更新日: 2019.06.13 厚生年金
会社員と公務員の期間がある人が亡くなった。遺族年金はどうなる?
執筆者:井内義典(いのうち よしのり)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー
専門は公的年金で、活動拠点は横浜。これまで公的年金についてのFP個別相談、金融機関での相談などに従事してきたほか、社労士向け・FP向け・地方自治体職員向けの教育研修や、専門誌等での執筆も行ってきています。
日本年金学会会員、㈱服部年金企画講師、FP相談ねっと認定FP(https://fpsdn.net/fp/yinouchi/)。
公務員・私学教職員も厚生年金に加入
2015年10月に被用者年金は一元化され、会社員だけでなく公務員や私立学校の教職員も厚生年金に加入するようになっています。
会社員は第1号厚生年金被保険者、国家公務員は第2号厚生年金被保険者、地方公務員は第3号厚生年金被保険者、私立学校教職員は第4号厚生年金被保険者とそれぞれの種別に分かれることになります。
年金の保険料徴収や給付事務を行う実施機関は、第1号が日本年金機構、第2号が国家公務員共済組合及び国家公務員共済組合連合会、第3号が地方公務員共済組合・全国市町村職員共済組合連合会及び地方公務員共済組合連合会、第4号が日本私立学校振興・共済事業団になり、被用者年金一元化後も各共済は存続していることとなります。
そして、一元化後に発生する年金も共済年金ではなく、厚生年金となります。
複数の種別の厚生年金に加入していた人が亡くなった際、亡くなった人に生計を維持されていた遺族(配偶者・子、父母、孫、祖父母)は遺族厚生年金を受け取ることが可能ですが、複数の種別の厚生年金加入期間がある場合も、遺族共済年金ではなく、全て遺族厚生年金として支給されます。
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遺族厚生年金受給のための亡くなった人の要件
遺族厚生年金を受給するためには亡くなった人の要件があり、亡くなった当時に【図表1】のA~Dのいずれかを満たす必要があります。
Aは厚生年金加入中(在職中)の死亡、Bは在職中に初診日(病気やケガで初めて医師等の診療を受けた日)があり、その初診日から5年以内の死亡、Cは障害等級1、2級の障害厚生年金を受給する権利のある人の死亡、Dは老齢厚生年金を受給する権利のある人、あるいはその受給資格期間を満たした人(いずれも保険料の納付期間・免除期間など受給資格期間が原則25年以上必要)の死亡、となっています。
遺族厚生年金の計算方法
【図表1】のいずれかの要件を満たして支給される遺族厚生年金は、【図表2】の計算式(計算式のうち本来水準と呼ばれる計算式)で計算されます。
【図表1】のABCの場合が短期要件として、Dの場合が長期要件として計算されますが、亡くなった人の老齢厚生年金(報酬比例部分)の4分の3となります。
在職中の給与(標準報酬月額)や賞与(標準賞与額)、厚生年金加入期間(被保険者期間)を用いて計算を行いますので、厚生年金の加入期間があることが条件であると言えるでしょう。
支給は短期要件と長期要件で異なる!
1つの厚生年金の種別のみの人の場合は、【図表2】の計算式で計算した結果、1つの実施機関から遺族厚生年金が支給されることになりますが、では、会社員の期間と国家公務員の期間がある場合など複数の種別がある場合は、どのように支給されるのでしょうか。
まず、【図表1】のABCの場合は2つ以上の種別の期間を合算して計算し、1か所から全額支給されることになります。Aの場合、在職中の種別の実施機関から全額支給されます。
会社員としても勤めたことがある人が国家公務員として在職中に死亡したのであれば、会社員期間分も含め国家公務員共済組合連合会から全額支給されます。
同様に、Bの場合も、初診日の時の種別の実施機関から全額支給され、また、Cの場合も、生前障害厚生年金が支給されていた実施機関より全額支給されることになります。
一方、Dの場合、種別ごとに【図表2】の長期要件の計算式で計算します。種別ごとに計算された遺族厚生年金を合算した額が遺族厚生年金の総額となります。
そして、実際の支給についても、種別ごとの額を各実施機関からされることになり、亡くなった人に会社員の期間と国家公務員の期間があれば、それぞれで計算された額が日本年金機構と国家公務員共済組合連合会それぞれから支給されることになります。
年金の支給日はいずれの種別の場合も同じで、原則2か月に1回、偶数月の15日ですが、Dの場合は種別ごとに分かれて振込がされるでしょう。
執筆者:井内義典(いのうち よしのり)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー