障害年金の対象者基準とは? 申請方法や金額を徹底解説

配信日: 2020.04.07

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障害年金の対象者基準とは? 申請方法や金額を徹底解説
「障害年金」という言葉は聞いたことがあるけど、適用される要件や手続きがよく分からない、という方もいると思います。そこで、「障害年金」に関連した、各種制度について解説することにします。
 
伏見昌樹

執筆者:伏見昌樹(ふしみ まさき)

ファイナンシャル・プランナー

大学卒業後公認会計士試験や簿記検定試験にチャレンジし、公認会計士試験第二次試験短答式試験に合格や日本商工会議所主催簿記検定1級に合格する。その後、一般企業の経理や県税事務所に勤務する。なお、ファイナンシャル・プランナーとして、2級ファイナンシャル・プランニング技能士・AFP合格した後、伏見FP事務所を設立し代表に就き今日に至る。

障害年金とは

障害年金は、「病気やケガによって生活や仕事などが制限されるようになった場合に、現役世代の方も含めて受け取ることができる年金」と定義されています。」(※1より引用)
障害年金には、「障害基礎年金」と「障害厚生年金」がありますので、以下で見ていきます。

障害基礎年金

障害基礎年金は、原則として「国民年金」に加入し、かつ、法令に定めのある病気やけがをした場合で、次の規定に該当した場合に支給されます。
 
「国民年金に加入している間、または20歳前(年金制度に加入していない期間)、もしくは60歳以上65歳未満(年金制度に加入していない期間で日本に住んでいる間)に、初診日(障害の原因となった病気やケガについて、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日)のある病気やケガで、法令により定められた障害等級表(1級・2級)による障害の状態にあるとき」(※1より引用)

障害厚生年金

障害厚生年金は、「厚生年金」に加入し、かつ、法令に定めのある病気やケガを負ったとき、次の規定に当てはまる場合に支給されます。
 
「厚生年金に加入している間に初診日のある病気やケガで障害基礎年金の1級または2級に該当する障害の状態になったときは、障害基礎年金に上乗せして障害厚生年金が支給されます。また、障害の状態が2級に該当しない軽い程度の障害のときは3級の障害厚生年金が支給されます。」(※1より引用)

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障害年金をもらうための受給条件

障害年金をもらうためには、以下の3つの要件を満たす必要があります。
 
(1)初診日要件
(2)保険料納付要件
(3)障害状態該当要件
 
これらについて、以下で説明していきます。

初診日要件

初診日要件とは、そのけがや病気で初めて医療機関に受診した日(初診日)に、次の(1)から(3)のいずれかに当てはまることです。
 
(1)国民年金または厚生年金保険の被保険者である
(2)60歳以上65歳未満で、過去に国民年金の被保険者であったもので、日本国内に住所を有し、老齢基礎年金の繰り上げ請求をしていないもの
(3)20歳未満であるもの

保険料納付要件

保険料納付要件は、次のような公的年金の「加入期間」の要件があるので、注意が必要です。
 
「初診日の前日において、次のいずれかの要件を満たしていることが必要です。ただし、20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日がある場合は、納付要件はありません。
(1)初診日のある月の前々月までの公的年金の加入期間の2/3以上の期間について、保険料が納付または免除されていること
(2)初診日において65歳未満であり、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと」(※2より引用)

障害状態該当要件

障害状態該当要件とは、次のような「初診日からの経過期間」に関する要件のことです。
 
「初診日から1年6ヶ月を経過した日(その間に治った場合は治った日)または20歳に達した日に障害の状態にあるか、または65歳に達する日の前日までの間に障害の状態となった場合。」(※2より引用)

障害認定について知りたい

障害認定については、手足の障害のほか、精神障害やがん、糖尿病などさまざまな基準があります。詳しくは、以下の日本年金機構の障害認定基準のページ(※3)を確認してみてください。

1級、2級、3級の該当リスト

障害の等級は、前述した身体などの障害認定に対して、下記の「障害の状態」を考慮して決定されます。

障害年金の対象となる傷病名はどのくらいある?

