最終更新日: 2019.11.27 公開日: 2019.11.13
年金

在職老齢年金が見直しへ。65歳以降の働き方の選択肢って?

執筆者 : 當舎緑

2019年8月に、公的年金の健全性を示す財政検証が公表され、政府はそれから続々と全世代型社会保障に向けて制度改革を打ち出しています。その中で強く意識して打ち出されていると感じるのは、できるだけ長期間働いてくれる現役を増やすという方針です。
今回はできるだけ長く働くため、そして老後資金に困らないため、70歳まで現役でいられる社会のために知っておくべきポイントを考えてみましょう。
當舎緑

執筆者:

執筆者:當舎緑(とうしゃ みどり)

社会保険労務士。行政書士。CFP(R)。

阪神淡路大震災の経験から、法律やお金の大切さを実感し、開業後は、顧問先の会社の労働保険関係や社会保険関係の手続き、相談にのる傍ら、一般消費者向けのセミナーや執筆活動も精力的に行っている。著書は、「3級FP過去問題集」(金融ブックス)。「子どもにかけるお金の本」(主婦の友社)「もらい忘れ年金の受け取り方」(近代セールス社)など。女2人男1人の3児の母でもある。
 

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當舎緑

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執筆者:當舎緑(とうしゃ みどり)

社会保険労務士。行政書士。CFP(R)。

阪神淡路大震災の経験から、法律やお金の大切さを実感し、開業後は、顧問先の会社の労働保険関係や社会保険関係の手続き、相談にのる傍ら、一般消費者向けのセミナーや執筆活動も精力的に行っている。著書は、「3級FP過去問題集」(金融ブックス)。「子どもにかけるお金の本」(主婦の友社)「もらい忘れ年金の受け取り方」(近代セールス社)など。女2人男1人の3児の母でもある。
 

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高齢者が働いても年金が調整されない方向へ

厚生労働省の改定案として、在職老齢年金の見直しがされると発表されていましたが、高所得者向けの畝策と批判された結果、結局もとのさやに戻ってしまいました。今は、賃金と年金額の合計が、60歳から65歳までは28万円を超えた場合、65歳以降は47万円を超えた場合に、年金額の調整がされます。
 
60歳から65歳までは、雇用保険から高年齢雇用継続給付が支給されることがありますので、年金がさらにカットされることもあります。ですから60歳以降、正社員並みに働いて収入があると、「年金がカットされるから働くと損」と思う方がほとんどでした。
 
ただ、実質、年金と給料が調整されるといっても、調整の対象となるのは「老齢厚生年金」で、老齢基礎年金は対象外です。私が社会保険労務士として色々な会社を見ている限りでは、47万円を超えて調整される方はほんの一部のように感じています。ですから、今後は65歳以上の方が継続して働き続けたとしても、「働くと年金がカットされるかも」という心配は誰もがするわけではありません。政府が勧める「70歳まで働く社会」であれば、年金保険料を納付する方が増えますし、年金の形である「現役が年金受給者を支える」という方式が長く続き、まさに「年金100年安心」も実現できるというわけです。
 
しかし、企業にもメリットがなくては高年齢者を雇用し続けられませんから、高年齢者自身も、スキルを身につけるなど、何らかの努力は必要でしょう。そんな時に活用していただきたいのは、雇用保険の教育訓練給付です。対象となる講座はインターネットでも検索可能です(※1)。
 
雇用保険は、失業だけに備える保険ではありません。雇用保険の教育訓練給付を受け、英語やパソコン、簿記などさまざまなスキルを磨いて、年金と賃金を同時に受け取るという働き方を目指すのも良いでしょう。体力の衰えで時間を短くして働きたい、など希望が多様化していますから、スキルがあれば、会社と労働条件等の交渉はしやすくなるといえます。
 

確定拠出年金は自分年金づくりの基本となる

公的年金の将来像が財政検証で示され、70歳まで年金を繰り下げすることで年金額を増やすという方針も示されていますが、公的年金以外の自助努力の道を目指すのが現実的でしょう。その中で一番活用が望まれているのは、確定拠出年金です。
 
厚生労働省は、企業型確定拠出年金の掛金拠出を60歳から70歳まで、個人型確定拠出年金の加入期間を60歳から65歳までに延長する改革を検討するようです。年金というのはせめて10年以上運用しないと効果がないとよく言われます。その結果、50代の方では、今さら加入しても効果が高くないといわれることも多く、加入を勧めにくいポイントではありました。今後、加入期間が延長されるのであれば、資産形成に余裕ができます。
 
税控除できるという点でも、50代ではそろそろ子どもが学校を卒業し、扶養から外れることが多い時期です。そこでいきなり所得税が上がってびっくりされる方も多いのですが、所得税および住民税が下がり、かつ自分年金をつくることができるのは、これまで加入を躊躇していた方にとっては、かなりメリットがあるといえます。
 

70歳までの就業確保の機会の選択肢はさまざま

冒頭の政府の制度改革には、70歳までの雇用の確保という項目も含まれています。では、70歳までの雇用とはいったいどういったことが想定されるのでしょうか。それは、内閣官房日本経済総合事務局が示した資料にヒントがあります。65歳以降の就業機会の確保には、以下のような選択肢を模索することになりそうです。
 
1.定年廃止
2.70歳までの定年延長
3.継続雇用制度導入
4.他の企業への再就職
5.個人とのフリーランス契約への資金提供
6.個人の起業支援
7.個人への社会貢献活動への資金提供
 
これだけの選択肢が与えられていますので、意欲があれば比較的道は開きやすいでしょう。ただ、社労士として企業に関わってきた立場からすると、定年廃止や定年延長は難しいと思っています。なぜなら、高年齢者の就労意識が高いことも感じていますが、すべての方が、定年後にそれまでと同じように働けるわけではありません。
 
また、70歳まで働くということは、年金をいつ受け取るかというのが大きな問題となります。繰り下げをして少しでも年金額を増やすか、それとも年金を受け取りながら働くか、それは今でも働く高年齢者が悩むことが多い問題です。年金の形や額は人それぞれですから、アドバイスは一つではありません。70歳まで働くのなら、同様の問題が起こります。
 
年金に関しては非常に誤解が多く、年金を働きながら受け取るのは損だという意見をお持ちの方がいらっしゃったり、先に受け取らなきゃ受け取れなくなるという意見をお持ちだったりと、友人知人の口コミを重視する傾向にあるようです。しかし、大事なことはしっかりとした相談窓口に相談するべきです。今後は70歳まで働くということを想定したうえで、情報取得は正確に。これが長く働く秘訣といえるでしょう。
 
(※1)ハローワークインターネットサービス「教育訓練給付金制度 講座・検索」
 
執筆者:當舎緑
社会保険労務士。行政書士。CFP(R)。

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