更新日: 2020.04.05 その他年金
女性の平均寿命と健康寿命の差は12.35歳! 老後に備えて、どう年金を増やす?
これでは長生きをすることで老後資金が足りなくなってしまうだけでなく、平均寿命と健康寿命の差があることで医療費や介護費が必要な期間が長くなり、さらに多くのお金がかかってしまう「長寿リスク」という問題が発生します。
今回は老後の医療費・介護費を含めた長寿リスクに備えるために、老後の収入の柱となる年金を増やす方法についてお伝えしたいと思います。
平均寿命と差がある健康寿命
内閣府の令和元年版高齢社会白書によると、「平均寿命」は男性が80.98歳、女性が87.14歳と延び続けています。
一方、健康上の問題で日常生活が制限されずに行動できる期間である「健康寿命」は男性72.14歳、女性74.79歳。つまり、平均寿命と健康寿命との差は、男性8.84年、女性12.35年になります(いずれも平成28年時点)。
寿命が延びても健康な状態でなければ、医療費や介護費が多くかかってしまい、働いて収入を補うこともできません。
厚生労働省では2019年3月、健康寿命を「2016年から2040年までに健康寿命を3年以上延伸」する目標を掲げ、男性は75.14歳以上、女性は77.79歳以上をめざし、加齢に伴って心身の活力が低下する「フレイル」や認知症の予防対策を進めるとしています。
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長寿リスクを軽減するには
国の健康寿命を延ばす対策と並行して、私たちも老後をいかに健康に過ごし、長寿リスクへの不安を解消するか考えていきたいですね。
まずは健康診断を必ず定期的に受けるようにし、体の不調を放置しないなど健康に十分な注意を払いましょう。
女性の場合、男性よりも平均寿命が長いことから、既婚であっても最終的には“おひとりさま”になる可能性が高く、その期間も長くなる傾向にあります。老後の資金計画では、夫婦2人分の年金収入だけでなく、1人になったときの試算をしておくことも必要だと思います。
貯蓄については子どもが小さいうちなどの貯めどきを逃さず、できる限り増やしておき、子育てや介護などで働けない時期も少しでも収入を得る工夫をするなど、できるだけ長く働き続けるという環境を整えられるようにしたいですね。
年金を増やす方法
健康に気を付けたり、できるだけ貯蓄しておく、長く働くということは有効ですが、老後の収入についてはやはり年金を頼ることになると思います。この年金を増やす方法はあるのでしょうか。加入している年金ごとに考えてみたいと思います。
■「厚生年金」や「共済年金」に加入している場合
会社員や公務員の方は、厚生年金や共済年金に加入しています。
1.企業年金を確認する
企業年金には「厚生年金基金」「確定給付企業年金」、そして「確定拠出年金(企業型)」があります。
勤務している会社がいずれかに加入していれば、将来に受け取る年金は「国民年金(基礎年金)」「厚生年金」、そしてこの「企業年金」と、年金の「3階建て」と呼ばれる仕組みのうち、すべての年金を受け取ることができます(厚生年金基金については、法律の改正によりほとんどが確定給付企業年金か確定拠出年金に移行しています)。
2.年金払い退職給付を確認する
企業年金の公務員版ともいえる制度で、平成27年10月に公務員の共済年金の職域部分が廃止され、「年金払い退職給付(退職等年金給付)」として創設された制度で、退職年金、公務障害年金、公務遺族年金の3種類があります。
標準報酬月額および標準期末手当などの額に付与率を乗じた「付与額」を毎月積み立て、これに利息を加えた額を「給付算定基礎額」といい、この額を基に年金払い退職給付の額が算定されます。
これまでの職域部分の積立も経過措置として支給されます。
3.個人型確定拠出年金(iDeCo)に加入する
iDeCoとも呼ばれ、毎月、掛金を拠出(=積立)して、あらかじめ用意された金融商品で運用をおこない、60歳以降に年金または一時金として受け取る年金のことです。なお、企業年金加入者は企業年金規約で認められている場合に限ります。
4.昇給を目指す
厚生年金は所得比例型なので、給料が上がると保険料も多く納めることになります。そのぶん将来の年金額を増やすことができますので、積極的に昇給をめざしましょう。
5.できるだけ長く働き続ける
厚生年金の加入要件は70歳までです。厚生年金に加入できる職場で少しでも長く働くことで年金額を増やすことができ、それはパートであっても同様です。
退職後、再雇用制度があればそのまま働き続けるという選択肢のほか、他の職場に移る場合でも厚生年金に加入できるところを探すなどして働くようにしましょう。
■「国民年金」のみに加入している場合
自営業者やフリーランス、あるいは派遣社員や非常勤職員など非正規雇用で、国民年金に加入している方が該当します。
将来的に受け取れる年金は、年金の仕組みの「1階部分」である「老齢基礎年金」のみですが、年金を増やすために次のような方法があります。
1.満額受給をめざす
基礎年金は20歳から60歳までの40年間、滞ることなく保険料を納付すると満額受給ができます。60歳までに受給資格期間を満たしていない場合や、納付しない期間があるときは、任意加入制度を利用して65歳まで支払いができるので、できるだけ満額受給をめざしましょう。
2.厚生年金に加入できる職場に勤める
非正規雇用の方の場合、厚生年金に加入できる職場で働くことで、基礎年金に加え、厚生年金を受け取ることができます。厚生年金は1ヶ月以上の被保険者期間があれば受給できます。
3.「付加年金」を払うか「国民年金基金」に加入する
・「付加年金」
付加保険料(月額400円)をプラスして納付すると、基礎年金に付加年金が上乗せされる制度です。
受給できる1年あたりの金額は「200円×付加保険料納付月数」の保険料払い込むと、年金受給開始から2年で元がとれる、お得な制度といえるでしょう。
例えば40歳から加入した場合、保険料払い込み金額が合計9万6000円(400円×12ヶ月×20年)に対し、仮に65歳から87歳まで年金を受け取るとすると、上乗せされる年金額の合計は105万6000円(200×240ヶ月×22年)にもなります。
・「国民年金基金」
口数制で年金額や給付の型は自分で選択し加入する仕組みで、上記の「付加年金」か「国民年金基金」のどちらかしか選べませんので注意が必要です。
加入する口数によって受け取る年金額が決まり、給付の型は、終身年金A型・B型、確定年金1型・2型・3型・4型・5型の7種類があります。
掛け金の上限は月額6万8000円以内で、国民年金加入者である限り60歳まで脱退することはできません。
例えば、40歳0ヶ月の女性が、1口目は終身年金A型(保証期間15年)、2口目として終身年金A型に加入した場合を見てみましょう。
受給額は加入時の年齢により異なりますが、終身年金A型の1口目の場合は基本月額最大2万円、2口目の場合は同最大1万円が65歳から受け取れます(15年間保証)。40歳0ヶ月の女性であれば、1口目が月額1万5000円、2口目は月額5000円の合計2万円となります。
月額表から月々の保険料払い込み額が1万4610円+4870円=1万9480円です。つまり保険料払い込み金額合計が、60歳までの20年間で467万5200円(1万9480円×12ヶ月×20年)に対し、受け取る年金は月々2万円なので、65歳から87歳まで受け取るとすると合計528万円です。
よって60万4800円がプラスしてもらえ、しかも掛け金は全額所得控除の対象となります。
「トンチン年金」は長寿リスクに備えたい人向け
公的な年金の他にも、民間の保険会社が個人年金の商品を扱っていますので、ご自身に合うものがあれば検討してみてもいいのではないでしょうか。今回は「トンチン年金」について取り上げたいと思います。
これは、保険料払込期間中の死亡払戻金や解約払戻金は保険料の7割程度ですが、そのぶんの原資を増やすことで、一定年齢に達したら、契約時に決めた年金額を生涯にわたり受け取れる仕組みです。
17世紀のイタリア人銀行家で、ロレンツォ・トンティという人が考案したため「トンチン年金」と名付けられました。
加入年齢は50歳からですので、「子育て期間中は余裕がなく、老後資金まで考えることが難しかったが、一段落ついた今から備えたい」という人にも向いています。
例えば50歳から70歳まで保険料の払い込みを行い、翌年から年金を受け取るという商品であれば、元が取れるのは93歳から95歳くらいまで長生きをした場合。もしそれよりも早く亡くなってしまうと元本割れになります。
「それでは割に合わない」と思う人にはおすすめしませんが、平均寿命が延び続けていることを思えば、高齢になっても生涯にわたり一定の収入が得られる安心感は大きいですし、検討の余地は十分あると思います。
今回は長寿リスクに備え、将来受け取れる年金を増やす方法についてお伝えしましたがいかがでしたでしょうか。まずは実践できるところから始めて、できる限り不安を解消していきたいですね。
[出典]
内閣府「令和元年版高齢社会白書(全体) 第1章 高齢化の状況/第2節 高齢期の暮らしの動向/健康・福祉」
厚生労働省「健康寿命のあり方に関する有識者研究会 報告書」P37-38(2019年 3 月)
厚生労働省「健康寿命延伸プラン」
厚生労働省「日本の公的年金は『2階建て』」
日本年金機構「付加保険料の納付のご案内」
国民年金基金「掛金月額表」
執筆者:藤丸史果
ファイナンシャルプランナー