更新日: 2020.05.19 その他年金

障害年金受給のために知っておきたい! <初診日>と<障害認定日>について

執筆者 : 辻章嗣

障害年金受給のために知っておきたい! <初診日>と<障害認定日>について
病気やケガにより生活や仕事が制限される状況が続く場合に、生活費を保障してくれる制度が障害年金です。今回は、障害年金を請求する際に必要となる「初診日」と「障害認定日」について詳しく解説します。
 

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辻章嗣

執筆者:辻章嗣(つじ のりつぐ)

ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士

元航空自衛隊の戦闘機パイロット。在職中にCFP(R)、社会保険労務士の資格を取得。退官後は、保険会社で防衛省向けライフプラン・セミナー、社会保険労務士法人で介護離職防止セミナー等の講師を担当。現在は、独立系FP事務所「ウィングFP相談室」を開業し、「あなたの夢を実現し不安を軽減するための資金計画や家計の見直しをお手伝いする家計のホームドクター(R)」をモットーに個別相談やセミナー講師を務めている。
https://www.wing-fp.com/

障害年金を受給するためには3要件を満たすことが必要

まず、障害年金を受給するためには、次の3つの要件を満たす必要があります(※1)。
 
【初診日要件】初診日に公的年金の被保険者期間にあること(注)
【保険料納付要件】初診日の前日において一定の保険料納付の条件を満たすこと(注)
【障害状態要件】障害認定日に障害年金の対象となる障害の状態にあること
 
この条件を満たすことを判定するためには、「初診日」と「障害認定日」を特定することが必要となります。
(注)20歳前の障害など、「初診日要件」と「保険料納付要件」を求められない例外もあります。

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「初診日」に加入していた年金制度により適用される年金が決まる

「初診日」とは、障害の原因となった病気やけがについて初めて医師や歯科医師の診断を受けた日のことをいいます(※2)。
 
そして、「初診日」に国民年金の1号被保険者(学生や自営業者など)または3号被保険者(厚生年金被保険者の被扶養配偶者)であった方は、「障害基礎年金」の対象となります。
 
一方、「初診日」に厚生年金の被保険者(会社員など)または共済組合の組合員(公務員など)であった方は、「障害基礎年金」および「障害厚生年金」が対象となります。
 
「初診日」に加入していた年金制度によって、対象となる年金が決まります。したがって、「初診日」を確定することは極めて重要になります。
 
ただし、「初診日」に国民年金保険に加入していなくても、以下の方は、日本国内に住んでいる間に「初診日」がある場合は、障害基礎年金の支給対象となります。
 
(1)「初診日」が20歳以前の方
(2)「初診日」が60歳以上65歳未満の方

「初診日」と「保険料納付要件」

次に、障害年金を受給するためには「初診日」の前日において、次のいずれかの「保険料納付要件」を満たしている必要があります(※3,4)。
 
(1)初診日の属する月の前々月までの被保険者期間のうち、国民年金の保険料納付済期間(厚生年金保険期間を含む)と保険料免除期間を合わせた期間が3分の2以上あること【図1】
 
【図1】


 
(2)初診日に65歳未満であり、初診日の属する月の前々月までの直近の1年間に、保険料の未納期間がないこと【図2】
 
【図2】

 
「保険料納付要件」は、病気やけがをした時点で年金の保険料をきちんと納付していたことを確認するものです。したがって、「保険料納付要件」を判断するためにも「初診日」を特定することが必要となります。
 
なお、20歳前の年金制度に加入していない期間に「初診日」がある場合は、「保険料納付要件」は求められません。

「初診日」を特定するためには根気が必要

単一の病院で終始診療を受けていた場合は、その病院で「初診日」が特定できます。
 
しかし、複数の病院を転院し、長期にわたり診療を受けている場合は、「初診日」の特定に困難を伴うことがあります。このような場合には、「受診状況等証明書」(※5)を用いて「初診日」を特定します。
 
例えば、【図3】のとおり、初診時のA病院で「受診状況等証明書」を発行してもらえれば、その時点で障害年金を請求することができます。
 
しかし、A病院に診療記録が残っていないなどの理由で「初診日」を証明してもらえない場合は、その理由を添えて転院先のB病院で「初診日」を特定してもらうようになります。仮にB病院でも「受診状況等証明書」を発行してもらえなければ、この流れを繰り返すことになります。
 
【図3】


 
このように、「初診日」を特定するためには、困難を伴うことがありますが、根気よく「初診日」を追求することが大切です。
 
なお、次の条件を満たす場合は、審査を経て本人の申し立てた「初診日」が認められることがあります(※1)。
(1)初診日について第三者(隣人、友人、民生委員など)が証明する書類があり、他にも参考資料が提出された場合
(2)初診日が一定の期間内にあることを示す参考資料が提出され、保険料納付要件など一定の条件を満たしている場合

「障害認定日」における障害の程度で受給できる年金が決まる

「障害認定日」は、障害の程度の認定を受ける日のことをいいます。
 
そして、「障害認定日」における障害の程度を「国民年金・厚生年金 障害認定基準」(※6)に照らし合わせて、障害基礎年金は1級または2級の年金が、障害厚生年金は1級から3級の年金または手当金が支給されます。
 
受給できる障害年金額などが決まりますので、「障害認定日」も極めて重要な日となります。なお、「障害認定基準」の例は、【図4】のとおりです。
 
【図4】

「障害認定日」には、原則と特例がある

「障害認定日」は、原則として「初診日」から1年6ヶ月を経過した日(その間に治った場合は治った日)をいいます。
 
しかし、「初診日」から1年6ヶ月以内に、次の(1)から(8)に該当する日があるときは、その日が「障害認定日」になります(※3,4)。
 
(1)人口透析療法を行っている場合は、透析を初めて受けた日から起算して3ヶ月経過した日
(2)人口骨頭、または人工関節をそう入置換した日
(3)心臓ペースメーカー、植え込み型除細動器(ICD)または人工弁を装着した日
(4)人工肛門の造設、尿路変更術を施術した場合は、造設または手術日から起算して6ヶ月経過した日
(5)新膀胱を造設した日
(6)切断または離断による肢体の障害は、原則として切断または離断した日
(7)咽頭全摘出をした日
(8)在宅酸素療法を開始した日
 
また、障害基礎年金において、20歳前に初診日がある場合の障害認定日は、初診日から1年6ヶ月経過した日と20歳になった日のどちらか遅い方になります。

まとめ

年金は、請求しなければ受給できません。そして、障害年金において「初診日」と「障害認定日」は、請求に欠かせない要素となります。
 
障害年金は、年金制度に加入し保険料を支払ってきた対価として、病気やけがで障害が残ったときに請求できる制度です。したがって、該当すると思われる方は、お近くの年金事務所か市区町村役場で相談してみましょう。
 
[出典]
(※1)日本年金機構「障害年金制度について」
(※2)日本年金機構「障害年金」
(※3)日本年金機構「障害基礎年金の受給要件・支給開始時期・計算方法」
(※4)日本年金機構「障害厚生年金の受給要件・支給開始時期・計算方法」
(※5)日本年金機構「受診状況等証明書を提出するとき」
(※6)日本年金機構「国民年金・厚生年金 障害認定基準」
 
執筆者:辻章嗣
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士