障害年金の対象となる傷病名は、障害認定基準に定めているものが挙げられます。例えば、上肢または下肢の切断障害、脳卒中、脊髄損傷などのほか、眼や聴覚など外部障害、うつ病などの精神障害、糖尿病やがんなどの内部障害と、多岐にわたっています。

障害年金の請求手続き

障害年金を請求するためには、以下の手続きが必要となります。

STEP1:初診日を調べる

通常は、通院している医療機関にカルテが保存されているため、このカルテにより初診日が分かります。
 
しかし、医療機関が廃院した場合やカルテを破棄された場合など、何らかの理由で初診日が明確にならないときは、「初診日に関する第三者からの証明(以下「第三者証明」)」により初診日を証明することになります。
 
そこで、第三者証明について、(1)20歳以降に初診日がある場合と(2)20歳前に初診日がある場合に分けて説明します。
 
(1)「救急車で運ばれたのを直接見た」といった初診時の状況を直接的に見た人2人以上、もしくは、初診日に訪れた医療機関で働いていた医師や看護師などの医療従事者1人以上に意見書を書いてもらい、第三者証明とします。
 
(2)18歳で高校を卒業して厚生年金に加入している場合を除き、本人の申し立てと第三者証明を添えた場合に初診日として認定されます。

STEP2:診断書を作成してもらう

障害年金を受給することを希望する者は、医師により「障害により日常生活に継続的に制限が生じ、支援が必要な場合」であると認定され、診断書を作成してもらう必要があります。このため、障害を生じている体の器官に応じて、診断書の記載要領が定めてあります。

STEP3:病歴・就労状況等申立書を作成する

「病歴・就労状況等申立書」として、直筆またはパソコンを使用し、発病の時期、治療の経過、入院、退院、転院、就学や就労の状況、日常生活や家庭での生活でどのような支障が出ているかなどを具体的に書きます。

申請するのに必要な書類はどのようなもの?

障害年金を申請するには、以下のものが必要になります。

必要なもの

障害年金の申請に必要な書類は、「年金請求書」「年金手帳」「戸籍謄本、戸籍抄本、住民票など、生年月日を証明できる書類」「医師の診断書」「受診状況等証明書」「病歴・就労状況等申立書」「請求者名義の金融機関の通帳」「印鑑」です(※4)。

18歳到達年度末までの子(20歳未満で障害のある子を含む)がいる場合に必要なもの

請求者に、18歳到達年度末までの子(20歳未満で障害のある子を含む)がいる場合は、「戸籍謄本」「世帯全員の住民票の写し」「子の収入が確認できる書類」「子の診断書(20歳未満で障害のある子がいる場合)」が必要となります(※4)。

障害の原因が第三者行為である場合に必要なもの

請求者の障害の原因となったのが、第三者行為である場合には、「第三者行為事故状況届」「交通事故証明または事故が確認できる書類」「確認書」「被害者に被扶養者がいる場合、扶養していたことが分かる書類」「損害賠償金の算定書」「損害保険会社等への照会に係る同意書」が必要です(※4)。

請求者本人の状況によって必要なもの

また、請求者の状況によっては、「請求者本人の所得証明書」「年金加入期間確認通知書」「年金証書」「身体障害者手帳・療育手帳」「合算対象期間が確認できる書類」が必要になる場合があります(※4)。

提出はどこにするの?

障害年金請求書類の提出先は、「障害基礎年金を請求する場合」と「障害厚生年金を請求する場合」で異なります。
 
「障害基礎年金を請求する場合」は、初診日が、国民年金第1号被保険者などの期間中にある場合は、住所地のある市区町村の国民年金課になります。また、初診日が、国民年金第3号被保険者期間中の人は、年金事務所または街頭の年金相談センターになります。
 
これに対し、第2号被保険者で「障害厚生年金を請求する場合」は、年金事務所または街頭の年金相談センターになります。

障害年金はいくらもらえるの?

障害基礎年金の金額は、次の式により算出されます。
 
1級:78万100円×1.25(等級倍率)+子の加算
2級:78万100円+子の加算
 
<解説>
1級は、子がいない場合には、2級に比べて等級倍率の「1.25」だけ増えます。また、「子の加算」として、第1子がいる場合は22万4500円、第2子がいる場合は22万4500円が追加され、第3子以降は7万4800円が追加されます。
 
障害厚生年金の金額は、次の式により算出されます。
 
障害厚生年金1級:報酬比例の年金額×1.25+配偶者加給年金額(22万4500円)
障害厚生年金2級:報酬比例の年金額+配偶者加給年金額
障害厚生年金3級:報酬比例の年金額(最低保障額 58万5100円)
 
・報酬比例部分の年金額は、(1)(本来水準)で算定されますが、(1)式が(2)(従前額保障)式より下回った場合には(2)式で計算することになります。
 
(1)平均標準報酬月額×(7.125/1000)×平成15年3月までの被保険者期間の月数
+平均標準報酬額×(5.481/1000)×平成15年4月以後の被保険者期間の月数
 
(2)(平均標準報酬月額×(7.5/1000)×平成15年3月までの被保険者期間の月額
 +平均標準報酬額×(5.769/1000)×平成15年4月以後の被保険者期間の月数)×1.000(※)
 ※昭和13年4月2日以降に生まれた方は0.998
 
<解説>
障害厚生年金1級は、障害厚生年金級2級に比べて報酬比例の年金額が1.25倍されます。また、配偶者加齢年金額は65歳未満の配偶者がいないと受給できません。さらに、報酬比例の年金額には、58万5100円という最低保証額があります。

ケーススタディ(1) 自営業者のAさん(30歳男性)の場合

自営業者のAさん(30歳男性)が、以下の条件で障害年金を受給する場合、年金額はこのようになります。
 
・加入中の公的年金:国民年金
・家族構成:配偶者、子ども2人
・障害の程度:障害等級1級(両目失明)に該当
 
障害基礎年金の金額:78万100円×1.25+22万円4500円×2=142万4125円

ケーススタディ(2) 会社員Bさん(30歳男性)の場合

一方、会社員であるBさん(30歳男性)が、以下の条件で障害年金を受給する場合、年金額はこのようになります。
 
・加入中の公的年金:厚生年金(加入期間の平均標準報酬月額:40万)
(平成15年3月までの被保険者期間はなく、平成15年4月以降の被保険者期間は96ヶ月とする)
・家族構成:配偶者、子ども1人
・障害の程度:障害等級2級(両耳の聴力レベルが90デシベル以上)
 
障害基礎年金の金額:78万100円+22万4500円=100万4600円・・・(1)
 
報酬比例の年金額:40万円×(5.481/1000)×96月=21万470.4円
<ここで、被保険者期間が300ヶ月未満の場合は、300ヶ月のみなしが発生するため、修正します>
21万470.4円×300ヶ月/96ヶ月=65万7720円
障害厚生年金の金額:65万7720円+22万4500円=82万2220円・・・(2)
 
(1)+(2)=182万6820円

Q&A

障害年金に関する疑問をQ&Aで答えます。
 

1 働いていると障害年金はもらえないと聞きましたが、本当?

A1 働いていても、障害年金をもらえる可能性はあります。ただし、働いている際に職場の同僚の援助や配慮がなくても、元気に働いている精神障害者やがん患者の場合、障害年金を受給できない可能性があります。また、働いている場合は障害等級が変わることもあるかもしれません。
 

2 障害年金の申請をする際の注意点はありますか?

A2 障害年金の請求時に注意することは、「初診日」に年金制度に加入していること、そして、どの年金制度に加入しているかです。
 

3 老齢年金と障害年金、両方もらえますか?

A3 支給事由が異なる2つ以上の年金を受け取るときには、本人がいずれか1つの年金を選択することになります(※5)。ただし、65歳以上になれば、「障害基礎年金+遺族厚生年金」や「障害基礎年金+老齢厚生年金」といった組み合わせの場合、両方の年金を受給することができます。
 

4 生活保護と障害年金、両方もらえますか?

A4 障害年金の額だけ生活保護費は減額されますが、障害年金を申請することは可能です。また、障害年金が生活保護費より多い場合は、その差額分収入を増やすことができます。

まとめ

生活を営んでいると、さまざまな障害を負う可能性があります。障害年金という制度の存在を知っておくことで、いざというときに金銭的な手助けになります。
 
そのためには、障害年金を受給するための要件である、「初診日」「保険料納付要件」「障害状態該当要件」に注意しておきたいものです。
 
【出典】
(※1)日本年金機構「障害年金」
(※2)日本年金機構「障害基礎年金の受給要件・支給開始時期・計算方法」
(※3)日本年金機構「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」
(※4)日本年金機構「障害基礎年金を受けられるとき」
(※5)日本年金機構「年金の併給又は選択」
 
執筆者:伏見昌樹
ファイナンシャル・プランナー


 

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