65歳から初めての障害年金は受けられるの?
配信日: 2019.10.04 更新日: 2021.04.30
執筆者:井内義典(いのうち よしのり)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー
専門は公的年金で、活動拠点は横浜。これまで公的年金についてのFP個別相談、金融機関での相談などに従事してきたほか、社労士向け・FP向け・地方自治体職員向けの教育研修や、専門誌等での執筆も行ってきています。
日本年金学会会員、㈱服部年金企画講師、FP相談ねっと認定FP(https://fpsdn.net/fp/yinouchi/)。
障害基礎年金は受給できない
障害年金には国民年金制度からの障害基礎年金(障害等級1、2級を対象)と厚生年金保険制度からの障害厚生年金(障害等級1~3級を対象)があり、それぞれ受給のための要件があります。まず、障害基礎年金については、【図表1】のとおりの初診日要件と保険料納付要件があり、それぞれ満たす必要があります。
初診日(障害の原因となる病気やケガで初めて医師等の診療を受けた日)時点で、【図表1】(1)のAあるいはBのいずれかに該当している必要がありますが、初診日時点で65歳になっている人は、まず、Bを満たすことができません。
次にAですが、65歳時点で老齢年金(老齢基礎年金・老齢厚生年金)の受給の権利のある人は、Aも満たすことはできません。
国民年金の被保険者のうち、第1号被保険者は60歳まで、第3号被保険者も60歳までで、また、第2号被保険者については60歳以降でも会社員等で在職すれば対象になりますが、65歳時点で老齢年金を受給できる人は、65歳以降はたとえ在職中であっても第2号被保険者に該当しません。
また、第1号被保険者のように国民年金保険料を納めることができる任意加入被保険者になれるのも65歳までとなっています。つまり、65歳以降国民年金の被保険者にはなれません。仮に、65歳以降、受給資格期間が足りずに老齢年金の受給権がない場合に在職中であると、65歳以降も第2号被保険者になることができます。
しかし、保険料納付要件として、初診日の前々月までの被保険者期間に3分の2以上の保険料の納付期間と免除期間が必要であり(【図表1】(2)の原則要件。
初診日時点で65歳以上の場合、特例要件は適用されません)、65歳を過ぎても、10年以上必要となっている老齢年金の受給資格期間(納付や免除の期間の他、カラ期間)を満たしていない状況では、過去の被保険者期間のうち、納付と免除で3分の2以上を満たすことは困難でしょう。
よって、65歳以降に初診日がある場合は、ごく一部の場合を除き、障害基礎年金を受給できません。
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障害厚生年金は受給可能な場合があるものの・・・
一方、障害厚生年金についても受給には要件があり、【図表2】のとおり、初診日要件と保険料納付要件の両方を満たす必要があります。
初診日時点で厚生年金被保険者(在職中)であることが条件です。
在職中70歳までの間は厚生年金に加入することになりますが、65歳から老齢年金が受給できる人に、65歳以降の在職中に初診日があり、【図表2】(2)の原則要件で保険料納付要件を満たし、初診日から原則1年6ヶ月経過した日(障害認定日)に年金制度上の障害等級に該当すれば、障害厚生年金を受給する権利が発生します。
しかし、すでに老齢年金(老齢基礎年金や老齢厚生年金)の受給権があると、障害厚生年金と老齢年金と両方は受給できません。どちらかを選択することになり、仮に老齢年金を選択すると障害厚生年金は選択できません。
当該障害厚生年金の額には年間58万5100円(2019年度)の最低保障がありますが、先述のとおり、障害基礎年金はありませんので、2級以上の障害であっても、障害基礎年金と障害厚生年金を併せて受給できません。
障害厚生年金のみの障害年金の額が老齢基礎年金と老齢厚生年金の合計額より圧倒的に少ないと、引き続き老齢年金を受給することになるでしょう。
このように、本格的に老齢年金を受けている65歳以降に初診日がある場合、障害年金を受給できないこともありませんが、65歳以上の人は基本的に老齢年金でカバーされます。障害年金は「老齢年金を受ける歳になる前に障害が残った人が対象」と考えた方がよいでしょう。
※2021/4/30 内容を一部修正させていただきました。
執筆者:井内義典
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー