離婚時の年金分割のしくみ、説明できますか?よくある勘違いとは
配信日: 2019.04.11 更新日: 2019.06.18
しかし、年金分割のしくみや、年金分割により、いつから、いくら年金が増えるのか、よく理解されていません。そこで、年金分割のしくみやよくある勘違いについて解説します。
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/
離婚時の年金分割のしくみ
年金分割に関するよくある勘違いとしては、「夫の年金(国民年金・厚生年金)全てを分割できる」「分割される割合は50%である」「離婚したら分割された年金をすぐにもらえる」があります。
まず、離婚時の年金分割のしくみを理解しましょう。年金分割には「合意分割」と「3号分割」があります。それぞれのポイントを説明します。
「合意分割」は、平成19年4月1日以降に離婚している、または事実婚関係を解消している方からの請求により、婚姻期間中の厚生年金の保険料納付記録を当事者間で分割することができる制度です。
年金分割の割合は、50%を上限に話し合いで決めるか、合意がまとまらない場合は裁判手続きで定めます。必ず、厚生年金を半分もらえるわけではありません。
「3号分割」は、平成20年5月1日以降に離婚している、または事実婚関係を解消している方が対象で、平成20年4月1日以降に国民年金の第3号被保険者期間があった人からの請求により、自動的に、相手方の厚生年金の保険料納付記録を2分の1ずつ分割することができる制度です。夫婦の合意は必要ありません。
年金分割の対象となるのは、厚生年金の部分だけです。国民年金の部分は対象外です。したがって、自営業者などは国民年金にしか加入していませんので、例えば、自営業者の夫と離婚しても妻は年金分割を受けることができません。
年金分割は婚姻期間中の年金を多い方から少ないほうに分割する制度です。妻の方が多ければ妻から夫に年金が分割されます。離婚をした翌日から2年以内に請求することが必要です(申請主義)。
また、既に離婚等が成立し、相手方が死亡した日から1か月を経過すると請求できなくなります。
年金分割が行われた後は、当事者の同意があっても取り消すことはできません。年金としてもらうのは、自分の受給年齢に達した時なので、年金分割したからといって、すぐに年金をもらえるわけではありません。
【PR】資料請求_好立地×駅近のマンション投資
【PR】J.P.Returns
おすすめポイント
・東京23区や神奈川(横浜市・川崎市)、関西(大阪、京都、神戸)の都心高稼働エリアが中心
・入居率は99.95%となっており、マンション投資初心者でも安心
・スマホで読めるオリジナルeBookが資料請求でもらえる
離婚時の年金分割でいくら増える?
まず、厚生年金(国民年金含む)の平均支給額を確認しましょう。厚生労働省年金局「平成29年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」(平成30年12月)によると、受給権者の分割改定前後の平均年金月額は次のようになっています。
第1号改定者(分割する側)
(改定前)142,713円 (改定後)111,892円 (変動差)-30,821円
第2号改定者(分割される側)
(改定前)49,741円 (改定後)80,799円 (変動差)+31,058円
この統計資料から、分割する側も、される側も3万円程度増減していることがわかります。年金の分割を受けた側の平均年金月額は8万円程度にすぎないので、年金分割で得られる金額に過度の期待をしないようにしましょう。
年金分割に必要な情報通知書の請求は、二人一緒でも一人でも請求することができます。分割の対象となる期間、当事者それぞれの標準報酬の総額などの情報が得られます。
年金分割すると自分の場合は、どのくらい年金が増えるのかを知りたい場合は、次の方は年金事務所で年金分割時の見込み額を試算してもらえます。
・50歳以上の方で老齢基礎年金の受給資格期間を満たしている方は、老齢厚生年金の見込み額
・障害厚生年金を受けている方は、障害厚生年金の見込み額
若くして離婚した場合は、財産分与も年金分割も多くの金額を当てにできません。専業主婦だった方などは、離婚後の収入を増やすため、離婚前から資格を取るなど準備をしておくと良いでしょう。
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー