最終更新日: 2020.09.10 公開日: 2020.09.04
年金

定年後も働くときの年金の話。在職中は年金がカットされるって本当?

執筆者 : 植田周司

人生100年時代といわれ、60歳を過ぎても働くことがあたりまえになりつつあります。さらに65歳以降も働く方が徐々に増えています。会社員として60歳以降も働き続けると、「年金を払いながら年金を受け取る」という、少しおかしなことになります。
 
もうすぐ60歳になる方から、「働いている間は年金がカットされると聞いたが本当か?」「働くと損なのか?」「どの程度までの収入なら年金がカットされないのか?」という質問をよくいただきます。
 
今回は働きながら年金を受け取る場合の「在職老齢年金」を、今年改正された年金制度を含めわかりやすくお伝えします。
 
植田周司

執筆者:

執筆者:植田周司(うえだ しゅうじ)

CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士、円満相続遺言支援士(R)

外資系IT企業を経て、FPとして「PCとFPオフィス植田」を起業。独立系のFPとして常に相談者の利益と希望を最優先に考え、ライフプランをご提案します。
お客様に「相談して良かった」と言っていただけるよう、日々努力しています。

詳細はこちら
植田周司

執筆者:

執筆者:植田周司(うえだ しゅうじ)

CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士、円満相続遺言支援士(R)

外資系IT企業を経て、FPとして「PCとFPオフィス植田」を起業。独立系のFPとして常に相談者の利益と希望を最優先に考え、ライフプランをご提案します。
お客様に「相談して良かった」と言っていただけるよう、日々努力しています。

詳細はこちら

在職老齢年金とは

公的年金は高齢者の生活を維持するためのものです。そのため「60歳以上の方で一定以上の賃金を得ている方には、年金給付を我慢してもらい、年金制度の支え手に回ってもらおう」という考え方から、老齢厚生年金の全部または一部を停止する仕組みがあります。これを「在職老齢年金」といいます。
(注)60歳以上も会社員として働き、厚生年金を払っている方が対象です。
 
この在職老齢年金制度は、一生懸命働いて給料が増えても年金が減り、実質の収入があまり増えないため、働く意欲を阻害するといわれています。そのような意見を踏まえ、令和2年の国民年金法等の改正で一部改正が行われました。

60~64歳の在職老齢年金

現在の厚生年金制度は、支給開始年齢を65歳に段階的に引き上げる経過措置として、特別支給の老齢厚生年金が支給されます。受け取りの対象者は図1をご覧ください。

例えば、特別支給の老齢厚生年金が10万円と仮定した場合、賃金と年金の合計額は図2のようになります。賃金が18万円までは年金はカットされません。賃金が18万円を超えると賃金の増加分の1/2が年金額からカットされ、38万円を超えると年金は全額停止となります。

65歳になるまでの在職老齢年金の正確な計算は、以下の表1を参照ください。

65歳からの在職老齢年金

65歳を超えて働く場合も同様に在職老齢年金の対象です。ただし、カットされる年金の計算に違いがあります。例えば、老齢厚生年金が10万円とした場合、賃金と年金の合計額は図3のようになります。
 
賃金と年金の合計が47万円までは年金はカットされません。賃金が37万円を超えると徐々に年金額がカットされ、57万円を超えると年金は全額停止となります。
※ 全額停止となる場合は、加給年金も停止になりますのでご注意ください。

65歳以降の在職老齢年金の正確な計算は、以下のとおりです。

令和2年 国民年金法等の改正

今年(令和2年)、年金の繰り下げが75歳まで可能になる等、多くの変更が行われました。その中で特に在職老齢年金に関する変更をご紹介します。

1.在職老齢年金の支給停止基準緩和

2019年厚労省の在職老齢年金の意識調査によると、年金が減らないように就業時間を調整して、収入を一定額に調整しながら働くとの回答が、60~64歳で6割、65~69歳で4割を占めています(図4 在職老齢年金制度と就労意識参照)。
 
特に60~64歳の6割の方が「就業時間を制限して働いている」ということから、在職老齢年金制度の「働く意欲を阻害する」という弊害がよく表れています。

今回の年金法改正では、60~64歳に支給される在職老齢年金について、年金がカットされる基準が28万円から47万円に緩和されます。このことにより、60代前半の人も就労時間を気にせずに働けるようになりました。この改正は、令和4年4月1日から適用されます。
 
なお、65歳以上の在職老齢年金制度については、現行の基準47万円の変更はありません。そのため、60~64歳と65歳からの在職老齢年金の計算ルールが共通になります。

2.在職老齢年金の在職定時改定

65歳以上の在職中の老齢厚生年金受給者について、年金額を毎年10月に改定し、それまでに納めた保険料を年金額に反映する「在職定時改定」という制度ができました。
 
これまでは、退職等により厚生年金被保険者でなくなるまで、老齢厚生年金の額は改定されませんでした。そのため、厚生年金を収めているのに、支給される在職老齢年金は増えないという問題がありました。
 
今回の在職定時改定の導入により、仕事を継続したことの効果を、退職を待たずに年金額に反映することで、在職老齢年金が毎年増えることになります。ただし、賃金と年金の合計が47万円を超える場合は、年金の一部または全額が停止されますのでご注意ください。この改正は、令和4年4月1日から適用されます。

在職老齢年金をカットされない方法

どうしても年金を減らされたくないという方には、以下のような方法が考えられます。

1.フリーランスや個人事業主として働く

会社員としてではなく、個人事業主やフリーランスとして働くという方法があります。厚生年金に加入しないため、在職老齢年金扱いにならず年金は減額されません。

2.働く時間を調整する

在職老齢年金と就労意識調査でもご説明しましたが、就業時間を調整して賃金と年金の合計額が、65歳以下は28万円(注1)、65歳以上は47万円を超えないように働くという方法があります。この方法では年金は減額されませんが、収入も低く抑えられます。
(注1)2022年4月1日からは47万円が上限となりますので、時間をあまり気にせずに働く環境が整います。
 
在職老齢年金対策として、「65歳以降働いている間は、老齢厚生年金を繰り下げれば良い」と考えている方がおられます。しかしこの方法は、賃金と在職老齢年金の合計が47万円を超え、カット対象の年金がある場合は、そのカット部分の繰り下げによる年金の増額はありません。
 
例えば在職老齢年金が全額停止になる人が繰り下げを行っても、年金はまったく増えません。年金を全額停止されたのと同じ結果となり、在職老齢年金対策には使えませんのでご注意ください。
 
また、安易に年金を繰り下げると、加給年金が停止されるなどさまざまな影響があります。年金の繰り下げについては慎重に検討してください。

まとめ

現在60歳前後で、どのように働くべきかを悩んでいる方も多いと思います。今回は在職老齢年金についてご説明しましたが、単純に年金収入だけで損か得かという判断だけでなく、自分のやりたい仕事を頑張ることも重要です。さらに65歳を過ぎても健康で働き続けられることはとても幸せなことです。
 
在職老齢年金の仕組みを理解した上で、年金を支える側になるのも良いのではないでしょうか。そして、払った厚生年金は将来自分が受け取る年金額に上乗せされます。
 
最後に、年金制度は在職老齢年金以外にも、加給年金や振替加算、遺族年金、繰り上げ繰り下げのメリット・デメリットなど非常に複雑です。疑問や不明点は年金事務所や年金制度に詳しい専門家にご相談ください。
 
※2020/9/10 内容を一部修正させていただきました。
 
執筆者:植田周司
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士、円満相続遺言支援士(R)

関連記事

年金を受け取りながら働く「在職老齢年金」年金改正でどう変わる?
在職老齢年金を損しないでもらうポイント
在職老齢年金の廃止見送りって、一体どういうこと? 私たちの生活にどんな影響があるの?
 



▲PAGETOP