点の確認が必要となるでしょう。
 
執筆者:井内義典(いのうち よしのり)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー
 
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井内義典

執筆者:井内義典(いのうち よしのり)

1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー

1982年生まれ。株式会社よこはまライフプランニング代表取締役。

資格学校勤務時代には教材編集等の制作業務や学習相談業務に従事し、個人開業の社会保険労務士・FPとしては公的年金に関する研修講師を務め、また、公的年金の相談業務も経験してきている。

これらの経験を活かして、専門誌で年金に関する執筆を行っている。2018年に、年金やライフプランに関する相談・提案、教育研修、制作、調査研究の各事業を行うための株式会社よこはまライフプランニングを設立、横浜を中心に首都圏で活動中。日本年金学会会員、日本FP学会準会員。



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